表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ダンジョンウォーズ  作者: watausagi
早くココに会いたい
3/85

王人 は つよくなったぞ

◇◇◇◇◇


シャワーから上がり、自然乾燥に体を委ねた後——異世界知識さんに聞いたところ、風邪はひいてないようだ良かった——色々と準備をした。


まずは、フレンド申請。武蔵はすぐに了承して、早く来てくれコールがうるさいから面倒くさい。


こっちだって準備をしないといけないのに、少しは落ち着いてくれよ。


……そうそう、俺と武蔵のダンジョンは遠かった。俺がWの3に対し、向こうはCの11。極端に言えば俺が右下で向こうは左上だ。これは色々と良かった。うん、グッジョブ武蔵。


——そして今、異世界知識さんに聞きたいことも全て聞き終え、いざワープゲートを使おうというところで、思わぬ障害にぶつかってしまった。


ラピスだ。


「なぁ、いい加減離してくれよ」

「……」


フルフルと首を振り、否定の意を表してくる。さっきシャワーで離れたこともあり、ずっとひっついてるのだ。目の前にはワープゲートがあるというのに……ええい、もどかしい。


「すぐ帰ってくるから、な?」

「……」


今度は口を尖らせて、疑いの視線を向けてくる。ラピスは作りたてで性格が無だったからか、どうも赤ん坊みたいだ。

こんなにくっついて、俺だって少しドキドキしてくる。でもロリコンじゃないし、「ひゃっほー童貞卒業だぁ」なんてはしゃげるほど、今は余裕がない。


なのにラピスは…………いや、本当はラピスをここに置いておくくらい簡単だ。ラピスが言うことを聞かないのは、俺が命令をしていないから。


本当、参った。


「お父さんそろそろ怒っちゃうぞ」

「……お兄ちゃん」

「おい止めろ、それだけは止めてくれ。何でもするからその呼び方だけはするな」


記憶が、記憶が掘り起こされる!


幼少期の妹からの呼ばれ方はお兄ちゃんだった。それから思春期に入ったのか、いつの日か俺を兄貴呼ばわり。本人の性格と全く合ってなくて、だが一部ではギャップ萌えなんて……それはいいや。

何が言いたいかというと、兄貴呼ばわりが恥ずかしくなったのか、今度は王人と名前で呼んできて……それまでは良かった。普通に良かった。


だけどあの日、いつか忘れたけどあの日、出し抜けにお兄ちゃんと呼ばれた。


何故か背筋がゾッとした。理由は分からないが、冷水を浴びたみたいに体が震えた。

何で、何でいきなり『お兄ちゃん』? 怖いよ。兄貴の方がまだ許せたよ。


「お兄ちゃんだけは止めろ」

「……オトーさん」

「それは……名前とお父さんを被らせているのか?

まあ、それならいいかな」

「……オトーさん」

「ふむ、やっぱダメだ」

「なぬー?」


何これ可愛い。

いや待て、俺の癒しはココだよ。成り行きで仲間に加わったお前じゃない!


そう、厳しくしないと。こいつは成長するといった。なら、俺が甘えさせてはならない。俺が育てなければならない。


「帰ってきたらと一緒だから。そしたらずっと、オトーさんって呼んでもいいんだぞ」


厳しく?

そんなの知らない。俺はゆとり世代だったから。


「……ずっと?」

「ああ、ずっと一緒だ」

「……むぅ」


渋々ながら、ラピスは俺の事を離してくれた。いやぁ危ない。コールコール武蔵がうるさいんだ。拒否したら後々面倒くさそうだし。


という訳で、俺はワープゲートへと入る。ボタンと扉のないエレベーターって所か。何だか寂しいな。


……ラピスはこちらをじっと見ていた。気が変わって来ないうちに、早く済ませよう。


「——Cの11」


この感覚は3回目だ。そろそろ慣れてきた。見る見るうちにラピスの姿が縦に引き伸ばされて、周りの風景と変わりがなくなっていき……徐々に視界が普通になった。と思うとラピスはもういない。


ここはきっと、既に武蔵のダンジョンなのだ。


——周りを見渡すが、玉座さんしか見当たらない。それにしても風景が全く一緒なので、ラピスさえいなければ俺のダンジョンかどうか分からなくなってしまう。


(武蔵はどこにいる?)

