表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LL.  作者: YUTADOT
8/11

LL.8


「!!」

 U太は目を覚ました。そこはかつて映画で見た様な、暗く薄汚れたNYっぽい地下

鉄の中だった。

「ーーーー!!」

 狭い。蛍光灯がチカチカと点滅している。周りには顔を伏せた老夫婦と黒人の集

団がいて、チラチラとこちらを見ている。U太は思った。NYだとしても、今のNY

じゃない。もっと昔のーーまだ治安が非常に悪かった頃のそれだ。U太はそっと鞄

に手を添えた。金目のものは大して無い。だが、タブレットだけは守らなきゃ。タ

ブレットはーーー

「!」

 U太はハッとして鞄の中に手をやった。先程、タブレットは割れたんじゃなかっ

たか?

 タブレットは何故か無事だった。だがU太の目はタブレットに触れた自分の手に

釘付けになっていた。間違い無く、自分の腕の筈ーーだが、何故かその時のU太に

はまるで他人の手の様に見えた。人種すら違って見える様な。

「………?」

 その手を、太く大きな黒人の手が掴んだ。

「えっ?」

 顔を上げる暇もなくその手を強い力で引き上げられた。

「ぐっ…!」

 U太の顔の前には横に広がったアフリカ特有の鼻と小さな無表情の目があった。

「×××?×××××!」

 英語、ではあったと思うがスラングが強すぎて全く聞き取れなかった。

 そのタブレットをーーいや何でもいいからよこせ、という意味ではあるのだろう。

「あ……」

 U太は動けなかった。小学校や中学校で不良に絡まれた時などとは根本的に違う。

あまりにもあっさりと命が奪われる。その恐怖がU太を支配していた。目の前の黒

人はU太を軽々と放り投げた。

「がっ」

 U太は通路の真ん中のポールに激突した。背中に鈍い痛みが走り、一時的に呼吸

が止まった。

 更に蹴りが入る。U太は身体を折り曲げて声にならない声を上げた。

 何度目かの蹴りで、目の前の鞄の中でバリッという乾いた音がした。

「あぁ……!」

 割れた。

 無くなったのだ。今までの全てが。

「ーーーーーー!!」

 U太は絶叫した。

 それでも次々に蹴りは飛んで来る。血を吐いた。

 殴って来るそのイメージが、何故かA児のそれと重なった。

 かつて地元で殴られ、自暴自棄になった自分も重なった。

 そのとき、目の前の鞄が発光した様な気がした。

「!!」

 自分の鞄じゃないーーU太がそう思った瞬間、その鞄は爆発した。


   *   *


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