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Summer Clovers〜未来〜

 高校1年の夏。

 自分達の過去に、そして未来に、4人の少女は何を感じたのだろうか・・・。


 夏の陽射しに照らされた4枚の白詰草は羽ばたく。

 目の前に蜉蝣が見える。

 影で休める私にとって、外の世界はいっそう眩しく見えた。


「明里~、何時まで日焼け止め塗ってんのー??」

 この花が心配してか、私のいるキャンプタープにちょこちょこと近寄ってきた。

 そういう私が手に持っていたのは、今日のために買ってきた、絶対肌を焼かない最強の日焼け止めと謳われる代物。こんな炎天下の中、こんがり焼いてしまうのは御免である。

「あ、いや、すぐ行くから・・・」

「それ、さっきも言ってたような・・・」

「今度は本当!!あと首回りだけだからさ」

「そう。じゃぁ、待ってるから!!」

 そう言うと、この花はピンク色のぺたんこサンダルを躍らせながら、目の前の川へと飛び込んでいった。

 結局、夏休みのお泊り計画の行き先はキャンプ場となり、それならさすがに大人が居た方がいいということで、千菜のお母さんに付き合ってもらった。

 街の郊外にあるこのキャンプ場には他の人も居るが、緑に囲まれ、目の前には身にしみるほど冷たい川が流れ、涼やかな風が優しく吹き抜ける。何より街より気温が低いので、過ごしやすい。しかし、太陽光線の威力だけは変わらない。

 そして今は、着いたばかりの自由時間である。だから私は、自由に日焼け止めを塗っている。


 蝉が調の合わない合唱を繰り広げる。蚊が少ないのは幸いだ。

 ふと、私は深緑色をしたタープの影から、みんなの様子をうかがってみた。


 まず美鈴はというと、着いて早々、磁石のN極がS極に引かれるように、颯爽と川に跳び込んで行った。田舎へ行きたいと言っていたらしいが、その理由と関係があるのは間違いないと推測する。

 テントなどを立てた後、また川に向かい、大きな岩に座って冷たい川水に足を入れ、ゆっくりとその足を上下させながら今に至る。美鈴らしからぬ行動の連続で、意外と興味深かった。水に浸る裸足を水面からすくい上げると、まとわり包む清水が、足の甲から流れ落ちる。

 日光を浴びながらも、帽子をかぶり、そこから垂れる艶やかな黒髪をふわふわと揺らして、大和撫子のようなその顔を微笑ませる。

 会ってからのこの3ヶ月間、滅多に見せなかった笑顔がそこにあった。


 千菜はというと、着いた直後にみんなの役割分担をきっちりと決め、タープとテントを組み立て方を見ながらきちんと立ててくれた。さすが千菜である。

 この計画を立てたとき、「親が駄目って言うかも」と言っていたが、その親が来てくれたということは、認めてくれたということだろう。

 その千菜は今、テントの影に千菜のお母さんと共に休憩している。

 テントとタープの距離が近く、時々2人の話し声が聞こえるのだが、「まぁ・・・いいかもしれないわね」と千菜のお母さんの声が聞こえて、ちらっと窺うと、彼女はその少し皺の入った顔をくしゃっとさせていた。それを見た千菜の凛としていた顔も、微笑を見せた。

 その口角を上げた2人の口元が似ていて、親子だな・・・って思っていた。当たり前のことか。


 この花は、テントなどを張るとき、意外にもきっちりと手伝っていた。その顔は、真剣そのものだったのである。いつもふわふわしているこの花のあの姿を見て、違和感があったが、それを終えると、いつものふわふわで明るいこの花に戻っていた。不思議である。

 今は美鈴から少し遠いところで川に入っているのだが・・・また不思議である。

 川の真ん中で、ただ突っ立っているだけ。両腕は重力に逆らうことなく垂れ落ち、ただの付属物のようだ。目は虚ろで、しかし目の前を流れていく清水を見つめている。そのさらさらと清水が、肩幅に開いた足を、ふくらはぎまで包み込む。柔らかな木漏れ日がぽつぽつとこの花の頭や肩を照らす。風が吹くたび、その木漏れ日がゆらゆらとうごめく。

 無気力なようで、何処か力強い。その姿は、私の中のこの花の印象を少し変えた。


 私はというと・・・未だ日焼け止めを塗り続けている。



「きゃっ」

 蝉たちの大合唱と、吹き抜ける冷たい風に浸っていると、川の方から甲高い声が聞こえた。

 見ると、先ほどまで不思議な光景を創っていたこの花が再びいつもの調子に戻ったらしく、川の冷たい水をすくって、顔をにやにや引きつらせながら、岩に座って足を川に浸かっていた美鈴に向かってばら撒いていた。

