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異世界ダンジョンウォーズ  作者: watausagi
最終章 最後の決戦
69/85

なんか、バトル漫画っぽいシチュエーションだけど……

◇◇◇◇◇王人


ダンジョンの出口付近には、地球で高校2年生の俺こと犬 王人と。異世界最強の不思議ちゃんと。四宝の一つであるエンドールと。火に関しては不思議ちゃんをも上回るかもしれない暴力女の3人と一体がいる。


それを見送る、ダンジョンに留守番するのは、もちろんラピス。それに狩人殿と聖女様をを護衛につけた3人。聖女様の回復など、ココから配られた回復役に劣るので連れて行かないが、むしろ聖女様には戦争後に期待させてもらう。彼女の民の信頼は、確かに確実なものだ。


……ラピスも。


絶対に連れて行くわけにはいかない。戦場でラピスはーー邪魔だ。気になって気になって仕方がない。狩人殿もこちらに来たそうだったが、安全に安全を重ねて強引に残らせる事にした。


「オトーさん……」


心配そうに見つめてくるラピスの頭を、撫……撫で……ああ、撫でる。これくらいで気がすむのなら、安いものだ。


ーー時間はもうすぐ9時。一番ゾディアックが地上に近い時で、すなわち集合時間。


「ここは任せたぞ狩人殿」

「大丈夫です。ラピスも、私が命をかけて守ってみせるです」

「……安心した」


既にダンジョンの罠は全稼働。初見殺しを多数配置の鬼畜仕様。よっぽどの事がない限り、ここは安全地帯のはず。もしもの時のために、狩人殿に通信機を渡しているのだし……


最後にラピスを見て、外に出た。少し曇っているが、雨の心配はいらないだろう。


俺は移動手段としてカオスドラゴンを呼び出すーーいや、呼び出そうとしたのだが、異世界知識さんの声によって遮られた。


《敵が来ます》


俺に続いて出てきた皆も、俺が臨戦態勢に入っているのに気づいて付近を警戒する。


……しかし、なんだこのタイミングの良さは? まるで今日、俺がこの時間帯にここにいるのだと知っているような……実際に知っているのか?


ーー情報が漏れていた。


そう考えるのは簡単で。


ーー情報を漏らしていた。


そう考えるのが、妥当かもしれない。


敵は空からやってきた。流星の如く、派手なご登場。服装も全体的に白っぽく、まるで雰囲気は聖職者といったところか。


人数は2人。


そのどちらも、若い男。


「ゾディアック十二聖者が1人、キャンサー・カルキノス。お相手しましょう」

「同じくヒュドラ・サジタリアス。僭越ながらお相手しよう」


声から、雰囲気から、2人の自信満々な余裕綽々の様子が感じられる。自分の力を信じて疑わない、絶対的な敗北を経験した事のない強者の特権。


こちらの戦力を、分かってないらしい。


まるで中ボスのように登場して、十二聖者と言えばそれなりの地位を得ているキャラクターの2人だが……今回ばかりはしょうがない。


呆気なく。


ーー10秒で終わらせる。


◇◇◇◇◇忍


ダンジョンを出ると、そう遠くない場所に白っぽい清楚っぽいシスターっぽい服を着た女が、石の上に座っていた。


おいおい、こいつはまさか、いきなり敵のご登場かこら?


「よー久し振り!」


様子見もかねて、挨拶してみた。すると女はこちらに気づき、フワフワと手を振ってくる。

ふむ、色香がある。年上の強みといったところか、若者では発する事のできないエロスを感じた。巨乳なのもそれに拍車をかけている。


ーーだから何だという話だが。


残念ながら俺は、見てくれを重要視しない。人間、大切なのは中身だと思う。


……今のところ、敵と仮定する女は石から降りて、散歩気分で俺に近づいてくる。本当にただの色っぽいお姉さんかもしれないと思ったが、次の発言でそんな甘い考えは真っ向から否定される。


