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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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親の事情子の事情 6

 浜中勝彦は机から一枚の紙を出すと

「これは4年前に鷹司巡査部長が全国巡回駐在員として回っていた時の報告書だ」

 と告げた。

「この島に鷹司巡査部長は行っている。全国巡回駐在員が廃止されたことは知られていない。だから、怪しまれずに行けるとすれば鷹司巡査部長だけだと判断した」


 ……ただ彼は警察庁長官の俺の『命令』では動かん……

「それにあの事は俺にも責任がある。全てを鷹司巡査部長に背負わせ過ぎた」


 赤木勇介は視線を伏せると

「それを言えば俺もですよ」

 と言い

「ですが、鷹司に恨まれても動かします」

 と敬礼した。

「但し、虎穴に入る鷹司まで死なせるわけにはいかないので綿密な計画を立てます」


 浜中勝彦は警察手帳を出した。

「これを鷹司『警部』に渡してもらいたい」


 赤木勇介も春日結斗も浜中勝彦を見た。


 赤木勇介は苦く笑ってメガネを軽く押し上げると

「あいつが……いえ、鷹司が喜ぶとは思いませんが渡します」

 と受け取った。


 浜中勝彦は「わかっているが気持ちだ」と答え

「宜しく頼む」

 と告げた。


 赤木勇介は敬礼をして春日結斗を見た。

「島の情報とこれまでの報告書を鷹司が回った以降の全てを見せてもらいたい。それから付き合ってもらう」


 春日結斗は敬礼をすると

「はい」

 と答えた。


 翌日の朝に赤木勇介は島へと姿を見せた。


 陽は赤木勇介の突然の来訪に駐在所で報告書を書きながら

「おお? 赤木どうした? 休み取れたのか?」

 と聞いた。


 赤木勇介は首を振ると

「仕事だ」

 と言い、後ろについていた春日結斗を一瞥して陽に

「ちょっといいか?」

 と告げた。


 陽は少し考えて

「わかった」

 と言うと奥の仮眠部屋へと誘った。

「悪いな、詰所には椅子が一つしかないからな。長い話になるんだろ?」


 赤木勇介は頷いた。


 陽は奥の仮眠室の和室に入り膳の前に座って二人と向かい合った。

「それで? 新しい駐在員を連れてきたのか?」


 赤木勇介は冷静に

「違う」

 と答え、4年前に陽が警察庁に提出した報告書を置いた。

「この島のことは覚えているか?」


 陽は目を見開いて

「あ! ああ、島に漁村があるだけで比較的落ち着いた村だった。村長は野心家だったけどな」

 と笑って返した。


 赤木勇介は春日結斗に

「春日警部補、説明を頼む」

 と告げた。


 春日結斗は頷くと鞄から報告書を出して一枚のファックスを陽の前に置いた。

「坂口信一郎……当時も坂口巡査だったと思いますが覚えておられますか?」


 陽は笑むと

「覚えているよ、凄く真面目で良い駐在員だった。確か、当時は10歳のありさちゃんと二人で駐在所を守っていたと記憶してる」

 と答えた。


 春日結斗は安堵の息を吐き出し

「坂口巡査部長は俺の警察学校時代の同僚で……この前、俺に結婚記念日の祝いのメッセージを報告書と一緒に送ってきたんです」

 と告げ

「俺は独身です。ただ、警察学校時代に寮内のイベントで暗号を使うゲームがあってその時の暗号を使ってきたんです。俺は忘れていたんですがこれを見た時に思い出して」

 と続けた。


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