14.王都脱出
二人がいるアトリエの扉が遠慮がちに叩かれた。
「俺だ。開けてくれよ」
「シドの声だ」
アンジェリンが急いで扉を開くと、黒髪短髪のシドがひとりで立っていた。彼は、斜め背負い用の紐がついた大きな皮袋を両肩に背負った姿で、用心深く背後に目を凝らして追手の有無を確認すると、素早く部屋に入り込んだ。
シドといつも一緒にいる従者ゾンデの姿はなく、フェールはすぐに疑問をぶつけた。
「ゾンデはどうした」
「別の仕事を頼んであるから、今は王都にはいない。この町にゾンデが二人もいたらおかしいじゃないか。今はおまえがゾンデだよ」
「たしかに」
「……で、アンジェリンはついにフェールのものになったってわけだ。おめでとう。アンジェリンはどうするんだ? 連れて行くのか?」
アンジェリンが答える前にフェールが勝手に返事をしていた。
「一緒に行く。シャムアはかけおち者にはおおらかだからな。入国さえできれば、計画が成功する確率がぐっとあがる。シャムアでは、祝福式をめざす旅ならば、どこへ行っても歓迎されるんだろう?」
「まあ、それはそうらしいけど、対立国の王子が潜入したとなると話は別だ。絶対に正体がばれないように気をつけろよ」
「ああ、ばれればすべて終わりだ。それでも、このまま状況を受け入れるよりは何十倍もいい」
アンジェリンは耳まで赤面したまま身を固くして立っていた。この数日、ここでフェールと二人きりで何をしていたのかは隠しようもない。口をはさむこともできず、二人の会話をうつむいて聞く。
シドは城内の様子を教えてくれた。案の定、王は激怒しているという。それを聞いたフェールは声を出して楽しそうに笑った。
「ははは……父上の青筋が目に見えるようだ。重要な手駒がなくなって困っているに違いない。さあ、どうするか。見ものだな」
「笑いごとじゃないぞ。俺は共犯ではないかと疑いをかけられて大変だったんだ」
「共犯だ。疑う余地もなく」
「さらっと言うなよ。ああ……こんな男に付き合わされるアンジェリンがかわいそうだ。アンジェリン、今からでも遅くはない。君にはフェールを見捨てるという選択もあるよ?」
「えっ、私、あのっ」
突然話を振られて、アンジェリンはドキッとしたが、心はもう決まっていた。
まさに今この瞬間が、運命の別れ道なのかもしれない。
結局、城へ通報にいくことはできなかった。父、ロイエンニはどうしているだろうと思うと、少しだけ心が痛む。捕まっているのではないだろうか。父を助けることもしないで、勝手に国を出ていくとは恩知らずにもほどがある。
――それでもお父様はきっとわかってくださるわ。後悔しない人生を、と言ってくれたのだから。
シャムアに行く計画は絶対に危険すぎる。しかし、フェールは人生をかけて城を出てきている。彼に選ばれた自分がすべきことは、その決意を否定せずに計画がうまく行くように、できる限り支えていくことだと今は考えるようになった。彼の計画が、一般的な考え方で見れば間違っていて、多くの人に迷惑がかかる行為であり、作戦が成功し帰国した後には別れが待っていると知っていても。
政略結婚の話は延期になるだけで、シャムア潜入作戦を終えたフェールが帰還すれば、彼は必ず王女と結婚することになると思う。
――私はただの侍女。たとえ殿下の政略結婚の話が消えてなくなっても、自分のいやしい生まれを考えれば、どう考えても、殿下と生涯愛し合い続けることはかなわないってわかっているわ。
お相手ができるのは今だけ。
この結論は、何度考えを組み替えてもアンジェリンの中では崩れることはなかった。
――だから、私は殿下に付いて行く。殿下と一緒にいたいの。今しかないならば、後悔しないために。