《一階でうずくまっている》


まだか……俺が来るまでそうしているつもりなのだろう。


早めに行ってやろうと部屋を出る——前に、玉座さんへ近づいた。確かめたい事があったから。


当たり前のように俺は玉座へと座り、そして呟く。


「プログラム起動」


…………何も起こらない。いや、分かってたけどな。例えフレンドであろうと、他人のダンジョンは動かせない。


《私に聞けばよかった》

(何でもかんでも聞くと、それはそれでマズいだろ。偶には自分で動かないとな)

《さっきは散々聞いてきたくせに》

(それはどうしても必要だったからだ。

——今からは喋るなよ。集中したい)


異世界知識さんは、言うことを聞いてくれた。うん、こういう所は好感がもてる。


確かめたいことは確かめたし、俺は階段を下りていく。ふむ、4階の部屋も俺となんら変わりは無し、か。


平等。


チャットでもあったが、最初の条件はみんな同じみたいだ。



……3階は何もない。2階も何もない。そして遂に——1階へついた。自然と隠密を発動していたのか、武蔵はこちらへ気づいていない。隠密を発動していなかったとしても、向こうがこちらへ気づいたかどうかは怪しい。


異世界知識さんの言う通り、うずくまっている。……シュールだな。高校2年生のぽっちゃりがうずくまっているというのは。


俺は、隠密をといた。


「何やってる武蔵」

「っ……王人君!」


武蔵は鼻水撒き散らしてうずくまっていた。目は腫れていて、顔がビチョビチョ——っておい、近づくなバカ! 何で腕を広げている!


「止めろ! 気持ち悪いから抱きつくなよ!」

「うっ、ご、ごゴメン。そうだよね、僕みたいな根暗が近づいたりするのは嫌だよね」

「違う違う! 誰が男に抱きつかれて喜ぶ変態がいる? そういうのがアリなのはココだけだ、覚えておけ」

「わ、分かった」


ったく、これじゃあ後輩から舐められる訳だ。虐められる側に原因があるなんて酷い言葉だと思うが、武蔵の場合は……もう少し何とかならないのか? 虐めを肯定するなんてあり得ないとは思うけど、変わる努力をしてるのだろうか?


「ぼ、ぼぼく怖くてっ、王人君が来てくれて助かったよぉ〜」


……変わる努力、か。

地球じゃそれで良かったのかもしれない。時間をかけて、ゆっくりと。

しかしここは、異世界なんだ。まだ実感は沸かないが、俺たちは命を狙われる。


魔物然り。人間然り。


だって俺らは、ダンジョンの主なんだから。一般的にダンジョンの主というのは、悪。魔物を生み出す負の迷宮だ。


それなのに武蔵ときたら……俺を頼ることしか頭にない。こいつはこの異世界じゃ絶対に生き残れない。


……早めに助けてやらないとな。


「ほら武蔵、五階まで行くぞ」

「う、うん分かったよ」


理由を聞こうともしないか。全く、チャットに書き込んでいた奴らは、まだ優秀だったな。むしろああいう奴らこそ、誰よりも現実を認識していたのかもしれない。


「お前、階段5階ものぼれるか?」

「が、頑張るっ」


そりゃあ良い心がけだよ。


〜〜〜〜〜


俺の学校は4階まである。その4階は1年生の教室だ。

武蔵は一体、1年生をどうやって生き残ったのだろうか?


