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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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誘拐 7

 陽は困ったように笑むと

「まあ、俺も一週間もいないけど何かあったら声をかけてください」

 と告げた。

「一応、警察官なので」

 

 高瀬は敬礼して

「よろしくお願いします」

 と答えた。

 

 陽はハッとすると

「そう言えば、毎週水曜日に来るって聞いた貨物便の荷物ってこの島の店の?」

 と聞いた。

 

 高瀬は頷いて

「ええ、でも船に積んでいるのもあったけど」

 と告げた。

「この島の店って神田さん所だけで貨物便の管理は神田さんがしているんですよ。何でも売っているので困らないんですけどね。ただ飛行機で運んできてそのまま船に乗せるのがあって……変だなーとはおもっていたんですけどね。あ、俺の家は空港の近くだからついね」

 

 陽は腕を組むと

「そうか、ありがとう」

 と答えた。

 

 そして、翌日から島の人たちから色々と……依頼が入ったのである。

「ごめんなさいねー、消防君たちは向こうの浜の方に行ってるから」

 

 陽は橋の前の立て看板を直しながら

「いやいや、俺が駐在していた時もこんな感じだったので」

 と笑って答えた。

 そして車で送ってくれた千代を見ると

「悪いな、眉山さん。足が無くてさ」

 と告げた。

 

 千代は首を振ると

「良いわよ、宿暇だし山菜を買うついでよ」

 と答えた。

 

 それに頼んだ夫人が袋を出すと

「持って行って頂戴。お礼だからね!」

 と告げた。

 

 千代は笑顔で

「ありがとうございます!」

 と告げた。

 

 夫人は困ったように

「うちのドラ息子の嫁に出来の良い千代ちゃんと思っていたけど難しかもだわね!」

 とウィンクした。

 

 千代は頬を染めながら

「おばさん! それ勘違いですから!」

 と口を尖らせ、寂しそうに

「事件が終わったら……東京へ帰って行ってしまうんだし……」

 と小さく呟いた。

 

 島の仕事は意外と色々あって陽はあちらこちらに呼ばれながら午前中を動き回り、午後から空港で明日の到着便の情報を入手した。

 

 確かに水曜日だけは一便貨物便がやってきて神田商店の主人が荷物を引き取りに来るという話であった。

 だが、その荷物の一部が港から出て行っていることは知らなかった。

 

 陽は、その日を過ごすと翌日に空港へと向かった。

 朝に本土と往来する飛行機が到着し、それから1時間後に陽がこの前に見た飛行機がやってきたのである。

 

 時間を見計らって神田商店の主人である神田泰三が車で現れた。

 陽は手帳を見せると泰三に

「今日の荷物を全てチェックさせてもらいます」

 と告げた。

 

 それに泰三は慌てて

「いや、それは村の駐在員でもないのに」

 と呟いた。

 

 陽はにっこり笑うと

「疾しいことが無ければ問題ないですよね」

 と告げた。

「それとも中に何か?」

 

 泰三は視線を動かしながら

「その、東京の……会社に頼まれたモノが」

 と告げた。

 

 陽は笑みを深めて

「会社名は?」

 と聞いた。

 

 泰三は観念したように

「ジャパンルート土地開発株式会社です」

 と答えた。

 

 陽は目を細めて

「じゃあ、きっちり全て見せてもらいます」

 と告げた。

 

 貨物便の中身は殆どが島で売る日用雑貨や食料品だったが一つだけ厳重に梱包されたモノが入っていた。

 そして、それこそが出所不明のヤク物だったのである。

 

 泰三は飛行機が大陸から週一回荷物を運んできて日用品は日本からそちらの空港経由で乗せ、その時に薬物も一緒に乗せてきていたのである。

 

 つまり離島で監視が甘い死角を突いた方法で密輸していたのである。

 

 陽は等々力に連絡を入れて鑑識と捜査二課で出所不明のヤク物を担当していた刑事を呼び寄せた。

 

 神田泰三は全てを自白し13年前にも同じことを追求してきた人間がいたことを告げた。

「浅倉さんが……貨物便の中身についてそのまま船に乗せているのがおかしいと……それと空港周辺の土地の買収とが関係しているんじゃないか。その荷物は何だと言ってきて。その時は知らないと……その……知り合いの荷物だと誤魔化したんですが彼は駐在員を通してちゃんと調べてもらうと去っていって……あの火事に……私は家族が巻き込まれたらと怖かったんです」

 

 捜査二課はそれを取り調べで聞き掴まえた売人からジャパンルート土地開発株式会社の人間から買っていることを聞くとビルと高溝など社員の家を家宅捜査したのである。


 高溝以外の社員全員が取り調べを受けることになった。

 が、高溝は先に逃亡して行方が分からなくなっていた。こうして、島を巡る薬物密輸ルートが一気に明るみになったのである。

 

 ただ、島の売店が無くなるという事を心配したがそれに千代が

「それなら旅館で神田さん所の事が落ち着くまで一部を売店にするわ」

 と言ってくれたのである。

「神田さんのご家族はきっと関わっていないと思うから、奥さん良い人だしこっちで暫くすると言って手伝ってほしいと言ったら顔向けが出来ないって言っていたけど同じ島の人間ですもの」

 そう告げた。

 

 陽は笑顔で

「ありがとう、それなら俺も安心する」

 と答え、島の人々にも礼を言って東京へ戻った。


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