エピローグ
年が明けると、正月気分はどこへやら、『はるぶすと』は相変わらずランチもディナーも盛況だ。
秋渡くんと私も仕事がなかなか忙しく、気がついたらもう立春をすぎていた。
2月に入る頃から、あちこちでバレンタイン商戦が始まる。
でも、私はね、ここ最近のこの時期は、贅沢にも鞍馬くんにチョコレートを作ってもらっているの! だってねー、どこのチョコより美味しいんだもん。頑張った自分へのご褒美よ。
けど、今年はそういうわけにもいかない。
秋渡くんにあげる最初のチョコは、手作りしようと決めていた。
なのでバレンタインが近づいたある日、断られるのも覚悟の上で、私は鞍馬くんにお願いをしてみる。
「チョコレートを作りたいのですか? 」
「そうなの。バレンタインだから、お世話になってるから、椿に、ね」
すると、ため息つかれると思っていた予想とはうらはらに、鞍馬くんはあっさりとOKを出してくれた。
「わかりました」
「ホント?! わあ、ありがとう」
けど、現実はそんなに甘いもんじゃないのよね、やっぱり。
「ただし、教えるからには妥協はしません。容赦もしません」
「! ええっ、またなの! ちょっと待って」
「今回も、待ちません」
「ええーーーーーーっ」
私が恐怖に悲鳴を上げていた、ちょうどその頃。
某有名デパートのバレンタインフェアに、なぜか2人の男が参戦しようとしていた。
「夏樹、悪いな。由利香さんが買いに来られないって言ってたから」
「ぜーんぜん平気。俺も本当はさ、毎年この時期しか作らないパティシエのチョコっていうのがどんななのか、研究したかったんだよね」
「そうか。最近は友チョコっていうのもあるらしいし、自分チョコっていうのが1番売れてるっていうし」
私が新聞広告に入ってるバレンタインフェアのチラシを見て、目をハートにして、あれも食べたーい、これも食べたーい、とか言っちゃったから。でも、今年は手作りするつもりで、買いに行けないんだって言ったもんだから。
わざわざ野郎2人で、女の戦場へと繰り出してくれたのだ。
数十分後。
よれよれになりりつも、2人は目当てのチョコを手に出来たのだった。
その陰には、夏樹が試食コーナーで女性の目を引きつけている間に、横をすり抜けて商品をゲットする椿の姿があったり。
また、残りひとつとなったパティシエのチョコを巡った攻防では、にらみ合いの結果、なぜか頬を染めたお姉さんが、「じゃあ、この試食品、あーんってしてくれたら譲ってあげる」と、イケメン夏樹ならではの勝利があったそうだ。
そんなこんなで、バレンタインが終われば、冬が春に変わるのもあと少し。
いろんな事があるけれど、『はるぶすと』は、本日も通常通り営業しております。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
年末の話を書いていたのに、あっという間にバレンタインです(笑)
月日のたつのは早いものですねー。
けれど、彼らのお店はまだまだ続いて行きそうです。
またいつか、お目にかかれる日を楽しみに。それでは。