「ヒィヒィ……フゥウウ……ヒィヒィ……フゥウウ」

「お前は妊婦さんか!」

「だ、だゃって5階、5階はきちゅいよ、おおおとこ君」

「誰が大男君だ。ほら、もうすぐだぞ」

「わゃ、わゃかった」


既に日本語が厳しい武蔵を連れて、5階へ目指す。さっき4階にベッドがあると言ってしまった時は、心底後悔した。あそこで5歳児みたいに駄々こねやがったから。


こいつは本当に運動不足。ラピスの方がへっちゃらしてたぞ。……へっちゃらしてたって何だよ。俺まで日本語がおかしくなってきた。


「——さあ、ここが5階だ」

「ぶひゅぶひゅ……バァァアァァ……」


こいつ実は魔物なんじゃね?

俺、ちょっと不安になってくるぞ。


「お前動けるか?」

「だゃめっ、待って、ムリッ……ちょっと、休憩、きゅうけいしようよっ」

「分かったよ」


豚ってそういえば、太ってる訳じゃないらしかったっけ。体脂肪率が低いのなんのって。

もしかして武蔵も体脂肪率は低いのか?


「ぶひゅゥーー……」


……ないな。微粒子レベルでも存在しない。こいつは運動不足プラス肥満だ。

俺はさっき武蔵をぽっちゃりだと言ったよな? あれは嘘だ。デのつくブだ。


「そろそろいいか?」

「……ぅん」


凄く不満そうだが、これから俺はやる事があるんだ。

さっさと済ませたい。


「ほら、こっちへ来い」

「うん……? あれは何なのかな? でっかい椅子だね。確か玉座とか言うんだっけ」

「バカッ、あれは玉座さんだ。さんをつけろさんを」

「え? う、うん」


何を不思議がってるのか、逆にこっちが不思議でたまらない。

玉座さんはお前の遥かに何倍も優れているんだぞ。俺も、玉座さんの事は尊敬している。


……ロマンなんだよ。玉座さんは。


俺も眠くて疲れてるのかもしれない。玉座さんへ近づきながら、変な事考えてら。


「——さ、座れ」

「ぼ、僕がかい?」

「お前しか動かせないんだよ。ほら、早く座って……うん、ギリギリだな。お前やっぱ痩せた方がいいわ。

じゃあ次はプログラム起動って言えばいい。少し動くから慌てるなよ」

「分かった……プログラム起動」


やっぱり武蔵は驚いたが、先に言っておいたおかげで覚悟はできたらしい。(常時)脂汗を出しながら、目をつぶっている。


……するとどういう訳か、ブヒィィン——と、玉座から駆動音が聞こえ出す。肘掛けが元々赤褐色だったのに、徐々にガラス色に変化していき、今度はガシャンッ——と金属音がした。


どこかおかしかった気もするが、とりあえず動いて良かった。


「って、あれ? 武蔵美人さんから冊子貰わなかったか?」

「お、終わった? ねえ王人君終わった?」

「終わったから目を開けろ。そして疑問に答えてくれ」

「……うわっ、何コレ……え、冊子? 僕分かんないな」


おかしい。美人さんが忘れるなんて失態おかすはずが……


《寝てて気づかなかったみたいです。冊子は、1階の床で敷き布団の代わりになってますよ》


異世界知識さんありがとう。そして武蔵は何やってんだ。

敷き布団って! 敷き布団って!


「はぁ……それで、勝手に弄って壊しても知らねえぞ」

「うひゃっ! ご、ごごめん。つい……でもこれ、何が何だか……」

「だから動かすなって。それは色々と機能があってだな……長いから説明は後にするぞ。

武蔵、お前スキルは何取った? 俺は隠密っていう隠れん坊が上手くなるというクズスキルと、異世界知識という少し便利なスキルだったが……」


《……少し?》

(嘘だって分かるだろ。今は静かにしてくれ)


これからが大事なんだ。

俺は、焦る気持ちを抑えて待つ。


「ぼ、僕は怖いから……魔物召喚ってやつと、魔物使役っていうのを。

ほら、自分で戦うのは怖いだろ? 仲間がいたら安心だから……」

「で、その仲間はいないんだが?」

「だ、だって使った事もないのに、1人じゃスキルなんて怖いよ!」


そこはワクワクでもしてろよな……俺のクラスに 愛卓(あいたく) 秀雄(ひでお)という根っからのオタクがいて、そいつもこの異世界に来てた訳だが……あいつなら今の状況を楽しんでいそうだ。


今頃チャットで


『オウフwwwキタコレwwwおっと拙者ついネット用語がwwwフォカヌポウwww異世界でござる異世界でござるwww』


……うん、でも普段はコミニュケーション能力はあるんだよ。あいつなら異世界を生き残る確信がある。


「俺がいるから安心しろ。スキルの使い方は分かるだろ?

