LL.11
動けた、と思った。
U太はゆっくりと力を抜いた。
どうやら動ける様だ。
U太は手を恐る恐る下ろし、顔を上げた。
目の前に赤ん坊の顔があった。
「!!」
目を見開いたU太の顔がピーカブーの様になったのだろう、その赤ん坊はニパッ
と笑顔になった。
「………フッ」
U太は少し笑った。どうやら日本ではあるらしい。
見上げると、赤ん坊を背中から抱きかかえる形の抱っこ紐をかけた母親が軽く会
釈した。
「あ……ど、どうぞ」
U太は思い出して席を立った。
「あら、ありがとう」
母親はゆっくりとU太が座っていた空間に座り、優しく赤ん坊の頭を撫でた。
「………」
周りでは家族連れやカップルが増えて来ている。
U太は辺りを窺った。ここは何処なのだろう。
その時、車内アナウンスが流れた。
『次は、X谷、X谷〜』
どうやら環状線を一周以上していた様だった。
とは言え、まだ休日ではあるらしい。
知らないうちに数週間とか数年とか経っていないといいけど、とU太は思った。
そして自然に、そう言う話も書いてみるか、と思っている自分に気がつく。
「………」
U太は自分の口がゆっくりと笑んでいくのを感じた。
「…!そうだ」
U太は鞄の中を探った。
タブレットは、間違い無くあった。何度も壊れた様な気がしたが、それは確かに
そこにあった。起動してみるが、特に問題は無さそうだった。
「良かった………」
U太は懐かしむ様に画面をそっと撫でた。
投稿は、続けよう。
大学にも行こう。
就職活動もしよう。
そして、書く事も続けよう。
例えモノになろうがなるまいが。
電車は、降り注ぐ冬の太陽を浴びながら駅に入っていく。
U太はタブレットをしまい、赤ん坊に少し笑顔を見せてからドア前に移動した。
流れて来るホームの景色に、また誰かが流れて来ないかと期待を込めて眺める。
今なら、何でも出来そうな気がしていた。
( 終 )
現代劇書こうと思ってたのですがまぁやっぱりファンタジーっぽく
なるんだなぁと。
K一くんとかその他の人の話もまた書きたいな。