「どう?冷たかった??」

「冷たいに決まってるよ!!」

 その困ったような、でも嬉しそうな顔を美鈴が見せると、またこの花は水をかけ始めた。

 やられてばかりで火がついたのか、美鈴がいつもは見せないような、意地悪な顔を見せ、少し跳ぶようにして川に入った。そして「このー!」とか言いながら、慣れたように水をすくい上げ、この花とは比べ物にならないほど大量の水を携えて、空中へと放った。その水玉は綺麗な放物線を描き、この花の元に降り注ぐ。結果、この花の服は水浸しになってしまった。

「ご、ごめん!!そこまでやるつもりはなかったんだけど・・・」

「いいよ、いいよ。っていうか美鈴、なんか上手だね!!」

 慌てふためく美鈴に、この花は満面の笑顔で答えた。

「ほら、明里!!この川の水、すっごく冷たいよ!!こっち来なよ!!!」

「うん、すぐ行く」

「千菜も~」

 私は塗り残していた首周りを急いで塗り始める。

 千菜が先にゴム製のサンダルを履いて、テントから飛び出した。漆黒の髪が夏の太陽を反射して光の輪を作り、千菜が地を蹴るたび、そのショートヘアが広がったり縮んだりを繰り返す。その姿を見守る千菜の母の姿は、とても幸せそうで、しかし何処か寂しそうでもあった。

 そう、ちょっとした人間観察をしている間に、やっとこさ日焼け止めを全身に塗った私は、心を決めて立ち上がった。

 川のせせらぎ、蝉の大合唱、吹きぬける風、人々の明るい声・・・タープの影とおさらばすると、髪に、肩に、顔に、直射日光が照りつけて眩しかった。慣れてきて空を見上げれば、とても鮮やかな空が見えた。

 その視線をふっと下に戻せば、木漏れ日に照らされるこの花・千菜・美鈴がこちらを見ていた。

 みんなの顔に浮かぶのは、あの時、パソコンという名の世界では見られなかった「本当の笑顔」。それは、幸福とか、喜びとか、希望・・・たくさんの意味が籠もった、無言の情報伝達方法。それを見て私も、口角を上げて微笑み返す。


 私は小石の転がる地面を強く蹴った。その時の体は軽くて、ふわふわしてて、まるで背中にふかふかした白い羽が生えたようにも思えた。その空想上の羽は私の前進する行為を助け、すぐにみんながいる川へとたどり着いた。

 足を入れると、水しぶきが散った。でもそれは、思った以上に綺麗で、冷たくて、そしてそれが太陽の日光に当たると瞬き、はじけるように川へと落ちていく。当たり前のようで、しかし初めて見たその光景に今にも溢れそうな幸福感で、私は満たされていったのだ。



 ―そんな、まだまだ未熟な4枚の葉が織り成す、夏に花開いた物語。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。再び玉梓です。

 しかし、結局この話何だったんだヨ、と思われた方もいると思います。


 それを今回、玉梓さんは解説という名の弁解をいたしましょう。



 さて、この作品は最初に話した通り、本当はpixivに投稿したものなんですね。

 と、言いますのも、この作品は7月に参加したある企画の小説だったんです。1週ごとにテーマを決め、それに沿って作品を作るということで、どうしてこうなった。


 夏に書いたので、舞台も夏。1つ出来るごとにまた次のを書きはじめるというサイクルを1週間ごとにしていた、あの頃の自分を褒めてあげたいです。


 さて、高校1年生の心情を書いたものだったんですが、あの4作品のうち、2作品は実話をもとにしています。どれとかは言いませんが、まぁ懐かしいなぁと思いながら、1週間クオリティの作品共を改編していきました。


 また、最後のSummer Cloversは、もともと明里の話の最後に引っ付けてたやつをびりびりと剥がしたやつですね。だから明里視点なんです。今思えば、あの人は最初から、完全にただの話のまとめ役でしたね。キャラも1番定まってなかったし・・・。大人っぽいのか、子供っぽいのか、それは玉梓さんにもわかりません。



 兎に角!!

 このような何を伝えたかったのかも曖昧な感じに終わった駄作を読んでいただき、ありがとうございました。


 では、またの機会に・・・




 ・・・よし、夏の次は春ダナ。

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