8.合格発表
今時の学校にしては珍しく高倍率の多摩近場高校の
合格発表は学校前の掲示板と合格者へのメール送信で行われる。
別に行かなくても良い訳だが映え写真が欲しいとか記念になるとかで
現地に行く者はいる。
「YES!家康!」
「あんたの発音いい加減なんとかならない?」
「まあ良えんちゃうか。全員合格したんやし。」
「やっと4人とも同じ学校に通えるね。」
元気そうな4人組は帰りに買い食いする相談を始めた。
周囲からは何の悩みもない明るい子供たちに見えた。
少し離れた団地では3人の男子が何やら話し合っていた。
「授業料減免と無償奨学金通ったか?」
「大丈夫だった。通知が来るまでひやひやしたけど。」
「俺も通った。母ちゃんは心配するなって言うけど
この金額は大きいよな。」
3人は特待生の申請を出し、それに見合う成績で合格していた。
「3年間か。今度は遊ぶ暇ないだろうな。」
「全体のレベルが高いからな。
医療系コースなんて俺たちでも無理ゲーだぜ。」
「医者は金がかかるし、稼げるようになるまで長いからやめろって
母ちゃんと姉ちゃんが言ってたぜ。言うほど稼げないらしいし。」
「今は先の事考えずに喜ぼうぜ。しっかり稼いで
こんな所から脱出するその日までまだ長いぞ。」
「ああ、早く大人になって稼ぎたい。
そういやボッコ、自転車用意できたか?」
高校へは自転車通学予定だが、彼だけは兄弟共有の自転車しか
持っていなかった。
「できた。父ちゃん母ちゃんと弟たちが小遣い出してくれた。」
「・・・そうか、良かったな。」
「お願いなんだけど、弟達にやりたいんでお前たちのグラブくれないか?」
「ああ良いぜ。どうせもう使わないから。」
3人はその後も制服の事や何やら相談を続けた。
誰も見ていなかったが、悩みは多そうだった。
学校からほど近い、古くはあっても造りの良い
大きな一軒家にも合格通知は来ていた。
そこには祖母がやっている書道教室の人達に
お祝いを言われて真っ赤になっている少年がいた。
両親は大学で研究しているか、病院で手術中らしかった。
祖父はどうしても断れない接待ゴルフ、一番好きな
お姉ちゃんからは”なるべく早く帰る、ゴメン”という
メッセージが来ていた。
お祝いの料理を仕出し屋に手配する祖母を見ている少年は
どこか寂しそうだった。




