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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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84/112

親の事情子の事情 9

 陽は笑むと

「ああ、4年前に村長には挨拶をしているし……村長が変わっていても俺が4年前に巡回しているという証明になる」

 と告げた。

「あくまで、全国巡回駐在員としての定期訪問だ。手順を踏まなければ反対に怪しまれる。最初から怪しまれたら何もできない」


 春日結斗はハッとすると

「はい!」

 と敬礼した。


 陽は赤木勇介と春日結斗を眉山旅館に宿泊させた。千代は料理を振舞い客室へとそれぞれ案内した。

 その間も勇気は少し不貞腐れたように自室で閉じこもり陽は赤木勇介の部屋に行くと

「無理に決めて悪いな。でも、このままじゃダメな気がしてな」

 と告げた。


 赤木勇介は窓の外の静かな夜景を見つめ

「いや、こう言っては何だが……助かってる」

 と告げた。

「俺も静香も結局のところ勇気がずっと文句を言わないのを良いことに自分たちの生きがいの上に犠牲にさせていた。今も結局東京へ連れて帰れていない。俺はお前のように引き返すことはできないししないだろう。静香も同じだ。だから怖いんだ。連れて帰っても同じことを繰り返すと分かっているからな。酷い両親だな。お前がいなかったら、千代さんがいなかったら、勇気は取り返しのつかないことになっていたと思っている」


 ただな

「それでもやっぱり……お前にやきもちを焼いてしまってな」


 陽は笑って

「ちゃんとわかるさ。勇気は分かる子だ」

 と言い

「まあ、俺はお前や静香さんにかこつけて勇気を連れてきたが、正直救われているところがある。俺がいても千代の中にはぽっかりと空いた心の空洞があった。女の人ってのは子供を身籠っている間にそう言う心の準備をしているんだな。俺なんて生まれてきてからその準備だけどな。その穴を勇気が埋めてくれている」

 と告げた。

「悪いな、ありがとう」


 赤木勇介は眼鏡を上げると

「お互いだ」

 と言い

「でも、俺も愛しているからな、勇気のことを」

 と告げた。


 陽は立ち上がると

「そんなの分かってるさ」

 と立ち去った。


 翌日、赤木勇介と春日結斗は島から飛行機に乗って警察庁へと一旦立ち寄り、浜中勝彦に報告をしてそれぞれの部署へと戻った。

 赤木勇介は直ぐに携帯と衛星電話を準備し、春日結斗は村長と坂口信一郎それぞれに全国巡回駐在員の定期訪問があることを報告した。


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