とりあえず、魔物召喚というスキルで幾つか(・・・)召喚してくれ」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ………よし、頑張る。離れないでね王人君」

「分かったから、ほら」


早くココに会いたくなってきたなぁと思いながら、武蔵を見る。武蔵は力を入れすぎて顔を真っ赤にさせながら——かあっと目を見開いた。



「出でよ、スライム!」



少し先の床に、魔法陣が現れる。俺でも書けそうなシンプルなそれは、段々と回転していき……魔法陣が空中に浮き上がったかと思うと、スライムが現れた。


あのゲームみたいに顔はない。のっぺらとしていて、色は半透明。プルプルとせわしなくその場で動き、今にも崩れ落ちそうだ。


「や、やったよ王人君! 出来た、スキル使えたよ僕!」

「ああ凄いぞ武蔵。次はドッベルゲンガーがいるだろ? 今度はそれを召喚してくれ」

「うんっ、やってみる!」


1度成功して自信がついたのか、魔物召喚レベル7の魔物、ドッベルゲンガーをすぐに呼び出した。

今度はどう見ても真似できない魔法陣が、幾度も重なり合って、スライムの時と同じように魔法陣が空中に浮いたかと思うと、それは現れる。


泥人形。


まさに見た目はそんな感じ。人型だが茶色で顔もなく、服も着ていない。


——良かった。


「さあ武蔵、1度魔物をしまってくれ」

「分かった!」


今度も成功して自信がついたらしい。その顔は初めて見るほど満ち足りていて——だけどな、お前は1度挫折すると、もう起き上がれない。


この異世界は厳しい。


だから俺が……助けてやるよ。


「これなら武蔵も、十分異世界を楽しく生きられるぞ」

「ほ、本当かい!」


消えていく魔物を、武蔵はキラキラとした目で見つめていた。


……俺は、隠密レベル10を発動させる。


隠密レベル10は気配を消して、認識させることを拒否する力。誰も俺を見ても見れないし、足音が聞こえたとしてもそれが分からない。存在が消えたと言っても過言ではない。


——そこまでして俺は気配を隠し、応用編——元から(・・)隠密レベル10をかけておいたナイフを振り上げ……





武蔵を、刺した。



◇◇◇◇◇


違うな、殺した。


即死だ。誰がなんと言おうと、武蔵は自分で気づく暇もなく死んだ。胸骨を避けて、心臓をひと刺し。


何度もイメージトレーニングをしたお陰かな。上手くいってよかった。


——武蔵の顔を覗き込む。


こんなに幸せそうな顔……過酷な異世界で、武蔵は最後に幸せを感じながら死ねたんだ。これから絶望してしまうよりも、それはとても幸せな事。


俺は——武蔵を助けてやれた。その事に安堵しながら、次に体へと異変が起こる。


全身がなんとも言えない感覚に陥り、満たされる……きっと、俺に魔物召喚と魔物使役のスキルが手に入ったんだと思う。


この感覚は癖になりそうで……いや、これからこんな事が起こらない事を祈ろう。平和の神様でもいるのなら、どうか平和主義である俺の望みを叶えて欲しいもんだ。


《平和の神なんていませんよ》


異世界知識さんが水を差す。さいですか。


「それじゃあ帰るとするか」


今回の話、至って簡単だ。

俺は力を手に入れたい。武蔵を助けられるのなら助けたい。

頭の中で、2つは一致した。


——まず俺がやったのは、ダンジョン保有魔力1を使って、ナイフを出した事。そしてあらかじめ隠密をかけておいて……付与とでもいうのかな、これもレベル10だからこその力だ。