「あのっ、私、王太子殿下を見捨てるなんて考えておりません。殿下に従います」
シドはにやりと歯を見せて笑った。日焼けした肌に白い歯がまぶしく見える。
「フェール、うまく彼女を調教したな。かわいそうに、この子はフェールの毒牙にかかってしまった」
「言葉が悪い」
フェールはわざと唇をゆがめて見せたが、目は笑っていた。
シドは遠慮する様子もなく、にやにや顔でアンジェリンに質問を浴びせた。
「フェールはやさしかったかい? 無理やりなら、こんな悪党と旅に出る必要なんてないんだよ? 一日中一緒にいても大丈夫? 不快にならないか?」
「こらっ、彼女に何を聞いている」
「彼女の気持ちを聞いただけじゃないか。アンジェリン、フェールはね、なんでも一生懸命にやる男だ。だから俺も応援したくなる。ちょっとばかり強引だけど、根は本当にいいやつなんだ。それは間違いないから」
アンジェリンは照れ笑いするしかない。
――私、殿下の毒牙にかかってしまったのかしら。でもそれでもいい。私は殿下に選んでもらったのだから。
「で、フェールのどこがよかった?」
「シド! いいかげんにしろ。アンジェリンが困っている。無駄口もいいが荷物を早く見せてくれ」
「了解。冗談はここまでにしようか」
シドは真面目な顔に戻り、買ってきた二つの皮袋の中身をアトリエの床にぶちまけた。
衣類や雑貨が散らかる。
「この小瓶が傷薬で痛み止めだ。こちらは火おこし油。それから……これが入手に最も苦労した毒針」
シドは手のひらの半分もない大きさの、平たい紙箱を手に取った。
「毒針が手に入ったか!」
フェールは目を輝かせた。
シドはその黒い箱を開いてフェールに中を見せた。引き出し状になっている紙箱の中には、大人の手指ほどの長さの針が何本も入っていた。一本一本が皮の細い鞘に収まっており、待ち針のように小さな丸い玉がついている。
「これがそうか? 初めて見た」とフェール。
「俺も見たのも買ったのも初めてさ。ザンガクムの毒針と言えばこれのことで、あちらでは媚薬代わりに使うらしいからな、買うのが恥ずかしかったよ」
「尽力感謝する。この毒針はきっとシャムア脱出時に役に立つだろう」
「だけど、それはあまり強くない毒で、人を殺す能力はなく、ただのしびれ薬が塗ってあるだけらしい。効果はあまり期待しないほうがいい」
シドから買い物の残金を受け取ったフェールは、突っ立って二人の様子を見ていたアンジェリンに命令した。
「すぐに荷造りだ。向こうの部屋に残っている干し肉とパンをこの荷物袋に詰めてくれ。重い物は私の荷物の方へ。軽い荷物袋は自分で持て。用意出来次第出発する」
「は、はい! すぐに仕度いたします」
恥ずかしさで顔を赤く染めたままぼんやりしていたアンジェリンは、急いで奥の部屋へ行こうとしたが、シドが呼び止めた。
「ちょっと待って」
「はい?」
「フェールとの約束がまだ残っている。今すぐには出かけない」
フェールは顔をしかめた。
「なんだ、あの約束をまだ憶えていたのか」
「当たり前だよ。約束は約束だ。我が家の馬車が迎えに来るのは夕方だ。それまでは時間があるから、例の約束を守ってもらうぞ、フェール」
アンジェリンはフェールに目で解答を求めたが、彼は苦笑いしているだけだった。
シドはアンジェリンに椅子を勧めた。
「さあさ、君、仕度は後でいいから、そこへ座って。今回のことを手配する代わりに、フェールともども絵のモデルになってもらう約束がしてあったのさ。人物画を描く機会に恵まれないものだからうれしいよ。最高のモデルが二人もここにいるじゃないか。美男美女、これを描かないのはもったいないからね」