「十二聖者が1人、タウラス・プレアデスと言います。よろしくは……できませんね。悲しいものです。貴方も、そうは思いませんか?」


んー……


「思う思う。もうメッチャバリバリ。何なら前世からそんな事を思ってた気がするぜ」

「まあ、面白いお方」


コロコロと笑う今のこいつなら、すぐにでも無力化に出来そうだったが…….不思議と、そうする事を躊躇われる魅力が、目の前の人間にはあった。


十二聖者、ようはゾディアックの駒。


さて……どうするか。とりあえず指示を仰ごうとしてチャットを使うが、ノイズしか走らない。コールもだ。こんな事は初めてなので、少し驚いた。理由はわからないが、チャットとコールが使えなくなってる。


「あっ、見てくださいあの雲。まるで屠殺される前の牛みたい。貴方もそうは思いませんか? 思いませんか。そうですか……ならアレは雪だるまですね。貴方もそう思って下さい」


……ほんと、どうしようか。


◇◇◇◇◇健太


ふっふっふ、俺こと如月 健太を、どっかの誰かは生徒会最弱でただのお調子者キャラーーなんて思ってたりするだろう。


その通りだ!


うん、忍もやる時はやるし。霰ちゃん怖いし。会長に勝てる人間なんているとは思えないし、何より副会長は比べる事が違う。


なんかさー、俺のスキルはありきたりで、どうも個性というのが見当たらねーけど……いいんだ。これが俺なんだから。


強そうなスキルは他にもあった。すっごい中二病なスキルがあって、ゼロの刻印! ふっ、それは残像だ! ん、今何かしたか? とかやってみたいとも思った。


でも結局は、雷と剣を選んだんだ。選んで、努力した。凡人は凡人なりに、何倍も頑張らなくちゃならないって分かってるから。そのお陰か俺は、明らかに強くなったと思う。異世界に来たばかりの俺なら、軽くあしらう事の出来るほど……


だけどよぉ


「ジジイに勝てねえとか、自信なくすぜ! いい加減くたばりやがれ!」

「フォッ……甘いのぉ」


白髪ジジイは俺の攻撃を、紙一重でかわす。しかし危なげなところは一切なく、避けられるのが当たり前みたいに。


こいつはなんか、レオ・ネメアーとか名乗った。敵って分かればそれでいい。遠慮なく気絶してもらおうと魔法剣・雷で斬りかかったが、難なく防がれた。


それからというものの、半ば意地になって攻撃を加える。そして同じ数だけ、避けられたり防がれる。


どうでもいいけどジジイ、ヒゲとフッサフサの髪がまるでたてがみみたいだ。


「ライサンダーァア!」

「おっととい」


またもや避けられた。


「今のは中々良かったぞい」

「こんちくしょう調子に乗りこなしやがって! まずはその髪むしり取ってやるから覚悟しとけ!」

「ぶっ殺すぞ貴様ぁ!!」

「怖っ!?」


温厚そうなジジイに、髪の事は禁句らしい。確かに立派な髪、もといたてがみだからな。


「髪は嘘、髭だ! 髭を引っこ抜いてやる!」

「……フォッフォ」


お、基準はよく分からないが、ジジイの怒りは収まった……


「ーー楽に死ねると思うな小僧」


全然そんな事なかった。


◇◇◇◇◇霰


ほら、私ってどちらかというと、1度は挫折とかしたりするヒーロよりも、真っ直ぐ信念の通った魅力的な敵キャラのほうが好きなタイプなんです。


例えその人がどうしようもない悪であってもーー外道ではないところがポイントーー助けてと懇願するように、すぐ感情を表に出すヒロインよりかはずっと大好きです。


「ですが貴方は……残念ながら、そのどちらでもありませんね」

「なに、意味わかんないんだけど」


出ました。『意味わかんないんだけど』

少しは分かろうとする努力くらいしたらどうですか。このスカポンタン。


「私は貴女を好きになれないという事です。理解していただけましたか? えーと、十二聖者のピスケスさん」

「は? 何で私がアンタに好かれなきゃなんないのよ。頭おかしいんじゃないの」


この人は頭おかしいのでしょうか。いえ耳がおかしいのでしょう。別に私は、好かれなければならないとか、そんな事は一言も言っていません。


好きになれないと、ただ事実を言ったまでです。こんなの、勉強が嫌いと言って、じゃあ勉強するなと教師に叱られるほどの理不尽さを感じます。


ーーゾディアック……黄道十二宮で、それにピスケス。


「ピスケス、たしか魚座でしたか。いいですね魚座。私も魚座ですよ」

「ああ? ーーあ、難しい言葉言って誤魔化そうとしてんでしょ。へんっ、これだから頭でっかちは嫌いなのよ」


私は難しい言葉を使っていませんし、誤魔化すって何を?

