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異世界ダンジョンウォーズ  作者: watausagi
早くココに会いたい
6/85

成長のドリアード

◇◇◇◇◇


異世界に来て早3日目、俺はドリアードパワーとドリアードマジカルという、世界でも特別珍しい2体に水をやっていた。


……おっと、詳しく言うと水をやっているのはラピスだ。俺はそれを見守るだけでいい。


「もっともっと〜」とドリアードパワーが、「多いよー多いよー」とドリアードマジカルが。ラピスは少し混乱してきたようだが、それでも真面目に取り組もうと思っている事は分かる。


「……疲れた」


水をやり終えた頃、ラピスがため息と共に漏らす。それを聞いたドリアードパワーとドリアードマジカルが、自分の体についたまん丸い実を指差した。


「どうぞどうぞ〜」とドリアードパワーが、「もらってもらってー」とドリアードマジカルが。ラピスはなんだか分からないようなので、俺が最初のお手本を見せる。


「見ててろよラピス。こうやってコップを下につけて、この上ら辺を握る」

「やんっ」


ドリアードパワーの官能的な声と共に、俺のコップへ実から絞り出されたとれたてジュースが出来た。


「ふむ、今の所コップ2杯が限界か。

——さ、これを飲みなラピス」


ドリアードパワーから取れたジュースは赤い色。俺はドリアードマジカルにも同じ事をしながら「やんっ」、恐る恐るジュースを口にするラピスを見る。


「っ……おいし! これ、おいし!」

「わ〜いわ〜い」

「私のもー」


言う通り、今度は青色のジュースをラピスにあげる。さっきの赤色で、これは美味しいものだとラピスは気付いたらしい。


「おいし! おいし!」

「わーいわーい」


俺もドリアードジュースを飲む事にした。

もちろんこれは、美味しいだけじゃない。ドリアードパワーのジュースは力が上がる。ドリアードマジカルは魔力があがる。異世界ならではの成長アイテムって事だ。


変化を感じれるほど効果は強くないが、これを毎日続けるだけで随分と変わるだろう。


俺も隠密レベル10のお陰で、ほんの少し移動速度に補正がかかっているような気がした。なら、他の剣術スキルなんかは、筋力やら何やらがあがっているんじゃないだろうか?

答えはイエス。

対抗するためにも、日々の日課としてこれは欠かせない。


「——さて、そろそろだな……眠り姫を起こしに行くとするか」


《……何ですかそれ》

(……何となく)


◇◇◇◇◇


自室へ戻ると、まだ狩人殿は寝ていた——裸で。


「何でやねん」


寝相か? 寝相が悪いのかこいつは? 朝は暗くてよく見えなかった……というか見ようとしていなかったらから分からなかった。


「それにしても服を脱ぐほどの寝相とは一体……」


ちょっと興味が湧いた。

が、しかし、寝相じゃなかった。


「ラピスやった」

「……裸に? どして?」

「起きたら、いたから」


なるほど。

朝起きて俺以外の人間がいたから興味が湧いて、ついでに脱がして身体を詳しく……ついでって何だよついでって。


「人を裸にしてはいけません」

「分かってた」


反抗期かこの娘。

とりあえず誤解されない内に服を着させよう。枕元にあるみたいなのでそれを……と、ストップストップ。

深呼吸だ俺。深く息を吸って……吐く。


(狩人殿はいつ起きる?)

《眠り姫は王子のキスでございます》


こやつも反抗期か!?