——次に、異世界知識さんで武蔵のスキルを調べる。俺は武蔵のスキルが何か最初から分かってたんだ。分かってたからこそ、警戒した。ドッベルゲンガーを使ってちゃ、この一連は成功しないと。


……これはあり得ない話だったが、武蔵が俺を殺そうとする可能性を考えていたから。もしかしたら、ダンジョンの主を殺すとスキルを奪えると知っていて俺を殺そうと……異世界知識さんは、武蔵がドッベルゲンガーなのかは教えられなかった。妨害されたのだ。


だから、確かめた。武蔵にスキルを使わせた。ドッベルゲンガーを……召喚させた。


終わってみれば、武蔵はいつも通りだったよ。俺を殺そうとなんて微塵も考えていない。わざわざ信用させるために色々と手を尽くす事はなかったな。


……武蔵はただ怖くて、俺に助けを求めて、そして解放された。生きる苦しみから。

——本当、何度見ても幸せそうな顔してるよ。


もちろん、他の人間だとこうはいかないだろう。どれだけ苦しくても生きたい人間はいる。何度転んでも、立ち上がれる人間はやはりいる。


……でもお前は、弱いからな。


《ラピスが泣き出そうとしている。もう、限界みたい》

(マジか!?)


俺は急いでワープゲートへ向かう。最後に何も言わぬ武蔵を遠くに見て、ただ、「ありがとう」と呟いた。


「——Wの3」


帰ろう。俺のダンジョンへ。


◇◇◇◇◇


自分のダンジョンに着いたとたん、ラピスが抱きついてきた。

嬉しい。今はそれが、とても嬉しく温かく感じられた。

だから俺も、抱き返す。娘がいたらこんな風だなぁと思いながら。


「オトーさん?」

「……ただいまラピス」

「ん、おかえり」


その声は、とても可愛らしく、やっぱり美少女なんだなぁと実感される。顔も美少女で、顔の形が美女だっけ。

違いは分からないが、ランダム機能で作られた恐るべし兵器だよラピスは。


……俺は多少の背徳感に身を包まれながら、無邪気な笑顔を浮かべるラピスを抱き締めて——ふと、俺を待ってるであろうココが頭に浮かんだ。


って、何でここでココ!?


いや、本当何で!?


「何だか疲れたし、今日はもう寝よう」

「……」


コクリ、とラピスは頷いた。


〜〜〜〜〜


狭いなぁ。ベッドが狭い。ただでさえ小さいというのに、隣にはラピスがいるから。


考えてもみろ。床で寝ようとする見た目小学6年生を。ここで何もしない奴はクズだ。ナニかする奴もクズだ。


よって俺は、平常心を保つ。


さっきまでのフワフワとした空気は終わり、ラピスは既に寝ているので、俺はチャットを開く事にした。


これも裏機能なんだが、携帯設定を行えば、ディスプレイを持ち歩けるんだ。だからダンジョンを進化させる事は出来なくても、チャットくらいは出来る。キーボードじゃないのが寂しいが、どうにかなるだろうと。


俺は、【生徒会執行部スレ 俺たちの生徒会長は?】をタッチした。


◇◇◇◇◇


【生徒会執行部スレ 俺たちの生徒会長は?】投稿日 : 2016/06/03 (金)13:11:06


1 名前 : 如月 健太


このスレは我ら生徒会が生徒会による生徒会(長)の為のスレだ。とりあえず書記の俺が立ててやったぜ


このスレのルール


・名前を出す。というか、名前出さなくても何となく分かるしな

・生徒会長を敬う。これ、大事な


まあ、ルールなんて破る為にあるもんだ。気楽にいこう気楽に



2 名前 大鳥 (しのぶ)


いや、パスワードからして既に生徒会長を敬ってないんですが、それは


3 名前 健太


>>2


何言ってんだ庶務如きが

よく見ろ。ルールは破る為にあるもんだって何度言えば……


とりあえずお前、靴下拒否したな?



