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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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56/112

13年前の真実 1

「私の名前は持明院静一」

 今日から君の親代わりになる

 

 何処か硬質な表情を浮かべた男性が手を伸ばしてそう挨拶をした。

 両親が何者かに殺されて引き取られた養護施設から流れるように二、三か所転々として1年後に出会った里親であった。

 

 持明院静一は生来子供が出来ない体質らしく56歳を超えても独身を貫いていた。

 彼が月を引き取った理由は『持明院家の財産と家名を受け継ぐ子供が必要だった』という事らしく『別に君でなくても良かった』と言うのが持明院静一の言葉であった。

 

 月は朝日に照らされて明るくなったカーテンを目に身体を起こすと

「父さんの夢を久しぶりに見たな」

 と呟いた。

 

 調律師の基礎も。

 ピアノも。

 全て育ての父だった持明院静一が教えてくれたものだ。

 

 硬質な表情。

 冷たい言葉。

 しかし、それとは裏腹に静一は優しく丁寧に月を育て教育した。

 

 いま月が調律師として繋がっている多くの要人のパイプは養父であった持明院静一から受け継いだものだった。

 

 2年前に他界したが月はこの養父に対して持っている感情は『家族としての愛情と深い感謝』であった。

 

 正木治人を襲った2人の青年は強盗殺人未遂と薬物使用とで起訴されることになった。

 ただ全てを自供し反省をしている事と薬物については初犯と言う事もあるので大きくは強盗殺人未遂の方で罰せられることになった。

 

 その頃、月は一人の新聞記者に呼び出されて東都ハイタワーホテルの一階にあるラウンジを訪れていた。

 そこに一人の男性が姿を見せた。

 

 滝口渉は月を見て

「やっぱり、君は浅倉夫妻の子供だな」

 と告げた。

「持明院静一とも彼の妹である浅倉花音とも似ている」

 

 それに月は目を見開いた。

「え? 父がお母さんの兄?」

 

 滝口渉は笑むと

「ああ、13年前の放火が揉み消されてから俺は新聞社を辞めて独自で追いかけていた」

 と言い

「それで浅倉迅の妻であり君の母親である彼女を調べていくと持明院静一に行きついた。11年前に彼が一人の子供を引き取ったがその子供は二、三か所の養護施設を転々としていて詳しく調べないと出生が全く分からなくなるようにしていた」

 と告げた。

「それで君は放火で殺された夫妻の子供……つまり持明院静一の甥ではないかと俺は推測したわけだ。持明院の名と資産があって出来たことだろうと思ってね。彼はそうすることで君を守ろうとしていたんだろうと俺は思っている。自分の妹の息子、甥の君をね」

 

 月は目を見開いて彼を見つめた。

 始めて聞いた話だからだ。全くそんなことを知りもしなかったのだ。

 

 渉は苦く笑むと

「安心してくれ別に俺はあんたの敵じゃない。俺はあの新聞社の不正が許せなくて辞めた口だ。ああいう新聞社で上へ行く奴は自らの利益があると不都合な事実を平気で見てみぬふりをして公になると自分たちに火の粉が来ないように臭いものにふたをするように原因だけを袋叩きにする。それに対して嫌悪を持たない人間が上に行く……俺にはそれが出来なかった」

 と言い

「13年前の真実を知りたくなったら来てくれ。それを言いに来た」

 と名刺に住所を書いて渡した。

「その代わりあんたのこれまでの話を教えてもらいたい。俺は真実を知りたいだけだ。当事者の口からな」

 

 月は去っていく滝口渉を見送り鷹司家へと無意識に足を向けていた。

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