第六話 反撃の糸口 2
2人は眉山旅館へ戻り心配していた眉山千代に笑顔を見せた。
千代は陽に抱き付き
「ありがとう」
と告げた。
月はそれを見ると
「千代ちゃん、陽だけなんだ。陽が島に来てた頃もそうだった気がする」
とぽつりと呟いた。
「陽が川で足切ってすっごい血が出た時に慌てて救急箱と包帯持ってきて陽の代わりに凄く泣きながら手当てしてたの覚えてる」
陽はギギギと月と千代を見て
「え? 俺がじゃなくて?」
と見た。
千代は頬を染めながら視線を逸らした。
月は苦笑して
「まあ……でも陽も覚えてたんだろ?」
と告げた。
陽は視線を逸らせると
「俺、忘れてた。切ってすっげぇ血が出たことだけは覚えてたけど俺がギャン泣きしてたって言われて疑わなかった」
と答えた。
月は笑って
「陽って」
と告げた。
千代は慌てて
「もー、2人とも早く入って! そんなところで立たれると邪魔邪魔! 月くんの部屋は陽くんの隣ね!」
と勝手に仕切り、箒を手に玄関口をはき始めた。
陽は自分を指さし
「陽くんって言われた」
と笑いながら、月と顔を見合わせると笑みを浮かべてそれぞれの客室へと向かった。
その日の夕刻には警察のヘリコプターで鑑識と赤木勇介が姿を見せて火事の現場検証を行い陽がリゾート開発の人物たちをとった写真を見て放火として調べていく方向となったのである。
勇介はその報告を携帯で等々力に入れた。
等々力は「わかった、こっちのことは任せておけ」と言い
「それで持明院は」
と聞いた。
それに勇介は眉山旅館で用意された食事をしながら
「今斜め向かいで鷹司と食事をしています」
と答えた。
「二人とも明日の便で東京へ戻るという事です。あ、俺は食事後に警察のヘリで戻ります」
等々力は少し考え
「わかった」
と言い
「ただ、鑑識の奴らと一緒に何処にも寄らず報告せず直接こちらで全てを報告するようにしてくれ。ぐれぐれも頼む」
と告げた。
勇介は少し考えたものの
「分かりました」
と答えた。
そして、食事を終えると陽に声をかけた。
「鷹司、じゃあ俺達は戻る。お前は明日の便でゆっくり持明院氏と戻ってきてくれ」
陽は「持明院氏?」と呼び方が「あれ?」と思ったものの
「わかった」
と答え、笑顔で
「ありがとうな、赤木。助かった」
と言い、鑑識の面々にも
「ありがとうございました」
と告げた。
それに面々は笑顔で
「仕事仕事」
「そうそう」
と言いながら立ち上がり、ヘリポートへと向かった。
勇介は宿を出ると鑑識の面々に
「実は」
と等々力から言われたことを告げた。
それに彼らは頷くとヘリコプターと共に飛び立った。
島の交番に人影はなくリゾート開発の人間と共に駐在員も姿を消したのである。
同時になるみ礼二警察庁長官官房審議官の元に報告の電話が入った。
『島にソタイの人間がやってきてマサキリゾート開発株式会社の2人がやったことが警察内部の方に漏れてしまいました。私は身を隠すことにします。その方が貴方にも好都合でしょう』
……もちろんそれなりの補償はお願いしますよ……
警察庁のある合同庁舎の屋上でその連絡を受けなるみは小さく舌打ちした。
「……ソタイというと等々力か。奴は融通の利かない男だ。よりにもよって……」
そう呟いて空を見上げた。
「だが、まだ打つ手はある」




