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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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第五話 転調 4

 陽は顔を顰め

「おいおい、ここで立ち去るか。せめて立ち入り禁止の処理していけ!」

 とボヤキながら、駆け寄ってきた千代を見ると

「悪いけどロープ借りれるかな? 立ち入り禁止のロープを張るから」

 と告げた。

 

 そして、周囲の人々を見回し

「すみませんが、原因究明が終わるまで立ち入らないでください」

 と言い

「それから、こちらの納屋の持ち主である松野原さんはおられますか?」

 と呼びかけた。

 

 それに壮年の男女が歩み出た。

 

 陽は2人を見ると手帳を出して

「すみませんが、納屋に置いていたモノなどを一応お聞きしておいても?」

 と聞いた。

 

 それに誰もが僅かに安堵の表情を浮かべていた。

 千代もほっと息を吐き出し戸惑っている二人に

「こちらの刑事さんは信用できるわ」

 と言い

「月君のお友達だからリゾート開発の人とは関係ないわ」

 と告げて「じゃあ、ロープをとってくる」と駆け出した。

 

 それに松野原香苗はほぅと息を吐き出し

「あの、納屋には農作業をする為の桑とか帽子とか手袋などを入れていました」

 と告げた。

「確かに蚊取り線香の缶は置いていましたが中は空で火の気のあるものは置いていませんでしたけど」

 

 陽は頷いてメモを取りながら

「わかりました」

 と言い

「あの、今の駐在員は何時もあのような感じで?」

 と聞いた。

 

 それに香苗は少し言い難そうにチラリと隣に立っている夫の浩司を見た。

 浩司は頷いて

「ええ、殆ど……島民に関わることはなくて。これまでの駐在員はみんなあんな感じですけど」

 と苦く笑った。

 

 陽は少し考えて

「そうですか」

 と呟いた。

 

 その頃、東京の組織犯罪対策第五課のフロアでは赤木勇介が呆れながら

「ちっ、結局俺が行かないと駄目なのか」

 と言いつつも笑みを浮かべているのが上司にバレバレであった。

 

 そして、鑑識班に連絡して手配し萬田に

「すみませんが、島の駐在員の履歴と何故選任されたか調べておいてください」

 と告げた。

 

 それに萬田が「ほう、何故だ?」と聞き返した。

 

 勇介は笑むと

「鷹司は持明院を探しに行っている最中にこういう事態になった時に相手の駐在員を押し退けて割入ったりはしないですよ。手伝いならすると思いますけどね」

 と鞄を肩にかけると

「では行ってきます」

 と敬礼すると部屋を出た。

 

 萬田と戸田と等々力の三人は敬礼を返しながら苦笑した。

 

 陽がロープを張り終えた時に千代が

「実は」

 と唇を開いた。

「リゾート開発の人たちが宿を出て行っていたの。宿泊代は払ってくれたんだけど」

 

 陽は頷くと

「わかった」

 と答え

「取り敢えず泳がしておく。今追いかけて捕まえようとしても反対に他の人が危険にさらされる可能性があるし、俺一人ではね」

 と告げた。

 

 今、ここにいるのは自分だけなのだ。

 駐在員の様子から恐らくはリゾート開発の人間と繋がっている。

 島の人たちを危険にさらすわけには行かなかった。


 だが。

 と陽は息を吐き出すと周囲を見回し

「この島に何があるんだ? リゾート開発したいからって駐在員まで囲い込むってありえねぇよな。でも13年前に月の両親が駐在員に話をしに行って火事ってことは今回と同じ構図かもしれないし。だとすれば……13年間続いているってことになるよな」

 と呟いた。

 

 すると、先程呼びに来た男性と2人の男性が

「俺達は島の消防団員なんだがロープの中に人が入らないように見張っておくので」

 と笑顔で言い

「仕事以外で来られていたのに……先程は助かりました。島の人間は13年前の恐怖があるからこう言っては何だがもし貴方が動いてくれなかったら売る人が出ていたかもしれない、ありがとうございます」

 と頭を下げた。

 

 陽は笑むと

「いえ」

 と答え、周囲を見回して月の姿がないことに息を吐き出すと千代に

「悪い、俺」

 と告げた。

 

 千代は頷いた。

「分かってるわ」

 

 陽は「ありがとう」と答え男性に

「じゃあ、すみません。鑑識と警察が来るのでそれまで人が入らないように宜しくお願いします」

 と敬礼して立ち去った。

 

 それに男性たちも敬礼をして見送った。


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