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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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第四話 家路の曲が流れる時 6

 組織犯罪対策部のフロアで陽は報告書を書きながら

「使い捨て……なんだろうな」

 と息を吐き出した。

「組織の指示役や見張り役は偽名で……実行犯は本名って」

 

 それに萬田が

「当然だろ。己達は安全な場所でトカゲの尾である実行犯から金を吸い上げたら後は捕まれと言っている。だからそれまで個人情報を握って脅し続ける」

 と告げた。

「汚い方法だがそれが現実だ」

 

 勇介は眼鏡を軽く上げて

「今回はあの持明院が携帯の電源が落ちて痕跡が消える前に渡してくれたお陰で尾っぽを掴むことが出来たってことですね」

 と告げた。

 

 萬田は頷いて

「ああ、ネットやITが進んでこういうのも時間との勝負になっているからな」

 と答えた。

 

 陽は息を吐き出すと

「事件の痕跡の消えていく速度が早くなっていくって……なんだかなぁ」

 とぼやいた。

 

 勇介は肩を竦めて

「ま、事件の痕跡だけじゃないけどな」

 と答えた。

 

 陽は横目で見ると

「ああ。 なーんか世界自体が何処かへ生き急いでいるみたいだなぁ」

 とぼやいた。

 

 萬田も勇介も同じフロアでそれとなく話を聞いていた等々力や戸田も驚いたように陽を見た。

 

 勇介は腕を組むと

「時々、お前……哲学的に鋭いな」

 と呟いた。

 

 陽はムッとすると

「それ褒められてる気がしねぇ」

 と答えた。

 

 そして、窓の外を見つめ

「今回は月のお陰だな」

 と呟き、目を細めた。

「ありがとうな」

 

 数日後、月は柏原家に届いた新しいピアノを調律して一曲奏でた。

 それは穏やかで旅路の下で家を思い起こすような郷愁を感じさせるグリーグの抒情小曲集第七集作品62-6であった。

 

 柏原小夜はそれを聞きながら

「先生は本当にピアノもお上手ですわ。グリーグの抒情小曲62-6家路ですわね」

 と告げた。

 

 月はそれに微笑むと

「遠き果てのない旅路の終着場所はやはりホーム……家ではないかと」

 と告げた。

「新しい家が良き心のホームになるように」

 

 小夜は微笑んで頷いた。

 7月も終わりに近づいたある日、一人の男性が警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課に姿を見せた。

 

 男性の名前は長谷倉真守と言い、持明院家の顧問弁護士であった。

 彼は息を吐き出すと陽に

「持明院月を探してほしい」

 という事を告げたのである。

 

 柏原小夜のピアノを納品した日から月は姿を消し、連絡も取れない状態となっていたのである。


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