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最近の乙女ゲームだと、ライバル悪役令嬢には死亡フラグが付き纏う、ものらしい。

作者: 深月 涼

自分も全部網羅している訳ではないので、異論は認めます(笑)

思いの丈(笑)




「よくさあ、悪役に死亡フラグだの破滅フラグだの立つ話ってあるじゃん」

「は?」

 唐突に始まった彼女の話に、僕は首を傾げた。

 もっとも、彼女が唐突なのは今に始まった事じゃ無いので、そこは別にいいんだけど。

 ただ、もうちょっと話を分かりやすく説明してほしいかなとは思う。

 前後の脈絡無さ過ぎだよ、もう。


「それって昨今流行りの『乙女ゲーム転生』の話?」

 彼女が今見ているPCを一緒になって覗きこめば、とあるサイトが表示されてた。

 近頃メディアにも取り沙汰される様になった、大手小説投稿サイトの日間ランキング。


「そ。あたしさあ、思うんだけどね?同人や紙媒体ならともかく、本当のいわゆる家庭用?コンシュマ?そっちのゲーの『乙女』ならさあ、『悪役』の『破滅』はあったとして……それも許される場合が多い様な気がするけど、少なくとも『死亡』は無いと思うんだ、死亡は」

「そうかな?でもほら、戦闘ものとかあるやつだと良く死ぬよね?」

「それだってファンタジーでしょ?それか歴史物。学園モノで人が死んだりする話って、そうそう無いと思うんだよね。むしろ主人公や攻略対象のヒーロー側にこそ、そっち系のフラグ乱立してなくない?それなのに見てよ、このランキング!悉く悪役が死んでるじゃない!」

「死にそうだからどうにかしなきゃって話でしょ?でも、そう言われれば……たしかにそう、かな?でもさ、最近は何かにつけて『戦う』話が増えてるよね、そもそも純粋な学園モノって、あんま無い気がする」

「散々出尽くして、今更目新しさは無いのかも。学園なら大手が1本有名なの出しちゃってるし」

「なるほど。メーカーの方でも旨みが少ないと感じているのかな」

「学園で日常モノだと、イベントも限られてくるしね」

「ファンタジーとかの方が、やりたい事や出来る事の幅も広がるかー……」

 あれ?ちょっと待って、今そんな話だったっけ?


「大体、家庭用だよ?」

 あ、話戻った。

「CERO区分があるとはいえ、あんまり過激な描写ってやっぱまずいっしょ?ある程度の冒険は必要としても、そこは普通気にするよね?今は昔と違って色々とうるさかったりもするし」

「家庭用だと、どうしてもそこは気になるよね」

「携帯アプリとかだとまた基準が違うから、どうなってるのかは分かんないけどさ」

「せんせーしつもーん、過激って言うならCEROじゃなくてEROに引っかかる表現も最近は多くなって来たけど、そっちは乙女的にはおkなんすかー?(笑)」

「やかましい」

 サービスシーンはやっぱ別枠なんだ(笑)

 まあ、男性向けでも多々ある事だし。

 え?僕?何の事やらさっぱりだね(すっとぼけ)


「それは今どうでもいいの!ただ、ほら、女性向けであんまり後味悪いのって、やっぱ倦厭されるじゃん?話の中で急にヒロインでも無い女……女性でも女の子でも、クローズアップされるだけで戦犯モノなのに、ましてやオチがデッドエンドとかさ。そもそもだよ?勧善懲悪は必要だと思うけど、清廉潔白なヒロインがざまあって、『乙女』っぽくなくない!?ドロドロしてる乙女ゲームが無いとは言わないけどさあ……」

「『本人がどう思うか』は別として、ってやつだね。破滅なら自業自得で済ませられるけど、そう考えるとデッドエンドは、やっぱやり過ぎかなあとも思うよ」

「でしょ!?乙女ゲームって言うのは元々夢を売るものなの!ライバルと切磋琢磨して競いあうものなの!最後はライバルも含めて皆幸せ大団円なの!死にオチは救い様の無い悪役だけで十分結構!それを、片方蹴倒して『はい幸せ幸せ』っていうのは何か間違ってると思う訳!」

「はいはい。でもさあ、『政子様』みたいな例が転生悪役だったらって考えると、無くは無いよね、死亡フラグ回避」

「あんなんがぽこぽこいてたまるかぁいっ!!平穏な筈の、日常学園ストーリーに、きっついいじめ役がいて、何故か最終的にはデッドエンド、っていうのが納得いかんのじゃああ!しかも攻略対象がSATSUGAIする側に回るって、どういうことじゃああああああ!!あたしは殺人犯す様な奴を攻略した覚えはなあああああいっ!!」

「ヤンデレはまた別だよね?」

「確かにヤンデレは別枠だが、態々そういうゲームを買おうとは思わんっ!住み分けはきちんと出来ている!」

「出来て無いから地雷なんでしょ」

「ちくしょおおおおお!!世の乙女が全員デフォでヤンデレ好きだと思うなよおおおお!甘ったるいだけの駄々甘日常モノが好きな奴もここに1人いるんだからなあああああ!!!」

