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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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因習の園 4

 青い空に青い海。

 そして、村の女性が赤木勇気を後ろに乗せて自転車で巡回をしている鷹司陽に声をかけた。

「駐在さんにちっちゃい駐在さん! 張間山の登山口の看板が傷んじゃってるのよ、お願い」


 陽はそれに自転車を一旦止めて

「わかりました、見て立て直ししておきます」

 と女性に答えた。


 勇気も敬礼すると

「はーい」

 と答えた。


 女性は笑顔で

「ありがとう」

 と手を振った。


 これが休日の島では当たり前の光景になりつつあった。

 平日は陽が一人で回り、勇気は学校へ行って帰ると宿の手伝いをして土曜日と日曜日は駐在所へ千代からのお弁当を持って訪れ、一緒に巡回をするようになっていた。


 消防団の高瀬昭一が最初に勇気のことを『ちっちゃい駐在』と呼び、それがいつの間にか定着してしまったのである。


 勇気は坂口ありさから時折手紙をもらうと陽に

「ありささん、大学はやっぱり法学部を受けるから高校では公民と社会取るんだって」

 と言い

「警察官になるって書いてる」

 と告げた。


 坂口ありさは以前に大きな事件が起きた島で当時から駐在をしている坂口信一郎巡査部長の姪で将来は警察官になると頑張っている来年高校になる少女であった。


 来年中学2年になる勇気とは2才違いと言うことである。

 陽は駐在所で報告をファックスで本当に流し終えると椅子に座り

「そう考えると勇気も再来年には高校とか進路を考えないといけないな」

 と告げた。

「宿屋の主人になるんだったな」


 それに勇気は忘れていたように目をパッチリ開けると

「あ、う~ん」

 と小さく呟いた。


 いま陽と二人で巡回して島の人々の生活を見ながら守っているのが自分にはストンと来ていることに気付いたのである。


 陽はう~むと考える勇気を見ると

「いや、別に何でもいいと俺は思っているけどな。まあ、時間はあるんだ考えろ」

 と告げて、立ち上がり

「帰ろうか」

 と夕暮れの赤に染まる土の道を見つめた。


 勇気は頷くと

「うん」

 と答えて駐在所を陽と共に後にしたのである。


 陽と勇気と千代が生活する眉山旅館は駐在所から徒歩5分ほどの場所にあり、島の誰もが知っているので夜の6時以降に何かあった時は眉山旅館へと駆け込んでくるのである。


 何処かノンビリとした長閑な島の日常であった。

 が、陽と勇気が家に帰ると千代が受話器を手に

「はい、あ、今帰ってきたので代わりますね」

 と受話器を陽に差し出した。

「萬田さんって人から」


 陽は目を見開くと

「萬田さん!?」

 と言い、受話器を手にすると

「お久しぶりです!」

 と告げた。


 瞬間に萬田横柄の謝罪が飛んだ。

「鷹司、すまない!」


 ……。

 ……。

 陽は話が見えずに

「え!? どうかしたんですか?」

 と聞いた。


 萬田横柄は少し沈黙を広げて

「お前が前回の一回だけだと言ったことは聞いている。その、お前は長野と富山と新潟の間くらいにある山村を回ったことを覚えているか?」

 と聞いた。


 陽は少し考えて

「何カ所か行きました」

 と言い

「報告書を出しましたが、一番記憶に残っているのは白馬の方の崩沢村ですね。あそこは千成家という一族が支配している感じでちょっと心配ではあったので」

 と告げた。

「他には同じ白馬で北城の二俣とか、あぜくらの方とかも山村が点在してましたが観光客なども多いのでそれほど心配ではありませんでしたけど」


 萬田横柄は息を吐き出して

「やっぱり、行っていたか」

 と言い

「実はその崩沢村は俺の刑事課の頃の相棒の息子が駐在所に詰めていてな」

 と告げた。

 

 陽は目を見開くと

「多津川湊巡査」

 と告げた。


 萬田横柄は頷きながら

「ああ、相棒の息子だ。その多津川湊巡査がどうやらその千成家の息子が殺しをしたという情報を得て調べに行ってから返ってこないと彼の妻子が俺にヘルプをしてきて俺は明日から休みを取って調べに行こうと思っているんだ。それで鷹司」

 と告げた。


 陽は冷静に

「わかりました。最後に行ったのは5年前なので変わっているかもしれませんが状況的なものは分かるので」

 と告げた。


 萬田横柄は頭を下げた。

「すまない、宜しく頼む」


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