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バーチャルウォーズ・開戦

◇◇◇◇◇


俺は今、どんな顔をしているのだろう。

膝の上に大人しく座っているラピスに聞きたい。なんなら、朝食を食べ終えてこちらを不思議そうに見つめるココか狩人殿でもいい。自分の顔ってのは、鏡でもないと見えないんだ。


なあ、俺は、どんな顔をしてる?


もしかしたら……


喜全

怒て

哀か

楽も


——美人さんから事の顛末を聞いている。リアルタイムでコールされていて、【拒否】は出来なかった。こいつの自分ルールなんて、小学生からされる一生のお願いと同じくらいの効力だと思いながら、どうしたかは分からないが俺の所に、あるスレを渡してきた。

初めは目を疑った。次に、悪いが相手の正気を疑った。


【女子限定・王人について第25回】


それが、俺が目にしたびっくりチャットである。名無しの言っていた狙われるって、これを言ってたんだな。

言わなくてもいい気はするが一応言っておく。これは、簡潔に説明すれば、俺を拘束したいという内容だ。しかも、メンバーのほとんどがそれに賛同している。


………………

…………

……


愛が重い!!


このくらいのボケは許されるだろう。



「どうすりゃいいんだ……」

『受けなければいいんだよ。バーチャル リアリティー ダンジョン ゲームにある全ての遊びには、強制の2文字がないんだから』

「あれ、受けなくていいんだ?」

『ダメに決まってるじゃん』


どっちだよ!

いや、落ち着け俺。クールにかっこよく、素数だ。素数を数えろ……やっぱり円周率だ。超越数。 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 …


——ここでいう美人さんのバーチャル リアリティー ダンジョン ゲーム、略してVRDGとは、玉座さんの部屋に新しく追加される機能。ワープゲート(部屋に入って右手をご覧ください)ならぬバーチャルゲート(部屋に入って左手をご覧ください・予定)から移動され、所謂仮想空間にいける地球の頃ならばヒャッホーと万札振りまくくらいロマンが溢れていたかもしれない機能の事だ。


そこには、様々な遊びを予定しているらしいが、なんと目標達成の報酬だかなんだかでダンジョンポイントを増やせたりする遊びもあるらしい。これで魔力不足のやつもダンジョンを大きく出来る。この前スク水の美人さんが言っていた内容がこれにあたるのだろう。


その中でも今回、俺が半ば強制的に引き受けなければならない遊び、その名も仮想戦争、バーチャルウォーズ。


主なルールとしては、チームに分かれる。勝ったと時の報酬を各自提示する。両方の合意の上、殺し合いが始まる。全滅制か、リーダー撃破制を選べるぞ。


ここで注意しなければならないのは、やはり仮想だから、自分の生身が戦うわけじゃない。流血も無いし、スッポンポンにもなれない、子供にも優しい安心設定。ここだけは美人さんの事を見直した。


例えば腕を斬られたとして……これは、後で実際に体験しよう。


——なんて、もう行く事を前提に話している自分がいる。

しっかりと断れば受けなくてもいいかもしれないのに……いや、俺にだって思惑はある。勝った時の報酬は、何も向こうだけに存在するわけじゃないのだから。


『向こうのチームには、風紀委員長、生徒会長、生徒会会計がいるよ』

「こちらも同じ人数じゃないといけないのか?」

『いんや、そんな事はないよ。そんな事ないけど、どちらにせよ王人君って友達少ないんだから、そこまで大差ないでしょ?』


こいつ、ボッチ神のクセして……


『私は充実ボッチだから』

「はいはい……じゃあ、バーチャルウォーズは人数に制限はないっと。仮想といえどそこは美人さん、スキルも問題なく、痛みを制限してるから動きに違和感はあるかもしれないが、慣れれば簡単だったけ。場所は10キロメートル四方。ただしオブジェクトなんかはバラバラ。草原や森その他たくさんのエリアをお楽しみください……本当、何でもありだわ」


大体の学生は、この新機能に満足するであろう。異世界に娯楽は、それこそダンジョンポイントが無いと調達は難しいし、人間は退屈を望まない。地球には競馬やギャンブル、それはもう金を賭ける遊びが盛りだくさん。実際に儲かるかどうかは別として、楽しむ事をやめれば死と同義なのかもしれない。


