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白縫姫伝説  作者: 渡辺備前守恵
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伍ノ章

赤崎伊予守


赤崎岳中腹に築かれた赤崎城を居城とし、弓張岳以南の俵ヶ浦半島を其の受領とする相浦松浦家家老職の武将です。

佐世保湾の出入りを押さえ、大村方領である対岸の寄船港、横瀬港に対応する為、多数の水軍をその配下としています。

※寄船までは八町弱(約850メートル)しか離れていない。

文武両道に優れ、忠誠心に厚い。

松浦家の宿将たる遠藤但馬守の娘、白縫姫を許嫁とする事からも其の信任の程が伺えます。




九十九島の沖合にある、とある無人島近くにて…



赤崎伊予守が十二束三伏の蟇目鏑矢を弓に番え、きりきりと引き絞る。

気合一閃「放てぇ!」

ひょうと放たれた矢はびりびりと高鳴りを響かせ、洋上を切り裂くかの如く。


暫時の間も無く、松浦党三ツ星の幟を押し立てた関船二艘、小早五艘より戎克船ジャンクせんへと斉射が放たれます。



矢頃は一町廿間(145メートル)。

※和弓(大弓)の最大射程は四町(432メートル)を超えます。

戎克船より異国の叫びと散発的な反撃が放たれます。


「お屋形様、彼奴は唐人か高麗人の様子。得物も短弓でござるな」

東五郎秀次が置き盾の狭間から相手を窺いながら報告すれば、伊予守。

「全く海乱鬼かいらぎ奴もめ、厄介な!」



海乱鬼とは倭寇と呼ばれる海賊集団であり、初期には倭人が中心となって朝鮮半島や遼東半島への略奪行為が行われておりましたが、徐々に九州北部への略奪行為が多発する様相を見せつつありました。

また倭寇は和人、唐人、高麗人など雑多な人種で構成され比律賓フィリピンなど東南アジア一帯での密貿易、葡萄呀ポルトガル貿易船団への略奪行為にまで及んでおりました。



「帆柱倒せ。船速上げよ。小早二隻は焙烙火矢、残り三艘は火矢を三連射後離脱。関船二艘は接舷し乗り込むぞ!」

大鉞まさかりを握り締め伊予守が叫びます。

「高麗人の矢は毒が塗られておる事が多い故。各船蛇行しつつ進め。置き盾の陰に身を置け」


「距離丗間(55メートル)」

傍らの東五郎が叫ぶ。


「火縄ニ連撃てぇ!」


お互いの顔が目視出来る距離まで接近しての火縄銃での掃射に堪らず反撃が止みます。

「船速更に上げ、面舵」

火線飛び交う中、お互いの距離が縮んでいきます。

「接舷!熊手を掛けよ」

互いの船がぶつかり合う衝撃が響きあう中、熊手と鉤縄で船体が繋がります。

「接舷確認。乗り込め!」


「……、…!」

異国の叫びと共に敵兵が迎え撃ちます。

反身が無い直刀の片手剣と木盾を構えた其の姿を一瞥し、伊予守は「高麗人か…」と呟きます。


左手の木盾を前に突き出し、右手の直刀は腰の高さに携えた左半身の構えをとり、徐々に間合いを詰めくる海乱鬼兵。

「…!」一気に腰だめの突きを放つ。

「遅いっ!」

轟っと唸りを上げる大鉞。

左脇構えから放たれた中段は直刀を持つ腕ごと一合で弾き飛ばし、悲鳴をあげる間も与えず袈裟に切り落とす。

崩れ落ちる相手に一瞥もくれず、次の相手を探し進む伊予守。


「ひよぅっ」

しごき出された十文字槍の穂先が海乱鬼兵の喉を刺し貫き、引き抜き樣に、左構えに持ち替えて横払いで打ち据える。

東五郎の周りには幾人もの海乱鬼兵の亡骸が積み重ねられていく。

〝突かば槍、薙げば薙刀、引かば鎌。兎にも角にも外れ無し〟を体現す鬼神の如き姿に、海乱鬼達は其の目前から逃がれようとする。

「しかし此奴ら、今一つ手応えがござらんな…」


「ぐっ…」

呻き声をあげ松浦兵が倒れる。


「ぬっ…」


黒い直垂ひたたれ姿で、血染めの大太刀を携えた男がその姿を現わす。



「いずれに名のある御仁とお見受けするが…」

初めての戦闘回です。

文章で動かすのは難しいですね。

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