親の事情子の事情 10
村長は4年前のことを思い出し
「あ、ああ……確か鷹司という警察官が来られましたな。父が村長だった時に一緒に挨拶したのを覚えていますよ」
と告げた。
春日結斗はそれに
「はい、その鷹司警部が3日後に定期訪問する形になります。4年ぶりと言うことで島についたらご挨拶に行くと思いますので宜しくお願いいたします」
と告げた。
村長はそれに心で舌打ちしつつ
「わかりました、お待ちしているとお伝えください」
と告げた。
全国を回っている駐在員である。4年前にもきていたので恐らくその順番が来たということなのだろうと村長は理解した。
「だが、この状況で何か勘付かれたら」
だが下手に断っては折角手に入れた金の成る木を失ってしまうことになる。
村長は受話器を下ろして少し高台にある屋敷から島で唯一の村を見下ろした。
鄙びた漁村で島民は50名程度である。
これと言った特産品も観光する場所もない。
「俺の親父は村が困ってなければ良いなんて人の良いことを言っているから本土の奴らに下に見られるんだ」
本土の高校と大学へ行き離島の村が田舎臭い時代遅れの場所に感じた。
だが、今は違う。
東京の代議士と繋ぎを取って話をしていると海外の人材コンサルタントの人間を紹介され島に会社を作ってくれるといったのだ。
「その建物を建てるだけで何億という金が入ってくるんだ。これで東京に土地を買って何れ俺は政界に打って出る。そうすればもっと豊かな暮らしが出来る」
……それを邪魔する人間も抑えてくれている……
「古い考えの島民などどうなっても関係ない。ここを海外の窓口にすればいい暮らしができるんだ……絶対に邪魔はさせん」
3日後、陽と勇気は島と本土の間を往復する貨物便に乗り島へと向かった。
ただ、陽はその船の船長ともう一人、同行している人物を写真に撮り、出航して直ぐにポケットの中から携帯で写メを送った。
4年前には海外の人間はいなかった。
本当に小さな漁村が一つあるだけの島であった。全員が親族ではないかと言うくらいの密接な関係の村で
「あの頃、気になったのは村長の息子だったが……」
と呟いた。
青い海の向こうに闇を感じさせる雲の下で島影が暗く浮かび上がっていた。




