1.小春日和
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桜が舞う小春日和の入学式。
佐藤心春いざ憧れの専門学校へ入学です。
ただひたすら長い学校の説明を受け終え
溜息をついた所で後ろから煩いぐらいの声量で呼ぶ友達。
『心春-----!』
そう呼んで抱きついてくる彼女は私の中学時代からの唯一の親友 杏。
『もう、本間長かったわ…うち途中から寝て覚えてへんわ!』
「駄目じゃない。ちゃんと聞いておかないと(笑)」
杏はとても明るくて誰とでも仲良くなれて
笑うと左右のえくぼがくっきりと出る可愛い栗色のショートの女の子。
おまけに胸が大きい。
そんな私は杏とは正反対で腰ぐらいまである重い黒い長い髪で
人見知りであまり人と話す事も出来ず友達が少ないせいか笑うことも少ない。
そして私は…小さい……。
杏は関西弁だけど私は人前では標準語。
口調がきついせいで今まで友達が居なかったのもあるから
日々人前では気を付けている。
そんなん言われても長いもんは長い…。と口を尖らせている杏が
ふと思い出した様に落ちるのではないかというほど目を見開いて
『なぁなぁ!!!めっちゃな遠くやけどなイケメンおってん!
名前何て言うんやろ…!めっちゃ気になるわー!!』
でた。杏の男前レーダー。
「あ、そうなん?またろくでもない男じゃないん…?
前みたいなヤンキーみたいな…いつか詐欺合うよ…」
いつもの事なので適当にあしらう。
『ちゃうちゃう!!髪色私ぐらいの暗い色で
めっちゃ背高くてクールな人!!!』
へー。杏にしては意外。
いつも金髪とか緑とか眉毛の形すらない人ばっかりやったから。
「声掛けてみたら?」
と言うと杏は指を左右に振り甘いという。
『あんな男前やのに彼女おらんわけなくない?
あ、ほら!今も女の子達に囲まれてるやん…!」
と言われ案が指差した方向を見ると確かに囲まれている。
行っておいでよと言うと少し躊躇いながら
笑顔でありがとうと言い走る杏。
恋する乙女だな~と思い私は
一人でここに居ても仕方ないので音楽を聴きながら家路に着こうとしていた。
一人の男に見られていることに気が付かずに…。
気が付くのはまだまだ先のお話…。