親の事情子の事情 18
勇気は泣きだすと
「わかんない、俺。許すとか許さないとか……でも……ちゃんと見ようと思う。島に帰ったら叔父さんの警察の仕事をちゃんと見ようと思う」
と告げた。
赤木勇介は笑むと
「ああ、ちゃんと見てくれ」
と言い通話を切ると上を仰ぐように見て
「島に『帰ったら』かぁ」
と小さくぼやいた。
息子の家は東京の家ではなく島になっているのだと気付いたのである。
勇気が衛星電話を切った瞬間に葛原元太は驚いて叫んだ。
「おい! 小僧、あれ!!」
勇気は姿を見せた船団と上空を飛んでいく自衛隊機に目を見開いた。
それは村長の家からも見え、坂口信一郎を捕まえて船へ乗せようとしていたシェリルの目にも入った。
「まさか……」
そう言った彼女が上に視線を向けるとヘリコプターから自衛隊員が降りて彼女と男たちを制圧した。
自衛隊の船も次々に到着するとリーガルハイアットの建物に押し入って作業をしていた人間も全て集めて後から警察官が乗船した船が到着すると彼らを引き渡した。
海上自衛隊の隊長は作業を終わると敬礼をして
「離島の有事奪還訓練を終了する!」
と言うと船とヘリコプターに乗り込み波が引くように立ち去った。
県警本部長が春日結斗と姿を見せると村長に逮捕状を見せて
「貴方の後ろ盾である富樫代議士も海外の犯罪組織と金銭のやり取りをしていることが分かり逮捕された。貴方に密入国の中継ぎをさせていたことも自白している。警察庁刑事部捜査二課の方へ引き渡し取り調べを行うことになる」
と告げた。
村長は膝をつくと
「あの……駐在が……4年も来なかったくせに……何で今頃」
と屋敷の居間で床を叩いた。
助けられた坂口信一郎はその後、春日結斗と再会し
「ありがとう、気付いてくれて助かった」
と告げた。
春日結斗は首を振ると
「いや、お前の命を懸けた報告が島を県警を救ってくれたんだ」
と言い、担架で運ばれる陽を見ると
「鷹司警部。本当にありがとうございます」
と告げた。
陽は苦く笑むと敬礼をして坂口信一郎と横に立つ坂口ありさを見て
「島の人たちも坂口巡査部長も無事でよかった」
けど、と担架の横に立ち口をへの字にして自分の手を握る勇気を見て
「きっと、赤木にも怒られるな」
と苦くぼやいた。
勇気は「俺も怒ってる」と言い強く握りしめた。
それに葛原元太が笑って
「怒れ、怒れ、坊主頑張ったからな」
と言い
「島を救ってくれてありがとうな」
と手を振った。
それに他の人々も笑顔で手を振ったのである。
勇気は目を見開くとビシッと敬礼をして返した。
陽は微笑むと坂口信一郎と春日結斗を見て
「後のことをお願いする」
と敬礼をしながらドクターヘリへと運ばれた。
陽は飛び立ったヘリの中で勇気の手を握ると
「衛星電話、かけてくれてありがとうな」
と告げた。
勇気は頷いて
「あのさ、叔父さん。俺、今もやっぱり俺、警察好きかどうかわからないけど……」
と言い
「今度、叔父さんと島の巡回を一緒しても良いかな?」
ちゃんと見て叔父さんとお父さんのことを知ろうと思う、と告げた。
陽は笑むと勇気の手を握って
「ああ、一緒に回ろう」
と告げた。
島ではリーガルハイアットの建物は公民館として生まれ変わり、選挙で新しい村長が誕生した。
陽は足の手当てを受けて更に赤木勇介に盛大に怒られて勇気と共に島へと戻り、暫くの間は松葉杖で勇気と共に巡回しながら駐在所に戻ると報告書を作りながら
「やっぱり、島は落ち付くな」
と笑みを浮かべたのである。
勇気も駐在所から窓の外を見つめ行き交う人々が笑顔で通り過ぎるのに笑みを浮かべたのである。