《……残り12秒》


12秒。

良かった。今俺が服を取りにいっても逆効果。あるあるよろしく、きゃー変態なんて汚名をかぶるところだった。例え誤解でも変態呼ばわりは嫌だ。


「——……んぅ」


と、12秒が経ったらしい。

狩人殿はピクリと体を反応させ、まだ開いたり閉じたりする頼りない目つきを——獲物を狩り殺す鋭い目つきに変えた。

切り替えが怖い。狩人殿が怖い。


「ここは……あっ」


狩人殿が俺に気づいた。

一般人ならその目を向けられただけで萎縮しそうになるが、生憎と俺は生徒会長で慣れている。逆に睨み返す余裕すらあるぞ。


「気がついたようで良かった。いきなり眠りこけるものだからどうしようかと」

「……そう、ですか。事情は把握しましたです。どうやら私は貴方様に救われたようですね」


うん、敬え。

いいえ、眼福です。

いえいえ、当たり前の事をしたまでです。


……さて、どの選択肢を選ぶか。


「うん、確かに救ったかもしれないけど、こちらとしては良いもの見れたというか、人として当たり前の事をしたまでで救ったとかそんな大層なもんじゃない」


結局ゴッチャ。もう、自分で何が言いたいかどうか分からない。


「貴方様がどう思おうと私が救われたのは事実、しかし——」


ここで彼女は、自身の身体を見て……今度は俺を疑わしげな目で見つめてきた。


「——何故私は裸なのですか」


狩人殿は布団を被る。

もちろん、不可抗力とはいえ女性の裸を見てしまった事は謝った。表情を見せまいとして、実は頰が赤く染まっているのを見てしまった俺としては、それ以外にやる事がない。


——全てラピスがやりました。


ちゃんとこれだけは伝えれたから、良しとしよう。


「——ところで、ラピスとオウトの関係はなんなのですか?」


と、狩人殿に聞かれてしまったが、これは迷う。まさか作ったとは言えないし、言いたくないし。

ありのままの事実を話せば良いのか?



「俺の娘だ」

「そ、その歳でその歳の娘……!」

「そこはまあ……訳ありなんだ。さっきラピスが貴女を裸にしてしまったのも、実は俺以外の人間に会ったことがないからで、見逃してやってほしい」

「な、なるほど……大変なのですね」


どう反応すれば良いかわからない狩人殿は、そう答えて、その言葉にラピスが反応する。


「オトーさん、大変?」

「ん? ……まあ、少しはな。色々やることあるし」

「だったら、ラピス手伝う。そしたら、オトーさん大変じゃなくなる。

これ、良いことづくし」

「ラ、ラピスゥ」


こいつめ、こいつめ。我が娘は良い子に育ってくれているみたいだ。

目に見えて話す量が増えているのは、やはり成長しているからなのか。変にツンデレ属性なんてさせないよう気をつけよう。

……別にツンデレが嫌ってわけじゃないが、ラピスは素直な子になってほしい。


「オウト、質問ばかりで悪いが、ここはどこなのですか。私は確か……落とし穴にはまって……」


またもや狩人殿は困った質問を投げかけてくる。俺からしたら潔いほどのど真ん中ストレートを。


……ここで嘘をつくべきか、つかないでおくべきか。

無難は嘘をつく。後でバレだとしても、そこまで信頼を築き上げていれば、すぐにわだかまりはおさまる。

逆につかないでおくは、非常な賭け。敵対するか、味方になるか……


「ここは俺の家なんだよ。

ああ、貴族とかじゃないから安心して良い。ただ豪華な家に住んでるってこと以外は、至って普通さ。

ま、どっかの国じゃ名のある魔物使いだったけどな」

「……分かりましたです。何か隠したいことがあるのなら、今は聞かないです。

私は助けてもらった身、恩を返す上で失礼はしないです」


おや、今の俺のでっち上げ嘘話でそれが分かったのか。何というか狩人殿、全く村娘って感じがしないぞ。


(本当にただの村娘なのか?)

《その質問は、王人はただの地球人なのか? と同義です》


ああ、そゆことな。

だったら狩人殿はやっぱり村娘なんだろう。ちょっと変わってるが、それだけだ。


「アンタはこれからどうする? その怪我治るまでならいさせてやれるが、それ以降はこちらも絶対なんて言い切れない。こっちだって事情があるんだし……あれ、ちょっと待て、確かさっき恩を返すとか言わなかったか?」

「はいです。頑張りますですよ?」

「……つまり、君はなんらかの理由で帰る場所がないから、どうやら衣食住が充実してそうなこの家にひとまず住まわせてもらおうと?」


狩人殿は、苦笑いを浮かべた。


「それもあるですよ」


……素直なのは嫌いじゃない。

だが、リスクが出てくるな。俺がダンジョンの主だと言えば、どちらにせよ面倒な事が起こるから。


——しかし気になる。


帰る場所が無いとカマをかけてみた時、僅かにだが顔を歪ました。そこに『笑』はなく、ただの『苦』い顔。


(コレだけは聞いておこうか異世界知識さん。全くの推測で悪いが、こいつは俺たち学生が絡んでるんじゃないか?)

