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新井くんは給食嫌い。  作者: タカクテヒロイ
6/11

第6話 準備の準備




月曜日。それは1週間の始まりである。

正しくは日曜日が始まりなのだが学校や会社が始まるのは月曜日であり、この日を憂鬱に思う人が大多数だろう。最も自殺者が多い曜日でもある。

もちろん俺も嫌だ。マジで嫌だ。給食が。


もし俺がマッハ20で動けたら月曜日の起源となった月を速攻破壊しに行くレベルだからな。ヌルフフフフ。


だがどれだけ戯言を並べようと時の流れには逆らえない。 また1週間ぶりに月曜日がやってきたのである。


× × ×



「今日はここまでだ、少し過ぎてしまったな、給食当番は急いで給食を取りに行くように。」


チャイムが鳴り終わって3分後くらいに4時間目が終わった。


今週は給食当番だ。


お馴染みの白衣とマスク、それに変な帽子をつける。 たまに先週のやつが洗うの忘れてたりするけど今回は大丈夫そうだ。


「新井ー先に行っとくぞー」

同じく給食当番の菊池に声をかけられる。


「おー、俺もいまいk」

「むほおおぉぉっっ!!給食だあぁぁっ!!全部俺のもんだぁぁぁ!」


ドスドスドス……と大きな足音を立てて真っ先に向かったのはなぜか白衣がよく似合う給食当番の松山。


いやいや、どんだけ早く行っても無駄だから。 みんなでいただきますしなきゃ食えないから。


「新井、帽子曲がってるよ」


そう言って直してくれたのはこれまた同じく給食当番の相沢。


「ああ、さんきゅ」


「どういたしまして。 今日も新井がどうやって給食残すか、期待してるよー」


「待て待て、もしかしたら食えるかもしれんだろ。第一こないだはお前が…」



「おい、お前らまだいたのか。他のみんなはもう行ったぞ」


緒方先生に注意された。


「「は、はーい」」


なんか声が揃った。

急いで教室を出る。

また2人で歩くはめに……


「怒られちゃったね。」


「お前のせいだぞ……というか、授業終わるの遅かった先生サイドにも落ち度はあると思うんだよな」


「ああいう時って、 1分だけ延長させてとかよく言うけど結局オーバーしちゃうよね」


「まったくだ。というか、下校時間は特に決まりないのに、なんで遅刻はあんなに取り締まるんだろうな」


「言われてみれば確かに。私遅刻したことないから考えたことなかったな」


「マジかよ、それじゃあ相手の思う壺だぞ。こんな理不尽なルールに抗うためにも遅刻はするべきだ」


「遅刻せず早く下校するって考えにはならないのかなぁ…」


なんてことを話していると目的地に到着。


うちの小学校はエレベーターで教室と同じ階までワゴンが運ばれてあり、そのワゴンから鍋やらボウルやらを教室まで運ぶことになっている。


低学年まではワゴン車をそのまま教室まで引いて行ってよかったのだが何故か今はそれは禁止されている。理由はよくわからん。


「あいつらはえーな…」


「2人とも給食好きだもんね、特に松山。」


「松山は異常だけどな。食い物のためなら世界でも敵に回しそうだ」


ちなみにさっき道中でけんちん汁が入った鍋を持ってダッシュする松山とご飯が入ったアルミ製の缶みたいなやつを運ぶ菊池とすれ違った。

なのであとは食器ときんぴらごぼうのボウル、牛乳瓶の入った箱が残っているはずだ。



ちょうどそこにはもう1人の給食当番の女子が牛乳瓶の箱を重そうに運ぼうとしていた。名前は……えーと、福井さんだったかな? 大人しくて静かな子だ。あんまり喋ったことない。


かなり重そうだ、代わった方が良さそうだな。落としたら大変なことになるし。


「福井さん。牛乳瓶重いでしょ、代わるよ」


「え……あ、ありがと……」



牛乳瓶の箱を慎重に受け取る。

やっぱ結構重いな。


「うん。ボウルは軽いからそっちの方持ってよ、相沢は食器を頼む」


2人に指示を出す。


「うん……わかった」


「ほいよ、新井に指示されるのはなんか釈然としないけど」


「おいそこ、余計なことを言うんじゃねぇ」


「いやー、だって新井って将来会社でこき使われてそうじゃん?後輩に『パン買ってきてくださいよ』とか言われてそう」



「そういうリアルな想像やめてくれませんかね」


確かにありそう。嫌だなぁ、大人になりたくないなぁ。


「ふふっ」


俺たちのやりとりが可笑しかったのか、福井さんはクスっと笑った。

福井さんの笑顔は初めて見たかもしれない。


「んじゃ行くか」


食器は3種類あってまだ2種類残っているけど多分菊池と松山がもう一度来るだろうから任せよう。


しばらく歩くと、案の定あいつらがきた。


「お前ら早くしろぉおおぉぉ!!

間に合わなくなっても知らんぞオォォ!!」


松山が俺たちに恫喝してくる。

いや、何に間に合わなくなるんだよ。

腹減ってるときと減ってない時でキャラ変わりすぎだろ。


「おい新井ー、女子2人と一緒に歩くなんてやるなぁ~」


菊池もめんどくさい絡みをしてきた。


「いや、そういうんじゃねーから…それより食器頼むわ、早くしないとまた先生に怒られる」


「それもそうか、じゃあ急ごうぜ」


適当に話を流した。こういうのはムキになると逆効果だ。


ようやく教室に全て運び終えた。

ここから配膳やらなんやらの準備が始まる。


それと同時に、今日の俺の作戦も始まる。今日も頑張って給食を乗り切るぜ!










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