……真っ白で何もない部屋に人を1日でも閉じ込めてみろ。退屈がいかに心を病むかよく分かる。

俺は父から、色々な色の部屋に監禁まがいな事をされたっけ……真っ赤な部屋は、いずれ自分が血まみれになったかのような錯覚を覚えたし、真っ青な部屋は、いずれ溺れるように呼吸が乏しくなる。息がし辛かったのは、どの部屋も共通していたが。



——とりあえず、向こうがチームを決めているのなら、こちらも決めなくてはならないだろう。俺はすぐさま、ココと狩人殿達に事情を話した。この世界の人間がダメなルールなんてない。狩人殿は、重要な戦力だ。


そして今回もラピスはお留守番。これは最近の苦痛の種。奴隷買って鍛えてダンジョンポイント増やしたりする案は前から考えていたが、ラピスの御守り役にシフトチェンジしたほうがいいかもれないと検討中。


そして……最後に妹。妹だけは唯一、異世界から来た女子の中で俺の味方をしてくれる事になった。あれだ、これこそ愛を感じる。家族愛。兄妹愛。

恋人にしたい人間は今のところいないが、結婚したい人物はダントツで妹だな。いや、シスコンではないが、気楽に接する事ができるという……まあいい。


「で、いつから始まるんだ。そのバーチャルウォーズとやらは」

『お昼過ぎを考えているよ。それまでには準備なんかも終わるだろう?』


厳しいが、今すぐじゃないだけありがたいか。俺だって首輪つけられて喜ぶ特殊な性癖はしていない! 全力を尽くして阻止せねば。


……だが、このVRDG、美人さんは一体何をさせたいのか。楽しませたいって理由はないな。どっちかといえば美人さんは、自分が楽しみたい性格だし。あれ、もしかして楽しみたいだけか?

それだけだったらいいのに。

そんな訳ないと、思っている。


「こちらがメンバーを決めたとして、俺たち以外のダンジョンにはバーチャルゲートが無いだろ? どうやって仮想空間へ行けるんだ」

『だから大丈夫だって。そのダンジョンの主、つまり王人君が許可を出しさえすれば、他者も王人君のダンジョンのバーチャルゲートから移動できる。

バーチャルゲートに収まらないほど、君に知り合いはいないんだから、安心してよ』


……そんなに俺の友人が少ない事を弄りたいらしい。だが、確かに収まりきりはするな。きっと。


——昼過ぎ。


それまでに、出来る限りのことはしておこう。負けてなんかいられない。俺は、首輪をつけられたくない。


「オトーさん」


気づけば、ラピスが首を回して顔だけをこちらへ向けていた。

ラピスは俺を見て、不思議そうな顔をしている。それは、ココと狩人殿と一緒の。


……なあ、俺は、どんな顔をしている?


◇◇◇◇◇


ひとまず、今日のラピスラを覚醒。他の魔物も試してみたが、まだ覚醒の要領が分からないので断念。俺にはまだ、真の意味で魔物使役を使いこなす事は難しいらしい。


……今回のバーチャルウォーズ、仮想空間での戦争は早く終わるはず。腹が減る設定はあるらしいが、気にしなくていいだろう。


次に、ココの【クリエイター】を生かすため、材料を調達。出来る限り道具を作りだした。

狩人殿は弓の手入れ。


俺は……1度も召喚していなかった魔物の確認や、換装能力のおさらい。刀の射程範囲、隠密との複合技の練習。

正直時間が足りないくらいだが、それでも、やらない訳にはいかないのだ。

相手はあの会長とあの会計、それとあの風紀委員長。嫌な予感しかしない相手。俺からすれば、普通なら勝てそうにない集団なんだ。


【天衣無縫】

【冷獄無火】


チャットで自分らのスキルを、彼女達は言っていた。異世界知識さんに効果を聞いてみたものの、どちらも十分なチートである。


——昔俺は、スキルが見えない奴は俺に敵意を抱いていると予想していたが、当たっていた。だから嘘を言ってないかわかるのだが、嘘()言っていなかった。彼女達が20ポイントで取得したスキルは、確かにそれなのだ。


風紀委員長は

【神脚】レベルは8

【魔糸】レベルは8

【射撃】レベルは4

効果は、次の機会にでもいいだろう。なんとなく分かるし。

……でも俺、風紀委員長は苦手なんだよなぁ。あそこまで苦手な人ってのも逆に珍しい。嫌いではないから、余計タチが悪い。

俺が風紀委員長のスキルを見れたという事は、風紀委員長も俺を嫌っているのではなく、敵意があるわけではなく、ただ苦手なのだ。だから首輪をつけたいなんてトチ狂った事を言い出す。

