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橘くんと草間くん。  作者: 柳蓮
4/8

第一話『同室』(3)

男子高校の入学式は凄絶だった。



黒い学ラン姿に身を包んだ144名の新入生がだだっ広い体育館にズラリと並び、一人くらい女性がいてもいいのでは?と意見したくなるくらい、徹底して壁際に立つ教師陣を見ても男、男、男。


更に在校生代表男子30名による超重低音の『校歌斉唱』。


男ばかりのむさ苦しさとはこういう事かと草間は思わず顔をひきつらせた。

おまけに全寮制という隔離体制まで整って。

思春期真っ只中の男子に女子のいない生活を送れというのは、実はかなり酷な事ではないかとさえ思った。



「俺、学校間違ったかも…」


「女子の黄色い声がヒーリングボイスに思う日が来るなんて…」



(それについては激しく同意するよ)


後ろから聞こえた小声に、草間はうんうんと頷く。


さすがの草間も男だけで歌う重低音ボイスの校歌は耐え難かった。


例えるなら、お経にリズム感ついたような…。


今日はまだ30名。全校生徒408名だとどうなる事かと考えてみる。



(………男子校の負の部分を知った気がする。まぁでも俺にとってはネタの宝物庫だけどね。最初の目標とは外れちゃったけど、本領発揮っていうか、これはこれで楽しく過ごせそうだ)


長く退屈な校長先生や在校生代表の祝辞、新入生代表の挨拶。

それらが終わって終礼の合図のピアノの音にビクッと身体が震え、慌てて周りに倣い頭を下げる。


(ヤバイ。ぼぉーっとしてた。見られてたら恥ずかしいなぁ。ネタになりそうな人探してたらたらつい…)


心の中でペロッと舌を出し、軽く深呼吸して空想に更けて緩みがちなの自分の気を引き締めた。



入学式が終わると新入生はぞろぞろとクラスの若い順に各教室へと向かわされた。

担任教師を待つ間、教室は各々談笑でざわついている。

一クラス36名の教室は縦横6列の正方形に机が並べられている。

出席番号順の席順が指定され、草間は2列目の前から2番目の席に着いた。



「中学の時に彼女作っときゃよかった」

「より戻そうかな…」

「畜生!なんで女子がいないんだ…?!」



(いやいや、男子校なんだから女子いないの当たり前だろ。初日からそんな飢えてたらこの先どうすんだよ?気持ちわからなくないけどさ)


頬杖をつき、教室内を静観しながら、聞こえてくるクラスメイトの呟きに草間は呆れたツッコミを心の中で入れていた。

昨日、寮監に連れられて新入生及び、クラスメイトとは全員食堂で顔を合わせているため、大体は気の合う相手を見つけて、仲の良いグループの輪なんかもは出来つつあった。




但し、自分を除いては。



あのあと結局同室とは会話をしていないし、食堂も気の合いそうな人を見つけられず、夕飯を早々に済まして部屋に閉じ籠っていた。



同室の橘はやっぱりクラスの中心になりうる存在で、彼の周りには昨日会った菊地の他に、長身で体育会系な雰囲気の岩田、ふわふわしたパーマヘアとタレ目が特長の東藤という3人が集まっている。


(やっぱり第一グループですよね~。そうだと思ったし)


頬杖つきながら、自分の同室をぼんやりと観察する。

第一グループというのは、クラスの顔になる人達。平たく言えば、クラスで一番目立つ集まりの事を指す。

草間にとって最も苦手で警戒するべき相手だ。


中学の時は教室で漫画を読んだりしてると、この第一グループによく絡まれた。

そして『ヲタク=キモい』『ヲタク=格下』なんて偏見を常に持ってくる。


その直結回路はどうにかならないのか。

誰に迷惑かけてるわけでもなし、趣味は人それぞれで何故バカにされねばいけないのかと何度思った事か。


それでも無視して耐えて、

「他人を見下すあいつらは人間的に底辺だし、終わってる」

なんて皮肉れた答えで、自分を励ましてた。



彼らがただ苦手な人か、底辺に落ちるかはこれから様子見になる。

いつもの長考モードに入って担任が来るのをぼーっと待っていた。

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