 どんっ、と飲み物ごと手ををテーブルに叩きつける彼女を宥める。

 どうどう、ヒートアップするのは分かったから落ち着いて。

 ああほら少し零れちゃった。


「まあ、作品として面白いのも分かるけどね。好きなのもあるし」

「けど、それがいわゆる『市販されてる、ちゃんとしたブランドから出た乙女ゲーム』のテンプレだと思われるのはちょっと違う、って?」

「……うん」

 本当に好きなんだなあ、乙女ゲーム。

 彼女が小さかった頃から2次元が大好きだって知ってるから、そこに嫌悪とか嫉妬とかは無い。

 むしろ微笑ましく思ってしまう。

「昔に比べたらハーレムは標準装備だし戦闘もあるしで、乙女ゲームも大分変わって来てるけど、むしろライバルとか悪役とか居ないゲームも多かったんだよ?」

「知ってる。ずっと見て来たから」

「うん」

 ……彼女がこの1年、どれだけ頑張って来たのかも、全部、ね。


「まあさ、実際のゲームとは別物って事で割り切っちゃえば良いんじゃないかな?ここの投稿サイト独自のテンプレって事で」

「それ言ったら身も蓋も無いんだけどね。乙女ゲームじゃなくて、BLゲーム派生のテンプレなんかも混ざってるみたいだし」

 そっちまでは網羅出来てないんだよなー、と呟く彼女。

 いや別に、BLはいいんじゃないかなー?と男の僕なんかは思う訳で。

 だってさ、彼女が僕と他の男子……大人の男性でも良いけど……なんて考えだしたら余裕で死ねる。

「あんまり思い詰めない方が良いよ?せっかく全部無事に終わったんだし」

 そう言うと、彼女は今まで見詰めていたPCから目を離し、こちらに顔を向けて安堵した表情を浮かべた。

「そうだよね、あたし頑張ったよね。『名前のあるキャラクターに死亡フラグの立たない普通の学園系乙女ゲーム』だったこの世界で、無事エンディング迎えられる様に、自分、超頑張った!」

「うんうん、えらかったね」

「そうだー!あたしはえらいっ!今君とこうして一緒に居られるのも、全部あたしが頑張ったからだ!ヒロインさんは逆ハーでもなんでも堪能すればいいと思います!好きにするがいいさ!後は知らん!ヒロインもライバルもいない世界ばんざーい!!」

「わー、ぱちぱちー」

「よせやい照れるぜー」

 

 彼女から、この世界に『原作』があると知らされたのは、つい1年ほど前。

 幼馴染である彼女に頼まれて、時に妨害、時にキューピッド役にと、僕自身も随分走り回された。

 最初は何が何だか分からないままだったけど、当時の彼女は不安そうな表情を見せる事が多かったから、どうにかしてあげたいっていうのもあって、割に積極的に動いていた様に思う。

 それでも夏が過ぎて秋が深まる頃には、この先に起こる事件(イベント)が何で、どう変化させるのか、作戦を練るのが楽しくなっていた。

 きっとそれは、彼女と僕だけの、たった2人の――――――そう、まるで世界侵略でも企んでいるみたいな、秘密の作戦だったから。


 でもそれも、先月の終わりに『ハッピーエンド(おわり)』を迎えたんだけどね。

 ヒロインがどんなエンディングを迎えたのかには興味が無い。

 だって僕には彼女がいるから。

 彼女がいるなら、僕には何も……っていうと大げさかな。

 でも本当に、大事だって分かったんだ、この1年で。


「りかちゃん」

「ん?」

「……やっぱいいや、またこんど」

「えー?今言いなさいよぉ」

「何だかもったいないから、またこんど」

 なくしたくないから、必ず言うから。

 だから今はまだ少し、このままでいさせて。

「もー、絶対だからね!」

「はいはい」

「せーいが足りなーい!」


 こんなに伸び伸びした彼女は本当に久しぶりで、僕もなんだか嬉しくなってしまう。

 ぽかぽかと痛くない手で僕の頭を叩いていた彼女の動きが、ふと止まった。



「まあ、ライバルが死ななくても、モブは余裕で死ぬんですけどね」

「脇役はつらいよ」

 遠い目をした彼女に、僕は深く頷きを返した。





彼女:「普通の日常学園系乙女ゲームなら、そもそも人死にそのものが無いから!」

僕 :「何にしても例外はあるよね」

彼女:「……」





僕:彼女の幼馴染 蕪屋英治かぶらやえいじ 

  苗字どおり鏑矢的存在(ゲーム上)。 


彼女:転生者 糸井栞いといしおり 

   シナリオ上死亡するモブ役(旧)


ヒロイン:転生者? 桃苑愛姫ももぞのまなひめ

     モブ彼女との直接の関わりは無い。


攻略対象:複数名。詳細は省く。



迎えたED:どんなEDであろうとも、ヒロインが幸福であるならば、それはハッピーエンドです。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 本物乙女ゲーマーへの強い親近感 [気になる点] それが理解できる自分のヲタ度orz [一言] なろうの乙女ゲームはほんとにどっから持ってきた(笑)が多いので、ほろりと笑いました。 乙女…
[一言] まあ、テンプレが出来てからの流行廃りはエヴァ二次創作の流行っていた頃からいろんな創作で連綿と続いてる流れですしねぇ。 主人公最強系が生まれ、その後に主人公持ち上げるより周りがお馬鹿になる展開…
[一言] うん、やっぱりそうですよね 学校物で恋愛で人が死ぬとか、Sch◯◯l Daysシリーズだけでお腹いっぱいです 乙女ゲーとは、こんなに殺伐とした物なのか?と、やったこと無いなりに疑問には思いま…
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