《当たりです》


……はぁ……だったら、尚更このままには出来ないか。少なくとも村をどうにかできる力がそいつにはあるみたいだし、行動力も備わっている。嫌な行動力だが。

平和を無闇矢鱈と崩そうものなら、どちらにせよ生徒会の出番だ。何とかしないとなぁ。

ああ、面倒くさい。

俺はいつになったらココと会えるんだ。


「分かったよ。精々恩とやらを返してくれ。腹減っただろ? 朝ご飯にしよう」

「助かるです。もう、ペコペコだったのですよ」


〜〜〜〜〜


まずルール。

自室より上の階には行かないこと。アスレチック広場より下の階に行かないこと。

それくらいでいいと言い、今俺たちは食堂へいる。ドリアードの事は知らないみたいだが、あれはどう見ても魔物なので、俺が魔物使いだと信じる要因となった。魔物使いとは読んで字のごとくである。


「どうだ、美味しいか?」

「……個性的……ではない味ですね」


的を射てる。

今日の朝ご飯はホットドッグ。何故か俺が作ると、悪魔的に味が『普通』へと変わってしまう料理を、狩人殿もリアクションに困っているようだ。

そうだ、昼ご飯はこいつに作らせよう。


「……?」

「どうかしたか?」

「ラピスは食べないのですか?」

「ああ、ラピスは食べなくていいんだよ。食べないんじゃなくて、食べれないの方が正しいか」

「……そう、ですか」


そりゃ不思議だよな。生きる上での最低条件を満たさなくていいんだから。


食事を不要とするラピスは今、ドリアードパワーとドリアードマジカルと一緒に何かをしている。楽しくお話でもしてるのかな。まあ、仲の良い事は良い事だ。

後で今日の分のスライムを配合した時に、ラピスラも加えてあげよう。きっと喜んでくれるはずだ。



——ホットドッグを食べながら久しぶりにチャットが気になったので、そういえばと昨日途中で止めてしまった生徒会執行部のスレを見る。もちろん狩人殿には見えないようにして。

……どうやら、新しいスレを開いたみたいだ。お題は【生徒会連盟〜生徒会執行部〜】


◇◇◇◇◇


【生徒会連盟〜生徒会執行部〜】投稿日 : 2016/06/05 (日)02:05:24


1 名前 会長


私達は、争いを望まない。特に生徒同士の戦争は、無理矢理にでも止める。

生徒会連盟は、平和を目指す。

今日も自己満足を満たす為、我が道を行こうではないか。


・これに入ったからには、生徒会執行部全員とフレンドになってもらうぞ王人。

・まず最初に、自分のスキルを明かしてくれ。これは他言無用だ。



2 名前 健太


【剣闘術レベル6】 【火魔法レベル6】【魔力促進レベル8】


3 名前 忍


【泥沼レベル5】【スキル半減レベル5】【鉄壁レベル5】【重力操作レベル5】


4 名前 霰


冷獄無火(れいこくむひ)レベル10】


5 名前 会長


【天衣無縫レベル10】


6 名前 健太


>>5

!?


7 名前 忍


>>5

!!??


