15.勧誘開始
入学式、礼華が新入生代表で挨拶しとった。
こっち見て『驚いた?』みたいな顔しよったけど
一番堂々としとったのも含めアンタらしいとしか思わん。
今日は、クラス分けと明日からの授業内容の簡単な説明だけで
昼までには終わる。母は間に合わんな。
普通の学校が高校3年間でやる内容を1年で詰め込み、
2年で完全に理解させ3年で受験対象校に特化させるんやって。
話には聞いてたけど、こんな事ホンマにやるんやな。
私ついていけるやろか?
「さて、無事4人ともAクラス、目標達成!」
「不安だったけど何とかなったね。」
礼華と汐里、乙羽がエライ喜んどる。
「一緒のクラスで良かった。やっぱり縁ってあるんやね。」
私がそういうと3人の頭の上に”?”が浮かんだのがわかった。
「美月、入試の前に学校の説明ちゃんと読んだ?
この学校のコース分けについてとか、そこの部分」
「読んだで。医療進学コース、理工進学コース、政経進学コースが有るって。」
「各コースにクラスがあるという部分は?」
「あんまり細かいとこまで読んでない。」
礼華に医療進学コースの入試問題で責めさいなまれた記憶しか残ってない。
「この学校のクラス分けはね、成績順なの。テスト、模擬試験の成績で
学年の途中でもクラスが変わるの。」
「Aクラスなら自主性を認めた授業だけど、Bクラスになったら地獄の詰め込み
Cクラスなんて監獄よ。最も医療クラスにはAとBしかないけどね」
「Cクラスは部活動なんてさせてもらえないの。Bでも制限がかかるわね。
もっとも私が居る限りあなた達にそんな思いはさせないわ。」
最後は礼華が締めた。・・・けど大丈夫やろか。
「そんな学校で部活動なんかやるん? 私、遠慮したい。」
「大丈夫よ。Aクラスさえ維持していれば他校より余程自由を認めてくれる。
全て計画通りよ。」
アンタの計画は何か怖いねん。
「それより、ほら攻略対象がそこに居るんだから行きなさいよ。」
「えー、初日から?ムリムリ!心の準備ちゅーもんがあるやん。」
「準備ならしたでしょ?リハーサルまでしたじゃん。
行け―、行くんだ美月!」
クラス30人中、女子は私らを含め7人しかおらん。
私ら以外のその3人の女子が別に固まってチラチラ見とる方に
その子がおった。
他の男子生徒に話かけられたその子は、なんか困ったみたいな
それでもなんか対応してる。
話しかけた方は、大きくうなずいて、その子の肩をポンポン叩いてる。
どうでも良いけど、並ぶとハッキリわかる。
人間の外観って個人差激しいんやな。
あんな美形の傍に行きとない。
私絶対悪目立ちする!
と思うとるのに、三人かかりでそっちの方へ行かされる。
引っ張る礼華と汐里はともかく、乙羽、そんなに押さんといて。
あんたチッコイ体で、どこにそんな力あるねん。
「ショータ、久しぶり!この子がね、お話したい事があるって!」
礼華が男の子の方へ私を押しやる。
告白するみたいになっとるやろ、皆注目してる、やめてやめて。
「何度も練習したでしょ、ほら、セリフ」汐里が耳元で言ってくるけど、
そんな簡単に言えるか!
完全に周りが見えん、この教室、板張りやったんや。
必死のパッチ(今時おっさんしか言わん)で覚えたセリフを言うた。
「あのー、私、野球部にマネージャーなんですけど、野球部に入って欲しくってぇ、
あっ女子マネージャーも4人もいて、髪型とかもー。」
どっから出とるんやという声、しかも標準語で言う。
我ながら気色わるい、サブイボ出とるやろな。
「上目遣い、上目遣い、早く」礼華が横から小声で言うけど
出来るか! 床の色もようわからんわ、恥ずかしい。
「・・・っ、ご、ごめんね。野球もう辞めたんだ。」
返事が帰ってきた。
吃音の事は聞いてから、驚かなかった。
むしろ、ちゃんと聞き取れるやん、という感想が上回った。
脱力している私の耳元に礼華が指示を出してくる。
「次のセリフ、早く、断られた時のやつ」
えーと、これやったな。
「何年もやって、途中で辞めたら勿体ないやん。もう一回考えて。」
あかん、言葉が完全に変や、中途半端なイントネーションやん。
不審者やと思われるやん。
不思議な間があった後、返事が帰ってきた。
「ぁ、ありがとう。ぅうん。ちょ、、と考えて、そ、、、相談してみるよ。」
男の子にしては高い、優しい声だった。
「じゃあね、ショータ。この子は海野美月ちゃん、これからよろしくね。」
私の限界を悟ったらしい3人がその場から離してくれた。
礼華は、あーもう、みたいな態度が現れてたけどな。
そんならアンタがやりいな。
その後、他のクラスメートとも挨拶したけど、部活勧誘のせいで地獄やった。
幸いクラスにクセの強そうなのはおらん。他校から来た女子三人も
普通にええ子そうや。
その子、射和翔太君はその後もちゃんと挨拶してた。
吃音とわかっても、みんな気にしないようや。
そら、何言うとるか聞き取るにに問題ないもんな。
そんな事考えながら見てたら、ドキドキしてきた。
近くでは見れなかったけど、やっぱり美人やな。




