10.部活?
卒業式と入学式の間の春休み。
何か変な感じの春休み、入学準備とかホンマはせんとあかん春休み。
私は妹の心晴と昼御飯を食べた後食休みをしている。
礼華から呼び出しがあったのはそんな時だった。
「通りのファミレス?・・・悪いけど用事があるねん。
えっ、ケーキセット奢る?どうしても私に頼みたい事がある?
汐里と乙羽はもう了解してくれた?何なん?来てくれたら話す?」
頭の中に?マークが重なる。
「さっきも言うたとおり、用事があるの。
妹の面倒みないといとあかんし。
えっ、妹も連れて来て良い、一緒にケーキ奢るって?」
うーん。絶対何かの罠だ。裏があるに違いない。
でもケーキが、私の小遣いではいつ食えるか解らん幻のケーキが。
心晴にも食わしてやりたいケーキが。
「ファミレスには誰が居るの?礼華と汐里と乙羽だけ?
わかった行くわ」
承知してしもた。
私のアホ、ケーキ食べたさに、あからさまに怪しい誘いに。
みんな貧乏が悪いんや。
心配そうに私を見ていた心晴に声をかける。
「お外にケーキ食べに行こか。」
「お外に?」
妹の心晴は対人恐怖症やねん。
特に声の大きい男の人が苦手や。
外に出るのは嫌がるし、出ても私にピッタリ張り付いて離れん。
「怖ない?」
「怖ないで、私が一緒やし、会うのはいつもの女の子だけや」
「ケーキ食べるの?美月と?行く。」
血は半分しか繋がってないけど、ケーキに弱いDNAは共通のようや。
ファミレスの前まで行くと窓際の席の礼華達が手を振って呼んでくる。
「来た来た、こっちよ。座って」
一番奥の席を指さす礼華、汐里と乙羽が立って私たちを奥の席に入れる。
何やろ、逃がさんという気迫をひしひしと感じる。
心晴は別に怖く無いようや。私にくっついたままやけど
奥の席に一緒に来た。
「ドリンクバー追加2と、ケーキどれにする?」
汐里が注文タブレットをこちらに回して来る。
「その前に要件を言うて。そやないと怖くて何も喉を通らへんと思う」
乙羽と汐里が顔を見合わせている。
変な笑い方をしながら礼華が言った。
「美月、高校の部活どうする?」
「部活?これまで通り帰宅部にするつもりやけど。」
礼華だって中学帰宅部やったやん。
私は家事もせなあかんねん。
「それじゃ退屈じゃない。15歳から18歳の輝ける時間をただ勉強と
生活で埋めるなんて空しいじゃない。人生に、記憶の記念碑を建てたい
じゃない。」
礼華、心晴が不思議そうに見てるから止めといて。
「3年間しっかり勉強したな、でもええやん。
むしろ他の事を出来る気がせん」
遊んどっても好成績とれそうなアンタと違うねん!
「そんな事言わないで、お願い、手伝って」
「手伝うって、何を?」
「野球部よ、野球部に入って強くしたいの。
具体的には甲子園に行きたいの。」
話を聞いていた汐里が横から少し古い本を出して机の上に置いた。
「何これ?」
「女子高生が経営学の知識で野球部を改革するお話よ。私納得できなくてね。
私ならずっと上手くやってみせる、私のマネージメントで
甲子園にも行って見せる。」
拳を握りしめる力説する礼華。
心晴が不思議そうに見とるけど、見ちゃいけません。
要するに野球部のマネージャーになるから手伝え、という事か。
高校野球のマネージャーって何するんや?洗濯、料理?
イメージ湧かへん。日焼けは嫌やし。
「美月諦めて、礼華が言い出したら聞かないの知ってるでしょ。」
「やらせてあげたら落ち着くから、少しだけ我慢して」
「なんかヤラシイ意味入ってないやろな!」
汐里と乙羽まで手を合わせてきよった。
仕方ない。
「ティラミス」
「えっ?」
「イタリア産最高級マスカルポーネを使ったティラミスに
季節の最高級フルーツを添えて。」
ぼったくりとしか思えん値段のケーキを指さした。
「これを私と心晴に奢ってくれたら考える。」
「うん。わかった。取引成立ね。」
一切迷わんと礼華が手を握ってきた。
忘れとった、こいつブルジョワやった!