俺と風紀委員長が起こしてしまったハプニングをラピスに言えば、間違いなく二の腕切断コースに全身折檻の大盤振る舞い。それくらいのレベルで、俺たちは互いを互いに苦手としている。


出来れば不干渉が望ましかったというのに……くそ、文字通り(仮想空間内で)死んで分からせてやるしかないようだ。


勝率は約40%と予想。


勝てない道理はない……


——もうすぐ時間だ。


俺たちは、バーチャルゲートの中へ入り……確か、えーと……そう。


「ゲーム・スタート」


なんともシンプルで、間違えようのないセリフが、俺にはとても不気味に感じた。ゲームという単語に、俺は不安を覚えていたのだった。

◇◇◇◇◇


『こちらは、VRDG内において、待機場所……ホーム内での設定です。

服を選んでください』


耳元に……これは美人さんの声だな。だが、無機質で感情のこもってない声。何故か俺はイライラしながら、誰もいない真っ白な場所で、最近手慣れたタッチパネルを操作した。


選ぶといっても、選択肢が少なすぎる。適当にローブを選んでおいた。

どうやら、ホーム内での服装なんかは、バーチャルポイントで買えるらしい。バーチャルポイントはダンジョンポイントにも換算でき……俺からすれば即ダンジョンポイントいきだが、周りはどうなんだろうな。スマホゲームで課金でもするやつは、きっと、外見を大事にしたり……



『髪、目の色は変えますか?』


へぇー、変えれるんだ。

オッドアイにしたらからかわれると思い、というかオッドアイになる魅力は今のところないので、変えない。黒色の髪だって慣れているし、いきなり青や金に変えたって違和感しかないから、これも変えない。



『こちらはバーチャルウォーズ内の設定です。本来、新しくゲームを始める場所で行われる設定ですが、今回はその時間もありませんので、次回からはご了承下さい。

では、下着を選んでください』



性別は変えられないが、服も持ち物も見た目も、バーチャルウォーズの場合は元のままで変えられないが、下着だけを選べれるという謎設定。きっと、服を破壊したりした時に、見えてしまうと思うが……何故下着だけ元のままじゃないんだろう。分からん。

適当に黒系を選んでおいた。


『ようこそ、ダンジョンナンバーw3、犬 王人様。多少、体に違和感を持たれるかと思いますが、すぐに慣れるでしょう。

VRDGの中には、たくさんの遊びがあります……予定です。

貴方の勝利を確信しています』


これはきっと、チュートリアル的なもので、どれも皆が同じセリフを聞くのだろう。名前とダンジョンナンバーとやら、それに予定の部分が違うだけで、そっくりそのまま……


『——もしも首輪をつけられたら、一緒にフリスビーで遊んであげますね』


これは違う! これは! 絶対に! これだけ感情こもってたし!

くそっ、首輪をつけたいなんて頭にウジでもわいた風紀委員長に気を取られていたが、元はと言えばお前がこんな機能つくるから……!!


——でも何でだろう。今の美人さんの声を聞いて、少し安心した自分がいる。それは、確かだった。


そしてまた、美人さん本人ではなく、美人さんの声になる。


『それでは、今回は普通ならホームに行くところを、直接バーチャルウォーズに移動します。良き、バーチャルライフを』


——目を開けると、さっきまでの真っ白な空間ではなくなった。俺はすぐに隣の奴らへ隠密をかけ、周りを見渡す。


良かった。まだ、向こうは来ていないらしい。少し早めにきた甲斐があったというものだ。


……場所はどこぞのクイズ番組みたいだな。俺たちのいる場所と、向こう側がいる場所は机を挟んで少し離れ、視線を横に移し上を見上げると、大きな画面がある。


と、俺たちの場所に、光の粒子が現れる。ココか狩人殿か妹か……妹だった。


なんて話しかけるか迷っているうちに、妹はこちらへ歩み寄る。


「……ぉ、おっす」


おっす?




まさか妹、そこまでポーカーフェースのくせして恥ずかしがってるのか?