フェールが不機嫌に口をはさむ。
「頼まれても服は脱がない」
「着衣のままでいいよ。フェールは彼女の後ろに立って。そうそう、寄り添うように。うん、そのまま動かないで」
シドはそこに置いてあったスケッチ帖とペンを手に取ると、すばやく線を走らせ始めた。
「君たちお似合いだね。二人が無事に結婚までこぎつけることができたら、この絵を大きな額仕様にして祝いとして贈ろう」
「その約束、忘れるなよ」
「だから、生きて帰ってこい」
「もちろんだ。私は失敗するとは思っていない」
アンジェリンは、作戦の成功を心から信じているフェールとシドの会話を、うつむきたくなる気持ちで聞いていた。
シドが描いている間、フェールはいろいろ質問した。
「兵は借りられたか?」
「ああ、ドイガー将軍にこっそり事情を話して、少しだけ借りることに成功したよ」
かつて二人の士官学校の先生であったドイガーの名を聞いてフェールはほっとした顔になった。
「ドイガー将軍なら秘密をもらしはしないだろう」
「将軍はザンガクムを警戒する必要がある、というおまえの意見に賛同してくれた。俺が自由に動かせる特殊部隊と合わせても五十名ほどだけど、彼らをザンガクム国境付近へ密かに向かわせた。俺は後で追いついて彼らと行動を共にする。名目はクレイア王女の出迎えとザース王子の見送りのための街道警備、ということにしたけど、もちろん、陛下にも軍務総官にも内緒だ。それでよかったんだろう?」
フェールは満足そうに頷いた。
「これでザンガクムが婚約破棄で怒って突然侵攻してきても、その準備を少しはやったことになる」
シドは、噴き出して笑った。
「おいっ、たった五十人の兵に期待するなよ。多数のザンガクム軍が押し寄せてきたらこんな少数では食い止められない。だけど……俺もだんだんとおまえの考えが真実なような気がしてきた。ザンガクムが急すぎる政略結婚を簡単に了承するのは奇妙だ」
「そうだろう? ザンガクムにとって、二つの政略結婚を急ぐことに何の得があるのだ。シャムアとザンガクムは最初から結託しているとしか思えない」
「うん……そうだとするとこれは我が国にとってはとても危険な状況だ。陛下はシャムアの動きばかり気にして、背後のザンガクムのことは安心しきっておられる。このままではザンガクムへ行かされるザースの身が案じられるよ」
「だから、絶対にザースを出さないようにしなければいけないのだ」
「その件については俺もフェールの意見に賛成だな」
シドは手早くスケッチを終えると、今度は地図を広げて、シャムアまでの行程の説明をはじめた。
「最終目的地はシャムアの王都ラトゥクだ」
シャムアとセヴォローンの間には北から南へ流れる大河ガルダ川があり、シャムアへ行くにはどこかで川を渡るか、船で南の海へ出るかしかない。
セヴォローンの西に何か所もある川渡りの船の乗船所は、砦問題を受けてどこも封鎖されており、海へ出る港も商船すら制限がかけられ、二人づれでの出国は厳しい状態だという。
ガルダ川を渡ることができないたくさんの旅行者や商人たちは、北の山間部へ迂回して山奥にあるユハの吊り橋を通ってシャムアへ行こうとしているらしい。
「ユハの吊り橋へ向かう川沿いの街道は馬車だらけで大混雑だ。それに混じれば目立たない。今日はそこまで行けないから、今夜はイクスアランを出て少し行ったところに宿を用意した。その翌日は吊り橋ではなくてメタフ村へ向かえ」
シドは地図上の山間部の一点を示した。アンジェリンも後ろから覗き込んだ。