8 名前 霰


何だかカッコいいですよ会長。


9 名前 会長


ありがとう霰。

私も一目でピンときた。

これしかない!とな


10 名前 健太


意味はそうでなくても、字面のかっこよさが会長とマッチしてるな

というかそんなスキルあったんだ。どんな力なんだろ


11 名前 会長


まだ私自身この力を持て余していてな。全ての能力を発揮しているとは言い難い。

能力……いや、スキルだったか。スキルの詳細はもう少し先にしよう。


12 名前 忍


ちょっと待てみんな。会長に隠れて目立ってないが、霰ちゃんも中々の……その……あれだ、マッチしてる

by 健太


13 名前 健太


おいやめろ巻き込むな


霰ちゃんはあれだよ、うん、カッコいい


14 名前 霰


どうでしょう……

私も会長と同じでピンときたんです。これしかないって。


15 名前 健太


2人の選び方マジカッコいいな……俺なんか魔法使いてー剣つかいてーだしよ



16 名前 忍


俺の決め方はあれかな、サポート役に徹したかったからかな。俺は会長や副会長みたいにスペック高くないし


っていうか副会長のスキル気になるよな。あいつ一体何取ってんだろ


17 名前 健太


自称平和主義だから……

【殺戮兵器レベル10】(抑止力で黙らせる)

とか

18 名前 会長


なるほど……書記にしてはまともだな。私の予想はあれだ、【天衣無縫】だ。


19 名前 霰


……どうして自分と同じって思考にたどり着いたんですか、とっても不思議です。


20 名前 健太


>>19

あっ……


21 名前 会長


あいつと私は似てるとこあるからな……スキルの一つや二つ同じでも違和感はない


22 名前 霰


ありまくりですよ。ありまくりんですよ。

だったら副会長は【冷獄無火】の可能性の方が高いです。【天衣無縫】なんて、どんな効果も予想できない不確かなスキルを副会長が取るはずありません。


23 名前 忍


>>22

アラレスイッチ……だと……


24 名前 会長


それは【冷獄無火】でも同じ事じゃないのか?


25 名前 健太


ま、まあまあ!

あいつの事だ。そんなに特別じゃないのを取ってそうじゃね? じゃね? なあ、忍もそう思うだろ? だろ?


26 名前 忍


なるほどー! 健太の言う通りだなー! 会長のも! 霰ちゃんのも! 可能性は低いなー!



27 名前 霰


……そうですね。副会長ですし、案外ありきたりなのを選んでいそうです。


28 名前 健太


本人がいれば話は早いんだが……おーい、早く来い副会長


◇◇◇◇◇


……考える。


——どうする。これは、本当に答えてもいいのか?


……違う。


——こいつらは、本当に正直に答えているのか?


……予想としては、会長以外全て正直に話している。いや、その会長でさえ嘘はついていない。

だが、俺は会長のこの発言が気になった。


『あいつと私は似てるとこあるからな……スキルの一つや二つ同じでも違和感はない』


もしかしたら会長は、1つ以上持っているんじゃないのか?


だとしたら……俺は……


◇◇◇◇◇


29 名前 王人


【魔物召喚レベル7】【異世界知識レベル7】【魔物使役レベル6】


30 名前 健太


お、おお……

以外と便利そうなスキル発見


31 名前 忍


おーけー王人

魔物ッ娘ハーレムですね

分かってます


32 名前 健太


>>

その手があったか!


33 名前 王人


魔物っ娘……ねぇ……

それと似たようなのなら後ろいるが


34 名前 健太


おお?


35 名前 王人


今のところ身長30センチくらい


36 名前 忍


あちゃー……


37 名前 健太


うおおーーー!!

ご褒美じゃねえか!


38名前 王人


んん?


39 名前 忍


>>37

んんん??



40 名前 健太


冗談に決まってんだろ

俺は断然おっとり系お姉さん派で

誰がなんと言おうが巨乳派だ


41 名前 忍


は?


〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜


139 名前 ★王人★


……


140 名前 健太


だからだな、巨乳こそ男の本性が現れる禁断のリンゴであってだな……


141 名前 忍


はっ、チッパイ一択だろ

でっかっくて何がいいんだ

目障りなだけだ


142 名前 健太


うるせーよロリコン

お前は一生童貞でいてろ


143 名前 王人


……


145 名前 忍


それ

それだよそれ

なに

ロリコン?

すぐそう決める

なんでそう決める?


