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3.そんな事が有るはずは、ない

能力、それは二人の間でだけ伝わる言葉というか概念だ。

きっかけはカードゲームだった。

何度やっても当時7歳のショータに勝てない。

視線を読むのが上手いと自信があったのに全く勝負にならない。

それは良いのだけど、ショータは勝っても楽しくなさそうにしている。


「どうしたの?お姉ちゃん弱すぎてつまんない?」

「わざと負けてくれるんだもん。ちゃんとやって欲しい。」

「そんな事してないよ?」

「だって違う方のカードばっかり持って行くんだもん。」

「どれかわからないんだから、そういう事もあるわよ。」

「何故わからないの?」

回らない口で、それでも話してくれたショータは不思議そうにしていた。

「何故って、・・・逆にショータは解るの?」

普通わからない、と言おうとしたが、普通が出来なくて悩んでいるショータの事を

思い出して、問い返してみた。

「だってお姉ちゃんの頭の中に見えるもん。」

この位の年齢の子は作り話をするのは良い事だ、私は乗ってやる事にした。

「見えちゃうんだ、じゃあこれは何だ。」

伏せてあるカードを指さすとショータが首を振った。

「誰かが見てる物じゃないと見えないよ。」

なるほど、そう来たか。

「じゃあめくってみるね、それ!これ何だ。」

素早くめくって確認して再度伏せる。

見とけ、嘘つきはこうだ―ってホッペをスリスリしてやる。

「ダイヤの3!」

間を置かず勢いよく正解が帰ってきて驚いた。

偶然ってあるものだとおもって次をやってみた。


ショータは次々当てた。

私は最初自分の後ろに鏡を探した。

その後はカードの微細な差異を見つけているのではないかと

ショータに確認した。


あり得なかった。本当に見えていると言う。

ショータは逆に私がショータの見ている状況が分らない事が

不思議そうだった。

私は混乱しながらいろんな事をやってみた。

ショータがこの年齢としてはあり得ない程文字が読める事が役だった。

雑誌どころか医学書まで、内容は理解できないにしろ読んで見せたのだ。


目の前で起きている事を信じざるを得ない。

数日間検証した私は常識ではありえない事が起きている事を認めた。


学会に報告するべきだろう。どこかは解らないが担当教授に相談すれば・・・

膝の上で医学書を眺めているショータを見た。

実験にはとっくに飽きたようだが、医学書の内容に興味を持ってようだ。

図と書いてある事の関係を聞いてくる。

まったくウザ可愛い。


学会に報告したらショータはどうなるんだろう。

ここ数日やったのと同じ実験をしたら大騒ぎになるだろう。

その結果はどうなる?私は研究者という人種を知っている。

とことん知りたがる。容赦がない。

上手く話す事も出来ず、内気で気弱なショータを研究者に渡す?

冗談じゃない。

視覚や脳科学の研究には絶大な影響がありそうだが、それが何だ。

このか弱い子供に犠牲を強いてまでやる価値はない!

人と違う事を悩んでいるショータを幸せにするとは思えない

少なくとも今のショータはダメだ。


「この事、誰かに言った事ある?

「誰にも。みんな僕の話聞いてくれないから・・・。」

膝の上のショータを抱きしめながら話しかける。

「わかったと思うけど、これ、ショータにしか出来ない事なの

ショータにしか見えないの。」

「うん。」

「知られるとね、大騒ぎになって、どっかに

連れて行かれるかもしれないの。」

「うん。」

「だからね、ショータが大人になって自分でどうするか決められるまで

隠しておいた方が良いと思うの。」

「うん。」

「だから他人に言ったり、実験でやったような事を他所でやっちゃダメよ」

「うん。」


抱きしめているショータの体が震えポタポタと涙が落ちている。

私はショータを泣かない子だと思っていた。

7歳の子供なのに涙を流さず泣き言も言わないので私は情緒面について

診療しようと考えていた。

そのショータが涙を流して泣いている。

実は泣いているのを見たのはあれが最初で最後だ。


いつも以上に、回らない口で話かけてくる。

「お姉ちゃん、僕、なんでこんなに変なの?なんで違うの?」

私は何も言えなかった。ぎゅっと抱きしめた。

でもショータは泣きながら私をじっと見て答えを待っている。

頑張れ私!

「変じゃないよ。ショータがあんまり良い子だから

神様が他の誰も持っていない”能力”をくれたんだよ。」

「能力?」

「うんそうだよ、神様がくれたんだから大事にしないとね。

それとショータだけ貰ったのがバレたら、羨ましがられるから

皆にも、おじいちゃんおばあちゃんにも内緒よ。」

「うん。・・・わかった」


それ以来”能力”は二人の秘密だ。

まあ、これぐらいぶっ飛んでいると目の前で証拠を見せない限り

誰も信じないだろうから今までバレた事はない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・・・ビールが無くなった。熱燗でも頼もうかな。

「能力がどうかしたの。」

「今日、じっと見られて恥ずかしかったから嫌だ見ないで、と思ったんだ

そしたら少しの間だけ消えた。」

「消えたの?ショータが見えなくなったって事?」

「それが違うみたい。相手の人の様子が少し変だった。

 多分一瞬目が見えなくなったんだと思う。」


そんな事がある訳、あるか。

前にもあった事だ。

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