示されたメタフという名の村は、アンジェリンが幼いころ暮らしたサイニッスラ高原よりも、はるか北にあった。村は、王都エンテグアから西に向かい、ガルダ川に突き当たったら川沿いに北へ向かって街道を進み、少し脇道にはいった山間に位置している。
「この村のマニストゥ・カラングラという男の家を訪ねろ。ここで馬と食事と宿の提供をしてくれるよう話は付いている。ゾンデを通じて、おまえからもらった資金の一部を渡してあるから、帰路の面倒もみてくれる。この人は初老のシャムア人だけど、元は俺とゾンデの剣の師匠だから、護衛としても役に立つはずだ」
「剣の先生なら心強い」
シドはマニストゥの家の位置などを簡単に説明した。
フェールは名を復唱し、頭に刻み込んだ。「マニストゥ先生だな。よし、憶えたぞ。だが、シャムア人のその人が裏切らないという保証はあるのか? 案内するふりをして、シャムア軍に引き渡されたら困る」
「それは心配ないさ。マニストゥ先生は、シャムア軍の元傭兵だけど、実は脱走兵で、シャムアからは追われる身だ。シャムアに寝返るなんて考えられないね。シャムア軍についても詳しく教えてくれると思う」
夕闇が近づく時間になり、これからの予定の打ち合わせを終えたアンジェリンたちは、アトリエを出た。
フェールはシドの従者ゾンデにばけて、両手に荷物を持ち、背を丸めてシドに従う。二人の後ろを、つば広の帽子で顔を隠したアンジェリンが付いて行く。アンジェリンは、腹に何重にも布を巻いて、妊婦らしく歩いた。茶金色の長い髪はすべて帽子の中に丸め込んである。
雨上がりの石畳の通りは、人通りはほどんとなく、むっとする湿気に包まれていた。
大通りに入ってすぐの場所に、四頭立ての馬車が待っていた。扉の部分には、シドの家、ヘロンガル家の紋章、矢を咥えて飛ぶ鳥の模様が金で刻まれている。
シドは待っていた御者の男に小さな声で話しかけた。
「ゾンデが連れているその女性は……その、ちょっとわけありでね、彼女の姿を見たらわかると思うけど、急いでこの町から出してやりたいんだよ。彼女の実家までゾンデに送らせるから、このことは誰にも言うな。特に、父には絶対内緒にしてくれ。途中までは俺も同行する」
「かしこまりました、シド様」
御者はお腹の大きなアンジェリンを見て、ゾンデかシドのどちらかが女性を妊娠させてしまった、と考えたようで、それ以上の何も訊いてこなかった。
シドは馬車に先に乗り込むと、手慣れた様子で、車内の椅子部分をはね上げると、二人の大きな荷物をその空間に詰め込んで隠した。
しばらく順調に走っていた馬車は突然停止した。間もなく王都エンテグアを出るが、道が混雑しているらしい。前の馬車が停まっているのでこの馬車もそれに続き停まるしかない。
王都を出る門の下に検問所が設置されているようで、一台一台、数名の兵士が、通る馬車の扉を開けているのが、窓から見えた。
「フェール、やっぱり検問しているぞ。こんな時間になってもまだおまえを探している」
「切り抜けてみせる。打ち合わせ通りに頼む」
フェールはアンジェリンの手を取った。その手は言葉とは裏腹に、じっとり汗ばみ、軽く震えている。アンジェリンはぎゅっと握り返した。
アンジェリンは打ち合わせ通りに、馬車の中でフェールにもたれるように半身を横にし、巻物で膨れた腹をさすった。妊婦らしく。
検問の順番はなかなかやってこない。緊張が続く。ここで見つかれば、フェールは城へ戻され、危険はなくなるが、彼が抱く夢は終わってしまう。
馬車は先ほどからほとんど動いていない。それとも、この馬車はすでに目を付けられてしまったのだろうか。
フェールの変装がばれてしまったら。
緊張した車内でアンジェリンはひたすら妊婦らしく待ち続けた。フェールもシドもひとことも発せず、唇を固く閉じている。