俺はただ純粋な子が好みなだけで、別にロリコンじゃねーよ



146 名前 おおと


……


147 名前 健太


純粋な子 (ども)だろバカ

あのな、言っておくが世の中純粋な子なんてそういねーよ、大和撫子の時代は終わったんだ。あんなん妖精だ。女の突然変異だ

夢見るお前ちゃんなんか薄い本で囲まれてろ


148 名前O()TO


……


149 名前 忍


……おい、てめーの勝手な思い込みを押し付けるな。

例えばだ……いや、例えばじゃねえ。ほら、王人の妹、燈華(とうか)ちゃんなんて大和撫子だろ


150 名前 健太


ぐふっ……ず、狡いぞ庶務。燈華ちゃんは卑怯だ

チェンジチェンジ


151 名前 王人


あいつのどこら辺が大和撫子なんだ……小学生まで夜のトイレが怖いからって、俺を起こして連れて行くような奴だぞ


152 名前 健太


あぁ、やっぱ可愛い……トイレ連れて行くとか、ご褒美じゃんかよ

ん? 燈華ちゃんは何でお前起こすんだ。親がいるだろう


153 名前 王人


あれ、言ってなかったか?

寝る部屋だけは燈華と一緒だぞ俺。まあ、今となっちゃ関係ないが


154 名前 健太


……死ね


155 名前 忍


ブッコロ


156 名前 王人


いや、何で


157 名前 霰


すごく不毛な会話でしたね。

副会長名前で遊んでますよ。


158 名前 健太


霰ちゃん!

……霰ちゃんは……なーんか違うんだよな


159 名前 忍


ああ分かるそれ

そうなんだけど、違う


160 名前 霰


何ですかそれは

あっ、副会長フレンド登録しますね


161 名前 王人


……ちっ


162 名前 健太


>>161

あいつ、このまま流れればいいとか思ってたな絶対


163 名前 霰


わ、私とじゃ嫌……ですか?


164 名前 忍


とりあえず王人

ブッコロ


165 名前 王人


だから何で


166 名前 会長


ババーン!


①コールやチャット機能とは、どう見ても戦争用に適している。これは、集団戦を前提としていると予想される。


167 名前 健太


いきなりw

と、笑ってたが何やら不穏だな


168 名前 忍


もともと予想してたことだろ

ってか、マジで戦争みたいだなこれ

俺いち抜けた


169 名前 王人


俺にー抜けた


170 名前 会長


……


171 名前 忍


頑張ろうぜ王人!


172 名前 王人


も、もちろんだ!


173 名前 会長


はぁ……まあ、仲が良くて何よりだ。生徒会だけでも、ひとまずまとまらなければならない。

裏切りは許さないぞ。

その時は私自らが、処罰を下す。


174 名前 健太


マジ怖い


175 名前 忍


マジ怖い

マジ怖い

裏切りなんて、健太のバカくらいしかしませんよ


176 名前 健太


おい、ざけんな!

い、いやいや会長、案外副会長こそ何考えてるか分かりやせんぜ?


177 名前 霰


書記は人を巻き込むクズです。

そうやって何の罪もない人を巻き込む事が、既に裏切りだと自覚してください。

副会長もいい迷惑です。

とりあえず会長、書記に処罰を。


178 名前 健太


……


179 名前 忍


だからスイッチ押すなとあれほど(ry


180 名前 会長


落ち着け。

まず私達は現時点で何も出来ない。明確な敵が今のところいない訳だからな。

仲間を増やそうにも、完全に信用できる相手じゃないとダメなんだ。

もうすぐ何かが起こりそうだから、ひとまず安静だな。


181 名前 忍


風紀委員は……ダメだな


182 名前 王人


何故ここで風紀委員をだす。

犬猿みたいなお友達じゃないか我々は。


183 名前 霰


そもそも生徒会執行部って、とても仲のいいか、とても仲の悪いに分かれますよね。

後者にはこちらへ殺意すら湧いている人だっている事ですし。


184 名前 健太


会長が突っ走るからな……

まあ、前者には一生を捧げてもいいって人はいそうだし、そんな会長だからこそ俺たちはついていくわけだけど


185 名前 王人


俺は強制t


186 名前 忍


俺は騙さr


187 名前 会長


ありがとうみんな!