ツッコミどころが多くて、どこから対処すればいいのやら。それと、どうやら向こうはゾディアックの意味を知らないでいるみたいですね。意味を知らないでこれまで名乗ってきた……まあそこらへんの謎は既に、考えないようにしているのですけど……


話は変わって、私の尊敬する人間は王人先輩です。もっと他にも、尊敬されるべき人間は高校にいたのかもしれませんが、やはり私は王人先輩なのでした。


普段は人を寄せ付けない「俺に構うな」オーラを出して、しかし「お前たちから話しかけるのなら、やぶさかではないのだぞ」という面を持ち合わせている事も確かで。いざとなれば情を無視できるあの人のそんな一面も、私にとっては崇拝すべき事なのでした。


ーーいつか私もああなりたいです。


いえ、それがダメな事くらい分かっているのです。分かり過ぎるほどに分かっているのですけど、タバコを吸ってしまう人間と同じみたいに、私にとって王人先輩という人間は禁断の果実でした。


どうも、今はダンジョンに避難させているひなたちゃんは、私が王人先輩を好きだと思っているのらしいですが……そして止めようとしているのですが……そこだけが彼女のダメな部分です。


同じ同級生の燈華。王人先輩の妹であり私のお友達ですが、彼女も彼女でまた面白いです。彼女は私と違って、王人先輩の性格を快くは思っていません。表面的には自分自身すら繕っていても、むしろ奥底では、嫌悪ーーとまではいかないまでも、敬遠くらいはしているでしょう。(彼女がそれを自覚しているかどうかはともかく)

なのに、大好き。血の繋がりを抜きにして、あれは本気です。敬遠しているのに愛しているという矛盾……王人先輩に普通の友達はあまりいませんが、私も含めて普通とはどこか縁遠い人間があの人に集まっているのは、側から見て面白いです。


ーー話は戻って、先ほどから私は、目の前の人間の対処に困っています。何故かチャットとコールがうまくつかえず、連絡が取れません。


……仕方ないです。


「少しの間、凍ってもらいましょう」

「っ……」


案外、近くにいたから良かったです。四方八方から氷の壁を彼女にぶつけて。


そう、ぶつけて。


いっそ押し潰そうとしましたが、私の氷がスパスパと斬れちゃいました。氷の壁が崩れて勝ち誇った彼女の顔ときたら……


「調子に乗ってんじゃないわよ氷。私の水で、削ぎ落としてやるわ」

「水……水が氷に勝てるとでも?」

「力は使い手次第よ。アンタみたいなガキは、経験が足りない」

「なるほど、貴女はおばさんでしたか」

「ぐっ……だーかぁら、調子に乗ってんじゃないわよって言ってんのよ!」


私に対抗したのか、四方八方から水の壁が迫ってきました。

ああ、みんなに遅れないよう早く倒さないといけないのに。いやこの場合、みんなも私と同じ状況になっているとか?


だったら勝負ですね。


誰が1番早く倒せるか。


◇◇◇◇◇会長


予想はしていたが、ダンジョンを出た瞬間、空から落ちてきた敵。


どうした事か。


来るなら軍隊でも来るのかと思いきや、数はたったの……1。


「貴様1人なのか」

「ああん? んだよ。その通りだよ。文句あっかよ? 女1人に手間かけるほど、こちとら暇じゃねえんだよ」

「女1人?」


そんな……だがしかし、実際に、確実に、この周りには私とこいつしか居なくて……隠れているとか、そういうものでもなくて。


本当に、自分1人で大丈夫だという確固たる自信を、こいつは持っているのだ。


「なら、もう何も止めない。ーー私は生徒会長。生徒会を執行するまで」

「邪悪に名乗る名前はねえが、俺様は礼儀がくっそいいから教えてやる。

十二聖者が1人、オリオンキラー・スコーピオン。てめえら悪を、滅ぼすために生まれた男だ」

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