第六話 反撃の糸口 5
缶の中にはブツが入っていたが、三人から採取した毛髪や体液から薬物反応は出なかった。
彼らの言うには
「学校の友人がこれくらいやらなきゃっかっこよくないって言われて……三人で3000円ずつ出して教えてもらった原宿のジェックこまちって店のカウンターの一番右隅に座っている男性から買って、これからやろうと思った時に」
という事であった。
陽と勇介は他に薬物所持の人間がいないか移動しながら調べ、その最中に報告を聞くと小さく息を吐き出した。
陽は小さく笑むと
「まあ……する前で良かった」
と安堵の息を吐き出した。
勇介はハンドルを握りながら
「しかし、これくらいやらなきゃってかっこよくないって……それで人生つぶしてりゃかっこ悪すぎるだろって俺は思うけどな。悪目立ちがカッコいいって感覚が既におかしいしその後の人生を考えないと後悔しても後悔しきれない勉強代を払わされることになる。金も時間もな、それで得をするのは彼らじゃなくて売人や大元だけだけどな」
と呟いた。
陽は頷くと
「ああ、そいつらに上手く踊らされて鴨葱にされてるだけなんだよな。結局のところは一番損をして一番バカを見る」
と目を細めた。
勇介は息を吐き出して眼鏡をすっと上げると
「しかし、出所が全く掴めないっていうのが気持ち悪いな。関税でも引っ掛からない、船でも引っ掛からない、かと言って何処かで栽培している訳でもない……か」
と呟いた。
陽は頷いて
「そうだな」
と呟いて
「……なるみ警察庁長官官房審議官の調べるのもこっちが片付かないとな」
とぼやいた。
勇介はそれに前を見つめ
「そうだな、まあ学生たちの情報で学校での連絡役と売人の一人が捕まればルートの足掛かりが掴めるかもしれないからな。そうなれば二課が突破口を作るだろうな」
と告げた。
その頃。
東京に戻った月は一軒の家に訪れていた。
田園調布の一軒家に住む50代の男性でマサキリゾート開発株式会社の社長正木治人であった。
そう、島にやってきて放火をした男性が勤めていた会社であった。
月は家の中に入ると正木治人に
「柏原様からのご紹介ということでお伺いさせていただきました」
と僅かに視線を下げて告げた。
治人は「ん?」と少し気にはなったものの自身にも悩みがあったので追及はせずに
「ええ、彼から貴方の評判は聞いています。お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いします」
と広々とした一階のリビングへと案内した。
中央大きなテーブルとソファがあり庭に向いた窓は広く光りが良く射し込んできていた。
グランドピアノが右端にあり左側の壁には本棚があった。
恐らく本を読みながらピアノでも聞くのだろう。