兄の優しさだ。おっすは無視してあげる事にした。


「ありがとな。お前がいてくれるだけで、随分違う」

「いい。ここにいるのは、当然。私は兄の味方だから。

……というか、敵になったとして、例えゲームでも兄に殺されるのは嫌な話」


おいおい、俺が殺す前提かよ。いやまあ、敵なら殺すけど。もっと兄を信用してくれたって……いやまあ、殺すけど。


「そういえばまだ、お前のスキルを聞いてなかったな。あれ以外に何があるんだ?」


あれ、とはもちろん直感の事だ。


「秘密」


秘密……異世界知識さんにも聞けるんだが、それならやめとこう。でも残念だ。スキルさえ知れれば作戦を…………


——作戦?


っ……わ、忘れてた!敵チームの対抗策とか全然考えてない!

バーチャルウォーズがどんな戦いになるのかはおいといて、作戦のさの字も考えていない……自分の特訓に忙しかったとはいえ、これは余りにも馬鹿すぎる所業!


今すぐにでもチャットかなんかで……


——時既に遅し。俺の場所と敵の場所、一斉に光の粒子があらわれた。数を数えると、これで丁度全員が揃う事に。

あんたら仲良いなこんちくしょう。


「久しいなぁ副会長」


会長が真っ先に声をかけてきた。何しろ、周りをや自分の状況を確認せず、俺を見つけるとすぐに視線を固定したから。


……怖いよ!


会長の頭の中では、もしや首輪のつけられた俺が写ってるんじゃ。

お手とかお代わりとか、普段の俺なら絶対にしない事を妄想してるんじゃ。


「こんな場所だが、会えて嬉しいぞ」王人訳:早く首輪をつけたいぞ


……やっぱ怖い!何て恐ろしいんだ会長。この悪魔! 鬼!


「ん? どうした、喋らないのか?」


ワンと鳴けってか!?

