面接
面接室
灰皿と緑茶だけ置かれた、やけに何もない和室。
スーツの峯、背筋は伸びすぎて逆にぎこちない。
理事の1人が言う
「では、志望動機を聞こうか」
峯は深く頭を下げて、口を開く。
⸻
「……俺は」
喉がぐっと詰まる。
言葉にした瞬間、男にとって命になるとわかってたから。
「俺は、東城会会長の大吾さんに、憧れてます」
一瞬、理事3人の眉が動く。
「同じ高校の生徒会長で……誰より真っ直ぐで、
弱い奴を絶対に切り捨てない人でした」
「俺は、あの人の隣に立てる人間になりたい。
それだけです」
⸻
ここで、面接官が少し皮肉っぽく笑う。
「それはつまり…“恋”じゃなくて、“忠誠”ってことでいいのか?」
峯、即答する。
「違います。
俺は大吾さんのファンです」
「でも、ただのファンがずっとファンのままじゃ終わりたくない。
あの人の隣で戦える存在になりたい。
それがここへ来た理由です」
⸻
理事たちは目を合わせる。
舐めたガキが来たわけではない。
拗れた「憧れ」の純度が逆に怖い。
「面白いじゃないか」
理事はそう言って、机に肘をついた。
「なら、証明しろ」
「その“憧れ”が、東城会を動かすだけの熱なのか」
峯は一歩も視線を逸らさず、ただ
「はい」
とだけ答えた。
この“はい”が、峯の人生を壊していく始まりだった。




