私は連れられた
私の脳裏に黒い稲妻が走る。
「そ、そんなばかな」
「事実よ。」
エヴィはもう、決意をした時のような険しい顔つきになっていた。
「えっ、だってミルアは…うそっ、そんな…」
目からでるのは水。
温かく、冷たい水。
たしか、涙と言うんだっけ。
涙はボロボロと私の目から零れ落ちる。
ーー周りのドールたちほはどうして平然といられるのかしら……
と、空から人形が二体、ゆっくり落ちてきた。
「海洋咲……マリン……」
カイヨミ…私は聞いたことがあった。
人間の世界に生まれて来る前、一回だけ聞いたのだ。
ーーーこの世には幻と呼ばれし一体のドールがいる。その名をカイヨミと言う。
そして、カイヨミは悲しみのはてにもう一つのドールを創り上げた……マリンと言う。
「海洋咲まで、ドゥラングに来てしまうの?
こんなの……悲しいよ……」
私が一人つぶやくとエヴィは答えた。
「全てのドール、対象。
それがどんなに綺麗でも、古くても。」
アリスは私たちが話している横を通り過ぎ、地についた二体のドールの額に手を当てた。
「…カイヨミ、貴女はマリンを守りたかったのね…。」
海洋咲はマリンを包むように落ちてきた。
きっと、大変だったのだろう。
マリンは海洋咲の3分の2くらいの大きさだった。
海洋咲と似たような服を着ていた。
海洋咲は、よっぽどマリンを愛していたんだろう……
一瞬のうちに目を覚ましたカイヨミと、目があってしまった。
するとカイヨミはいきなり近づき、私の手を引いて走り出した。
「貴女ならまだ帰れるわ」
「え、まっ、」
誰かに止められることもないまま、私たちは全く知らないところに走り出した。