4 名前 忍


そうだった。いつか殴りに行くから覚悟しておけ書記め



5 名前 霧氷(むひょう) (あられ)


パスワードが分かった私は、何だか生徒会長に申し訳ないですね。


6 名前 名無し


これはこれは、会計の霰さんじゃありませんかwww

申し訳ないってwwwアンタそれ今更www


7 名前 健太


誰だ霰ちゃんを貶す奴は……って

おいちょっと待てコラ名無し。お前が誰だかわかったぞ

生徒会執行部じゃねえ奴は帰ってろ


8 名前 名無し


いいじゃないですか、俺だって1番生徒会と関わりがありますよwww


9 名前 忍


そうだよ、何でお前見るたびに生徒指導室にいるんだよ

何回俺たちに迷惑かけりゃ気がすむんだよ


10 名前 名無し


ちょっと庶務如きがほざいてるwww



11 名前 忍


>>10


殺す

マジ殺す


12 名前 健太


今はそれシャレにならないから止めとけ。とりあえずいつも通り半殺しで決定だから



13 名前 霰


皆さんとりあえず落ち着きましょう。それと名無しさんは黙るか消えて下さい


14 名前 名無し


……


15 名前 健太


!?


16 名前 忍


やばっ、アラレスイッチ入ったぞ


17 名前 霰


……はぁ、何ですかそれ不本意です。


とりあえず言いたい事が。

まだこのスレに、会長が入っていません


18 名前 健太


霰様がパスワードを、お、教えてはやらなかったんでございまする?


19 名前 霰


後輩に気味の悪い敬語を使わないでください。……それと、会長には教えようとしましたが


会長『止めろ! 施しは受けない……自分で解く。これは、挑戦状と受け取った』


20 名前 健太


>>19


安定のカッコ良さwww



21 名前 忍


>>19


でもまだ解けないwww


22 名前 健太


>>21


バカッお前、気づいてるに決まってるだろ。会長の事だ。認めたくねーんだよ


23 名前 名無し


解いた後の書記の末路、プギャーを見てみたいっすねこれはwww


24 名前 健太


……マジ怖い


25 名前 忍


>>24

でた


>>23

お前はさっさと消えろ


26 名前 霰


副会長さんがいてくれれば……



27 名前 健太


そうだよ、王様どこいった?


28 名前 忍


>>27

それは言うな

アイツから本気で嫌われるぞ


29 名前 名無し


王様王様王様www痛いwww痛いwww

あの人何で王様www


30 名前 忍


マジ知らねえからな

アイツも

「マジ怖い」

だから


31 名前 健太


俺、夏休み、2日間監禁w


32 名前 霰


>>31

す、凄く知りたいです……


33 名前 名無し


王様wwwお客様の中に王様はいませんか〜www


34 名前 健太


死んだな33

実体験の俺が言うから決定だ


35 名前 霰


冗談は抜きにして、本当に王人先輩はまだですかね?


36 名前 忍


お呼びだぞ副会長


◇◇◇◇◇


ここで止まっていた。


……ふっ、王様か。何で王様って呼ばれるようになったんだろう。きっと名前をもじっただけではないと思うが……王様呼ばわりされて喜ぶ奴がいるか、普通?


学校の中には、皇帝と呼ばれる男もいるらしいが……そいつとは仲良くなれそうだ。


まあ、このままじゃ生徒会スレが進みそうにないので、入るとしますか。


◇◇◇◇◇


37 名前 犬 王人


名無しと健太

死刑


38 名前 霰


!!


39 名前 忍


やっと来た


40 名前 名無し


死刑ってwww一体なんの権限があってそれを……ああっ、王様でしたね貴方www


41 名前 忍


健太は許してやってくれ

その代わり40番は好きにしても構わん


42 名前 霰


副会長、今まで何してたんですか?


