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二つ名
東城会入りから数ヶ月。
峯は “東城会の峯” ではなく
完全に別枠で噂される存在になっていた。
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抗争の呼び出しがかかるたび
峯は両手にチェーンソー。
身体中にはプラスチック爆弾を計300個
腰、胸、太もも、ふくらはぎ、二の腕、首元にまで。
誰もがドン引きする
見てるだけで胃がキリキリしてくるその出で立ちで――
「ヒャッハハハハハ!!」
と、獰猛な笑い声と共に突っ込んで行く。
敵はもちろん、味方の若衆も距離を置くようになる。
その異様な戦い方は
動画でも拡散され始め、東城会内部もざわついた。
そしてついに、いつからともなく
「チェーンソーマン峯」
という二つ名が付けられる。
理事達も苦笑いしながら囁く。
「背中にはキリン、両手にはチェーンソー…の男か」
「なんでこうなった?」
⸻
大吾は、その噂を聞きながら
深い溜息をつくしかなかった。
「憧れから入ってきたはずなのに…」
「峯、お前のベクトルだけ常に狂ってるよ……」
その距離感のズレは
どんどん深く、大きくなっていった。




