序章
初めての投稿となります。
時は戦国の世、佐世保城主 遠藤但馬守様には一人の美しい姫様がおりました。その名は「白縫姫」と言い、その美しい可憐な姿は花の如くとうたわれ城下でも愛される姫君です。
赤崎城主である赤崎伊予守殿へのお輿入れもすでに決まり、嫁ぐ日も間近となったある日の事…
遠藤家にとっては主君筋にあたる飯盛城主 松浦丹後守親が烏帽子岳での狩りの帰りに佐世保城へと立寄ります。
丹後守親は相浦松浦氏の当主であり、肥前国の覇者平戸松浦氏 松浦肥前守隆信の実子です。
流石の遠藤但馬守も無下には出来かね、祝宴の席を設けますが…実は丹後守、噂に聞く遠藤の美姫を一目見ようと考え、狩りにこぎつけ佐世保城へ訪ねた訳です。
酒宴に席にて、「のう、但馬殿。貴殿には踊りの名手として知られる娘御がいるとの事、是非それがしも一度お目にかかりたいものであるの。」
これには但馬守も迷います。
如何せん、この丹後守殿は血筋も良いのだが、兄上であられる松浦鎮信殿や後藤惟明殿に比べると… どうも我が強い事で知られており何を言い出すか分かりません。
まあさすがにそれぐらいの分別はあるか、と自分に言い聞かせ、渋々姫に踊りを申し付けます。
正に、花に戯れし蝶の様に舞うその姿に、丹後守
の胸に劣情の炎が灯る。
「の…のう、但馬殿…それがしに…。わしに姫を嫁にくれぬか?」などと、とんでもない事を言い出します。
「いや丹後殿、その義は… その義は固くお断り申します。この白縫は赤崎伊予守殿との祝言が決まりし身。伊予殿への義理も立ちもうさん。ここは暖かく二人の祝言を祝う事をお願い致す。」
「むむっ、そうであるな…。戯れ言であった。但馬殿忘れくだされ。」と引き下がります。
これには、但馬守も姫も胸を撫で下ろします。
開けて翌日「それでは但馬殿、世話になったな。白縫姫もご健勝あれ。」と但馬守は居城たる飯盛城へと騎馬を向けます。
帰り道において、近習の古川治部左衛門と山本相模らは「殿も大人に成られたな、あの場で引かれるとは!」
「そうであるな、あの場でご無体を申されるとどうなって居たことやら…」などと申しておりますと。
「これ四郎。」
「はっ、何でござるか殿。」
と山田四郎が馬を寄せて答えれば。
「のう、四郎よ。赤崎を討つのと遠藤を討つのはどちらが難しいかの?」
後半に多少のヘビーな表現も含まれます。