私は知った
私たちが何処かへ行き出して、しばらくの沈黙が続いていた。
その沈黙は、カイヨミが割いた。
「貴女に……教えるわ……」
「え、なにを?」
私がすかさず首を傾げると、カイヨミは俯いた。
「私……普通のドールになりたかった……」
「え……うん……」
「私は世界で最初のドールなの。
でも、私は幸せになれなかった。
そのかわり、私の後に生まれたドールたちはみんな、幸せそうなの。
妬ましい……悔しい……腹立たしい……羨ましい……」
「…幸せ、なのかな」
不意に私から言葉が飛び出した。
個人的には自分でもびっくり。
「だって、いつもそこに存在しなくちゃならないし、人形だからって扱いは雑だし……」
「でも、貴女は持ち主のこと、嫌い?
もう信じられない?」
私は少し考えた後、勢い良く首を振った。
「ねえ、おねえさま。
わたくしはおねえさまのこと、だいすきですわ!!
……おねえさまは、わたくしのことどうおもってるの?」
そう言ったのはカイヨミの妹、マリンだった。
キラキラしたグラスアイをうるわせながら、カイヨミに問いかける。
カイヨミは優しく笑った。そして、答えた。
「もちろん、大好きよ!」
「おねえさま……!」
私は古びた球体関節を気にしながら、カイヨミはマリンを気にしながら、その後も進んでいった。
それから、数十分。
「リオ、見えて来たわ」
そこにはこの世のものとは思えない位の大きさをした真っ白な光を放つ球体、それを囲む環のようなものがあった。
「これこそ、リオド・クレイドルよ」