会長め……調子に乗りやがって。いや、既に乗りこなしてやがる。


俺が悪魔と化した会長に対抗しようと、逆に会長へ首輪やら手錠やら足枷やらで拘束している姿を想像していたら、大きな画面にプツンーーっ……と、美人さんが現れた。


『ふむふむ、全員揃ったようだね。

互いのチームは確認した?』


俺は相手チームを見る。会長と会計、それに風紀委員長。

相手チームも俺たちを見る。狩人殿を見て2人はん? となったが、会計から俺の仲間だと教えられた。


——大丈夫そうだな。


『それじゃあ改めて、簡単なルールを説明するよ。今回は全滅制。先に相手チームを皆殺しにした方が勝利。

という訳で両者、勝利を収めた時何を望むか言ってごらん』


まずは風紀委員長が、俺を指差して高らかに宣言する。


「そこにいる犬 王人へ、隷属の首輪をつける!」


何度聞いても、危ない言葉だ。画面上に映る美人さんが、心なしか俺を見てニヤッとした気がした。

おい、何でバックにフリスビーが横切ってるんだコラ。


『隷属の首輪は、王人君のを使うとして、つけた人間の設定は特例としてそこの3人でオーケーだね。オマケに骨のオモチャとフリスビーをプレゼントしておこう。

それじゃあ次に、そちらのチームは?』


隣を見ると、みんな俺の方を見ていた。ここでギャルのパンティをくれなんて言ったら……今度は味方からも首輪をつけられそうで怖い。


「俺たちのチームが勝った た場合、そこの3人は、2度とこのバーチャルウォーズ内にて、敵にならない事を約束してもらう」


逆に隷属の首輪を3人につけてやっても良かったが、俺の心が止めてくれた。3人にそんな事してるなんて他の学生に知られたら、リンチだ。


『両者の賭けは同意にて成立。

じゃあ今から、バーチャルウォーズの戦場を決めてもらうよ。

といっても、ランダムなんだけど』


と言って、美人さんが指を鳴らすと、床は壁にも景色がうつり、まるで空を飛んでいるような感覚に陥る。


火山。

草原。

森。

湿地。

洞窟。


廻る廻る移り変わり、そして、止まった。


『へーぇ、“地球”か』


止まった景色には、人間のいなくなったような商店街。建物は植物に覆われて、生物の影すらない。

それでも懐かしさを覚える光景が、そこにはあった。


『場所はこれで決まりだね。

次は人体の説明なんだけど……えいっ』


急に自分が動けなくなったと思ったら、画面からナイフが飛んできて、俺の剥き出しの腕をかする。

普通、血がでるそこからは、青く光る粉が出てきて、一定以上の距離に離れるとそれは消えていった。


『——と、こういう風に血は出ない。安心していいよ、内臓も出ないから』

「いや、俺で試すなよ……」

『こうやって腕を切断しても大丈夫』

「だから俺で試すな……って、俺の腕!?」


ポトンと、肘の先が落ちた。

これまた青く光る粉が、多量に出てくる。切断面は、よく見えない。


『——見た目はああだけど、ちゃんとした血の役割を果たしている。時間が経てばそれなりに障害は出てくるから、気をつけてね。

稀に回復アイテムが出てくるかもしれないから、自分の体にかけるといいよ』


今度は目の前に、ウィスキーでも入ってそうな瓶の中へ金色の液体が満たされており、頭から強制的に被ると、肘から先が光に包まれて、俺は五体満足となった。


『説明はこんなところでいいかな。

次に始まりの位置だけど……これもランダムなんだ』


画面の美人さんが横に退くと、後ろにルーレットのようなものが回ってある。グルグルと……そして、“バラバラ”。


俺が想定する中で、1番なってほしくなかったものだ。


『——じゃあ、始まるね。私は立場的に応援はできないから、両チームにエールを送っているよ』


美人さんは、隷属の首輪を指でクルクル回りながら、そんな事をほざく。何が立場的に応援できないだ、俺の負けを期待してるじゃないか。


……俺の不満は残したまま、俺たちは地球へと移動をするらしく、また光の粒子に包まれる。


絶対に勝つと、俺は誓った。


◇◇◇◇◇


エリア地球に来た事を実感すると、まず自分に隠密をかける。

とりあえず近くの建物の影に移動して、異世界知識さんを呼び出した。


(ココはどこにいる?)

《どこ、といっても分からないでしょうから簡潔に伝えます。

まず、ココと会計の霧氷 霰が間も無く接触。妹は風紀委員長と接触。他はボチボチです》


なるほどな。

……ヤバいじゃんそれ。ココが霰と……ヤバいじゃん。


(あいつらは——健太と忍はどこにいる?)

《……残念ながら、端の方にいます》


使えねぇー。

おいおい、こそっと連れてきた隠し球なのに、使えねぇよ。何やってんだよ、これ本当にランダムなのかよ。


——実は俺、生徒会執行部男メンバー限定のチャットに、【王人は首輪をつけられたくない】を立ち上げた。インパクトのあるチャットの題名に、暇人なのか2人はすぐに食いつき、すかさず事情説明。

俺としては友情を期待していたが、お前が首輪をつけられるなんてズルすぎるという、よく分からない嫉妬で協力してくれる事に。


2人には隠密をかけといたから、まだ向こうのチームは気づいてないはず。


……だというのに、これじゃあ意味がない。


(しょうがないか。

じゃあ、まずはココのところへ行こう。会長の居場所も教えてくれ)

《分かりました》


サンキュー。

俺は、ドッペルゲンガーを呼び出した。本体である俺の稼働率を100パーセントとして同時に動かすと、ドッペルゲンガーの方は50パーセント以下だが、ないよりはマシだ。


ドッペルゲンガーは会長に向かわせる。俺は、ココのところへ向かう。

コールで状況を教えた健太と忍には、会長の方へまわす。時間稼ぎくらいはしてもらおう。狩人殿は、風紀委員長にの所へ。相当強いはずだと言ってある。


「出でよ、フェニックス」


魔物使役の能力、換装。


“不死鳥の翼”


紅蓮の火の粉が舞った。俺は、上空600フィート……ほとんどの建物の上に飛び立ち、一直線にココがいる場所へ向かう。あまり速度が出ない飛翔能力に、今回ばかりは苛立つ。


——刀術スキルの恩恵、それは近距離内限定。その範囲を越えれば、どういった訳かたちまち常人に戻る。だが、そんな普通の視力で僅かに遠くを捉えた。太陽の光を反射した、「氷」が。



……会長は怖い。マジ怖い。例えるなら太陽が迫り来るくらい時々怖い。

だが霰は、例えるなら氷の中にいると錯覚するくらい時々怖い。ジワジワと体力を奪われる恐怖、直接的ではないが確実な死を確信する怖さ、それが霰だ。


霰とココが戦闘を始めているとしたら……その戦いでココの勝率は


…………

………

……



ゼロ

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