第一話 英雄の曲が流れる時 7
それに男は笑むと
「なるほど。浅倉ではないが……彼は養子だ」
と言い、目を細めると
「その違いを知っているということは、もしかしたら本当の知り合いかも知れないか」
と心で呟いた。
「彼と話しはできないか? 今は袖にされたようだが、もう一度説得してほしい」
陽は戸惑いながらも
「はい」
と答え
「先の様子だと持明院さんは覚えていないかもしれませんが」
と言い、言外に「失敗したらすみません!」と言いつつトランシーバーを手に車で待機している赤木勇介に連絡を入れた。
「シェール王子を警視庁警備部警護課の人たちが発見。今から滞在先に交渉し保護を要請する」
勇介はそれを受け取ると
「了解、報告する」
と答え
「それから、その件は先ほど第3小隊神津警部から伝令が回ってきた。第3小隊以外の小隊は現在撤収中。第3小隊は神津警部の指揮の元でこちらへ急行している」
と返した。
陽は頷いて
「了解」
と答え、通話を切った。
そして、息を飲み込んで洒落た一戸建ての『持明院月』の家の門前に立ってインターフォンを押した。
本当に覚えていないのか。
不安は十二分ほどある。
『誰? 簡単に声をかけないでもらえるかな』
何て言われたのだ。
考えればあれから13年。
忘れても仕方ないと言えば仕方ない。
でも自分はずっとずっと覚えていた。
あの夏の一ヵ月。
インターフォンの返答はなく扉が開くと持明院月が姿を見せた。
そして、陽を一瞥して直ぐにその向こうの男性に声をかけた。




