第六話 反撃の糸口 3
視線の先には一筋の白い飛行機雲が西から東へと長く引かれていた。
陽と月は翌日飛行機で島を後にすると東京へと戻った。
月は陽の勧めで日和の待っている中野のマンションへと姿を見せた。
日和は久しぶりに会った月を抱き締めると
「月君、大きくなったわね。これからはどんどん遊びに来て頂戴ね。私は2人の姉なんだから」
と微笑んだ。
月は柔らかく微笑み
「日和さんは変わってないですね、ご心配をかけてすみません。ありがとうございます」
と答え耳たぶを赤く染めた。
陽はそれを横目で見ながら
「そう言えば、あの頃も月って姉貴の前では耳たぶが赤くなってたよな。何でだろ」
とふむっと心の中で呟いていた。
その日は三人で日和の手料理を食べ、翌日、陽が組織犯罪対策部のフロアに姿を見せると勇介が安堵の息を吐き出し
「ちゃんと戻ってきたな」
と言い、ちらりとフロアのそれぞれの席に座っている課の面々を見た。
陽も全員を見回して頭を下げると
「島でのことありがとうございました」
と礼を言い、最後に部長の等々力にも
「等々力部長もありがとうございます」
と告げた。
それに等々力はあっさり
「いや、あれは事件だ。礼を言われるようなことはしていない」
と答え
「それより、五課の全員に話がある。集まれ」
と告げた。
陽は首を傾げたものの、大体の事情が分かっている五課の課長の戸田を始め勇介と萬田と佐々は等々力の机の前に集った。
他の課の人間は黙ってそれぞれの職務を遂行していた。
ソタイの仕事は課によって大きく違うが、箝口令は全ての課に既に行き渡っていたのである。
等々力は息を吐き出すと
「これは極秘事項だ」
と言い
「島に関することだ」
と告げた。
それに陽は目を見開き固唾を飲み込んだ。
等々力は冷静な表情で
「13年前に持明院の両親が火事で死んだ事件だが放火の可能性が大きい。物証がないので公には今は出来ないが恐らく持明院の両親が何かを知り口封じをされた。それに当時駐在員だったなるみ礼二警察庁長官官房審議官が関わっている可能性がある」
と告げた。
陽は全員を見た。
萬田は小さく頷いた。
肯定である。
等々力は腕を組み
「その理由は三つある。一つは当時あれほど放火殺人の可能性が高かったのに駐在であったなるみが火災事故として届けた……いや揉み消したこと。二つに島の火災事故として取材をして大々的に火災事故を押し付けた記者の瀬戸はなるみが駐在から捜査一課へ入った後に専属の情報屋になっている。最後になるみの後の駐在になった人間は全員なるみの推薦でなっている」
と告げた。
勇介は眼鏡を上げると
「しかし、13年前に駐在員だったなるみ警察庁長官官房審議官にそんな力があったとは思えないんですけど」
と告げた。
それに等々力はすっぱりと
「当時の長官と……なるみは恐らく何か関係があったと思われる」
と告げた。
「鎌谷前警察庁長官だがなるみをとんとん拍子に出世させたのは実は我々の間では暗黙の事実だった。だが恐らく俺から見れば最後の良心が残っていたんだろう。鎌谷前長官は御婦人が亡くなった直後に定年では全くなかったのに退任し、誰もがなるみが警察庁長官になるだろうと思っていたが今の浜中警察庁長官を推薦して去っていった」
それに誰もが顔を見合わせた。
等々力は全員を見て
「この件は全て浜中警察庁長官には報告している。その上で長官から極秘になるみ警察庁長官官房審議官の身辺を含めて調べることの許可を貰っている」
と告げた。
「勿論日常業務もこなしてもらわなければならないので激務になるがこの膿の根本を知らなければ同じことが島で繰り返されると思う」
陽も勇介も戸田も萬田も佐々も大きく頷いた。