◇◇◇◇◇


「何をしてるですか?」


狩人殿から声をかけられた。とうの昔にホットドッグは食べ終えているらしく、こちらを不思議そうに見つめる。


そりゃあ、何もないところへ手を伸ばしたり

時々クスリと笑ってちゃ、変だと思うよな。


「いや、何でもない。それより昼ご飯はお前が作ってくれるか? 食材ならいくらでも出せるから」

「頑張るですよ」

「オーケー頼んだ。

——ラピス!」


ドリアードと戯れていたラピスが、トコトコとこちらへ走ってくる。

そしてそのまま、勢いを殺さずに抱きつかれた。もう少しラピスが大きければ、きっと耐えきれなかっただろうな。ランダムに感謝だ。


「今日、遊ぶ?」

「悪い。今日は外を探索しようと思ってな、だから……」


ごめんな。

そう言う前に、異世界知識さんから声をかけられた。


《砦近くに人がいます》

(マジか……)

《空椎高校1年、美羽(みわ)愛里(あいり)です》

(マジか……!?)


その美羽とやらは知らないが、まさか、こんなにも早く同郷と会えるとは思わなかった。


(そいつは友好的か?)

《……分かりません。美羽の情報は、ほとんどが不明です。もちろんスキルも不明です》

(何……?)


これは、また妨害か? 美人さんが俺にだけハードモードって訳じゃなそうだし、何か法則でもあんのか?

それとも、その美羽のスキルが関係しているのか?


……分からん。


とりあえず——砦を出した。


(どうだ?)

《——帰っていきます。

美羽はこちらをダンジョンと気づいて近づいてきて、砦を出したら来るのをやめた。

これが教えられる唯一の情報です》


それだけじゃ、友好的なのか敵対的なのか分からない。だけど、砦を出したら来るのをやめた……か。

4分の3の可能性で、そいつのスキルは非戦闘系だと思ってもいいかもしれない。


——まあいい。何にせよ、そいつは帰ったんだ。もしかしたら狩人殿と関係があるかもしれないが……狩人殿の事情すら知らないこの状況じゃ、こっちが何やっても迷惑にしかならないだろうし。


「オトーさん……?」


ラピスが俺を見つめる。いきなり俺が黙ったものだから、心配したんだろう。

俺は何もないと頭を撫でようとして——今度はコールに邪魔された。


コールの相手は、ココだった。


何だか2人に話を聞かれるのは嫌だったので、声に隠密をかけて、了承をタッチした。



「どうしたココ?」

『ど、どうしよう王人!』


頭が冷える。

心臓が締め付けられた気がした。


……ココが焦っている。



何かを恐れるように、声は少し震えている。


「何があった?」


ココの雰囲気に、俺の声までもが震えている気がした。


『襲われてるんだ……ボクのダンジョンが』

「襲われてるって、本当なのか?」

『うん、刀を振り回した、怖い人が……』


俺は駆け出した。

ラピスや狩人殿に少ししか声をかけず——向こうがなんと返事したまでかは聞いてない——玉座さんの階へ向かう。

階段が、うざったい。転移系のスキルが欲しいと、切実に思った。


「フレンド申請を了承しろココ!」

『えっ、えっと』

「了承だ!」

『……わ、分かった!』


フレンド登録をした時点で、ココのダンジョンの場所が分かった。


Eの10。


そこは、意外にも武蔵のダンジョンと近い場所だ。


(異世界知識さん、どうやって勝つ!)

《……『確実』ではありません。妨害されています。だからこれは、あくまでも『手段』の中の一欠片にしかありません。

最後は王人、貴方が決めるんです——》



俺は聞いた。その手段とやらを。

あとは俺が、他のピースを考えて、ピッタシと当てはめるしかない。一つでも間違っていれば、死。


《貴方の無事を、お祈りしています》


異世界知識さんの声までもが少し震えている気がした。そこは何だか面白くて、少し気が楽になった。


そして俺は、ワーブゲートに飛び込む。


「Eの10!」

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