親の事情子の事情 12
陽は笑むと
「ありさちゃん、勇気に村の案内をしてくれるかな? 俺と坂口巡査部長は仕事があるからね」
と告げた。
「勇気、ありさちゃんと村を見せてもらいなさい」
勇気は陽の顔を見上げてキュッと唇を噛み締めると
「わかった」
と答え
「ありささん、宜しくお願いします」
と告げた。
ありさは坂口信一郎を一瞥して彼が頷くのに頷いて、勇気に
「勇気くん、よろしくね」
と告げた。
リュックを背負った勇気とありさを陽は坂口信一郎と送り出し
「では、村の状況等を宜しくお願いします」
と言い周囲を見回して
「4年前と様変わりしているな」
と目を細めて民家の間にドンと見える四角い屋根を見て
「さて、お互いに『仕事』をしようか」
と足を進めた。
駐在所のFAX電話は不通状態であった。そして、4年前には無かった防犯カメラが付いていた。
陽はそれを確認すると
「たいした手の入れようだ」
と心で呟き、定型通りの書類のチェックを行った。
もちろん、全てどの巡回ルートにおいても『異常なし』と書かれている。
顔が強張ったままの坂口信一郎を見ると笑顔で
「よし、問題はないみたいだな」
と言い
「じゃあ、今日の巡回ルートは西側のルートか。案内してもらえるかな?」
と告げた。
坂口信一郎は一礼すると
「はい」
と答えた。
駐在所を出ると金色の髪をした女性が笑みを浮かべて
「見かけない駐在さんね。何処へ行かれるのかしら?」
と聞いた。
陽は笑顔で
「西側の海岸沿いから山手への巡回です。初めて見る方ですね。この島へは観光に?」
と聞いた。
女性は肩を竦めると
「いえ、働いているんです」
と告げた。
陽は驚いて
「へー、どちらでですか?」
と聞いた。
女性は笑むと四角い建物を指さして
「あのリーガルハイアット会社の方で」
と告げた。
陽は頷きながら
「ああ、あの建物……新しいですよね。何時頃出来たんです? 4年前には無かったなぁ」
と告げた。
女性は陽をじっと見て
「……2年前よ。お知りにならなかったの?」
と聞いた。
陽は目を見開いて
「え? ええ……まあ、仕事がら色々なところを回ってその状況を報告するのが仕事の駐在員なんで4年前のことを覚えているんですけどね」
とほへーと見つめた。
「そのリーガルハイアット会社には島民の方とか貴方のような海外の方とかが働かれているんですか? 新しい地域活性の産業かぁ」
女性は少し考えて坂口信一郎を一瞥すると
「坂口巡査部長ならご存じだと思いますわ」
と立ち去った。