43 名前 名無し


王様www

王様www

暴君のご登場〜


45 名前 王人


名無しは消えて下さい切実に


>>42


色々とな……あったんだよ

(実は昨日から寝不足で、さっきまで寝てた)


46 名前 忍


おいwww


47 名前 霰


王人さんらしいです


48 名前 王人


俺らしさってのが、気になるが……さっき自分のスキルを確かめたところだ

シャワーも入って、もうすぐ寝る


49 名前 忍


まだ寝るのかw


50 名前 名無し


【独裁政治】発動!

【カリスマ】発動!


51 名前 王人


>>50

お前は本当に消えてくれないかな?


52 名前 霰


同感です


53 名前 忍


霰ちゃんマジだなこれ……


54 名前 健太


ちょっとタンマーーー!

なになに、俺がいない間に面白い事なってんじゃん

とりあえず王人、マジすんまそん


55 名前 名無し


ああダメですよ健太先輩www 王様に気安く口聞いたら首跳ねられちゃいますからwww


56 名前 王人


>>54

許す

>>55

いい加減そこから離れろ


57 名前 霰


>>55

何でまだいるんでしょう?


58 名前 健太


……おい忍、霰ちゃんキレてるぞ


59 名前 忍


察しろ、いつもの理由だ

それより……まだ会長いないみたいだな


60 名前 王人


!!


61 名前 健太


!!


62 名前 霰


どうしましょうか……


63 名前 名無し


マジ怖い


64 名前 健太


>>63

お前がそれ言うのかよ

というか本当、いつまでいる気だ?


65 名前 忍


何だかんだ言って自然だよな、名無しがいるの


66 名前 名無し


どうした庶務www


67 名前 忍


よし殺す

マジ殺す


68 名前 王人


名無しに突っ込むのは体力の無駄だ。基本スルーでいこう


>>59


それよりこれ大事

そろそろ泣いてるんじゃないか会長


69 名前 忍


容易く想像できるな


70 名前 健太


会長「泣いてなんかっ、泣いてなんかいないぞ……!」


71 名前 忍


分かるw


72 名前 名無し


会長「これもみんな副会長のせいだ。あいつ今度会ったらタダじゃ済まさない!」


73 名前 忍


そ、それも想像出来る自分がいる……時々王人は理不尽なとばっちりを受けるもんな

ご愁傷さん


74 名前 健太


>>72

リアルに半々ってところだな。まあ、俺がプギャーな運命は変わらないだろうが……


マジ怖い


75 名前 王人


会長はパスワード分かってる筈だから、今頃チャットの前で葛藤してるのか……チャットしたいけど出来ないってね

日頃の恨みだ、存分に悩んでればいい


76 名前 健太


王人マジ怖い


77 名前 忍


鬼畜w


78 名前 霰


日頃の恨みあったんですね……


79 名前 王人


俺は会長に会って

理不尽

という言葉が大嫌いになった


80 名前 健太


誰だって理不尽は嫌いだろうけど

王人が言うと説得力あるわ


81 名前 名無し


僕もですよwww

本当w生徒会長さんには虐められてばっかですwww


82 名前 健太


お前は自分の行動を省みな?


83 名前 忍


そして少しは反省しろ


84 名前 霰


副会長、書記はパスワードを変えるつもりがないみたいですので、明日会長に教えてやってくれませんか? さりげなく誘導?

私じゃダメみたいですし


85 名前 王人


……


86 名前 健太


王人(拗ねた会長かぁ……ダルい)


87 名前 忍


いや

王人(これは一応引き受けておいて、何もしなかったらずっと会長来れないんじゃ)


88 名前 王人


>>86

>>87

否定しておく


明日な、明日生徒会長と話をつけてくる



89 名前 霰


お願いします


90 名前 王人


全然大丈夫

じゃあ本当眠いから


◇◇◇◇◇


……ふぅ、流石健太と忍だ。そのどちらも俺は考えていた。

が、ちゃんと明日になったら生徒会長と話すよ。これは本当。


ただし、明日(何時とまでは指定されていない)だけどな。散々焦らしてあげよう。俺だって明日になったら試したい事あるんだし、生徒会長のお守りまでやってられるか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