アンジェリンはため息すら出せない雰囲気に耐えた。こういうときこそ駄洒落を作ればいい。何かおもしろいもの。椅子、馬車、御者、車輪……言葉を探しているうちに、この馬車の番になったようで、兵たちの声が近くなった。馬車が少し進んだ。
御者が検問の兵と話す声が聞こえる。息を止めて耳をすませる。
「紋章をご確認ください。この馬車はヘロンガル家の所有でございます。くれぐれも失礼のないようお願いしますよ」
ヘロンガル家が王と親戚関係にあることは一般的に広く知られている。ヘロンガル家の一員は、昔から軍幹部に所属する者も多い。対応する兵たちの返事も力が入っていることが、アンジェリンにも伝わってきた。
「失礼します」
声と共に、馬車の扉が開かれた。ランタンで車内が明るく照らされる。
と、シドがいきなり大声を出した。
「ヘロンガル家の馬車を調べるとは何ごとだ! おまえ、どこの所属だ、顔を見せろ! 急いでいるんだ。さっさと通せ! 乗っているのは俺の従者ゾンデとその妻だ」
扉に一番近い位置にいたシドの怒鳴り声に、外の検問兵は悲鳴に近い声を上げた。
「シド・ヘロンガル様! 従者様! 失礼しました」
検問兵は、シドの向こうにいる、ゾンデ似のかつらをかぶって背を丸めているフェールと、苦しそうに腹をさすっている妊婦をちらっと見ただけで、大慌てで馬車の扉を閉めた。
馬車は再び動き出し、三人は胸をなでおろした。
フェールはこめかみに流れ落ちる汗を指先でぬぐった。ゾンデ似のかつらの毛の一部が汗で首筋に張り付いている。
「ふぅ……どうにか抜けたな。シドのおかげだ」
「だからうちの馬車を使って大正解だっただろう? アンジェリン、大丈夫?」
「緊張しました。【焦】って【汗】がたくさん出ました」
ぷっ、と男性二人が同時に噴き出した。
フェールは緊張でずっとひきつっていた頬を弛め、シドも黒い眉を動かして楽しそうにクスクス笑う。
アンジェリンもほっとして自然に微笑んでいた。
三人を乗せた馬車は、やがて、ガルダ川沿いの町、イクスアラン――王都の西に位置し、川を渡ることができればもっともシャムアに近い町――に着いたが、シドの情報通り、シャムアへの川渡りの船着き場は封鎖されていた。馬車はそこから北に道をとり、しばらく進んだ街道途中で、アンジェリンとフェールは降ろされた。すでに外は真っ暗になっている。
御者の男がすまなそうに頭を下げた。
「シド様、お時間でございます。今すぐに戻らないとだんな様をお迎えに行く時間に間に合いません。宿はすぐそこですがお送りできるのはここまでです。ゾンデ様、お気をつけて」
御者は最後までフェールのことを従者のゾンデだと信じていたようだった。
シドはいったん一緒に馬車から降り、フェールの肩を軽く叩くと、小声でささやいた。
「今夜の宿、俺の名で予約してあるから。なじみだから取調べが入ることはないと思う。絶対に生きて帰ってこいよ。成功を祈る」
ゾンデのかつらをかぶったフェールは、シドの言葉に口をひきむすんだまま無言で強く頷いた。
シドは、次にアンジェリンにも近づき、御者に聞こえないように耳打ちした。
「フェールを頼むよ。こいつは浮気なんかしないし、作戦が成功すれば、君を必ず妻にするだろう。だから、こいつの望みを叶える手伝いをしてやってくれ」
アンジェリンは決意を込めてシドを見上げた。
「はい、送っていただきありがとうございました」
馬車に乗り込んだシドが小窓から手を振る。
フェールとアンジェリンは、再び頭を下げて下僕らしく見送った。
馬車は、王都へ向かって引き返していった。
「行こう」
二人で荷物を一つずつ背負い、手をつないで歩き始めた。