親の事情子の事情 16
陽はどうせ知られているんだと携帯でその様子を堂々と撮影した。
シェリルは笑って
「本当に、何処か壊れているんじゃない?」
と言い
「まあいいわ」
と肩を動かした。
陽は動画を撮るのをやめて
「この危機を知らせることが全国巡回駐在員の俺の仕事だからな。中央では目の届かない離島や山村はどうしても守りが手薄になる。その事でお前たちのような輩がそこに住む人々を害したり、犯罪に巻き込んだりするのを止める。それが俺の役目だ」
と告げた。
シェリルは陽を見つめ
「貴方くらい度胸の据わった人間ならこちらの組織で幹部になれるわ。警察の微々たる給料なんかより遥かに高い金を払うわ」
と言い肩を竦めると
「と言っても、無駄みたいね」
と告げた。
そして憎しみの籠った眼で
「貴方みたいな欲のない男大っ嫌い」
と言い、にこやかに笑むと
「鷹司巡査部長、貴方は貴方が死ぬと警察が動くと思っているんでしょ? 全国巡回駐在員ですものね。必ず警察庁に戻ることが暗黙のルール」
と言い、銃を出すと足を撃ち抜き
「島と本州の間くらいまでは返してあげる。でも、貴方を殺して刑務所へ入る人間と一緒にね」
と背後に集まった男たちを見て
「連れて行って」
と告げた。
陽は男に縛られるとコンテナの中へと押し込められたのである。
扉は半開きで呼吸だけは確保できる状態であった。途中までは生きていなければならないのだ。
「だが、この傷だと三日持つかだなぁ……ってことは三日後には船が出るってことだが、その前に坂口巡査部長が動いてくれると助かるが」
陽はそう小さく呟いてフゥと息を吐き出した。
坂口信一郎は急いで駐在所に戻ると机の上に置かれていた報告書のファイルを見て
「これは」
と呟いた。
『衛星電話を机の引き出しに入れておいた。連絡を頼む 鷹司』
坂口信一郎は慌てて外へ出ると衛星電話の通話ボタンを押した。が、雑音が響き目を見開いた。
そこに村長が男たちを連れて現れると
「やはりな、残念だが、この村の中に電波ジャックの装置を付けている。衛星電話でも装置が作動している間は通じない」
と言い、男たちに
「こいつを捕えて明日出航の船に乗せろ。あの鷹司を殺した犯人として出頭してもらう」
と言いニヤリと笑うと
「いいか、お前が全てを話したら島民は全員殺す。そして、今ここにいるこいつらに成り代わってもらうことにする。俺には後ろ盾がいるんだからな」
と踵を返した。
それを見ていた駐在所の近くの女性は蒼褪めながら
「……どうすれば……」
とよろよろと部屋に入り、そっと町の中へと出た。




