第一話 英雄の曲が流れる時 4
陽は男子にしては小柄だが勇介は長身だ。
勇介は陽を見ると
「君はかなり若く見えるけど……24歳は超えている?」
と告げた。
陽は目を細めると
「ギリギリだけどな」
と答えた。
22歳で大学を出て半年間警察学校へ通い、1年交番勤務をして現在に至るのだ。
ギリギリだが24歳であった。
陽は口を尖らせながら
「そう言うテメーは30歳越えてるのか?」
と業と告げた。
それにクスッと笑って勇介は
「残念ながら君と同じだよ。24歳だ」
と答えた。
2人は入り口側と奥側と寝具を引いてきっちり区画分けをして荷物を広げた。
食堂は寮の中にあり、他のトイレや入浴などは共同であった。
陽はこれから数週間だが赤木勇介と同室生活かよとうんざりと思ったが、翌日からそんなことを考える気力も湧かない生活が始まったのである。
機動隊入隊式を終えると早速新入隊員訓練が始まった。
7キロのジュラルミンの盾を担いで号令に合わせてマラソンだ。
30人を一小隊として陽と勇介は他に28人の面々と盾を担ぐと第一機動隊の建物の周囲を走っていた。
陽は暫く走りずっしりと重みが効いてきた盾に
「まじか」
と言いながらも足を動かしていた。
体力に自信はあった。
それでもかなりキツイ。
だが、と隣を走る勇介を見ると口元に笑みを浮かべ
「負けるかよ。インテリ眼鏡野郎に」
と呟いた。
とんだ偏見である。
が、それでも今はそれが励みになっているのだ。
その後もマラソンが終わると盾を上にあげて号令に合わせて屈伸や上げ下ろしなど『盾くそやろー』な運動の連続であった。
訓練を終えて寮に戻り食事を終えると部屋に戻り、6畳の部屋に大の大人が2人狭いと思う余裕もない間に布団の上で眠っていた。
翌日はそれにロープを使った壁の降下訓練が加わり、運動だけでなく英語などの学科勉強も加わり息をつく暇もなかったのである。
それは赤木勇介も同じで二人揃って部屋に入ると同時に布団へダイブする日々が数週間続いた。
思わぬ異変があったのはその最終日であった。
本来、要人警備も機動隊の仕事であるが、それは移動ルート上の警備であくまでも集団警備が基本である。
しかし、最終日の朝に陽は勇介と共に朝食を終えて第一機動隊本部の広場に集合するとそのまま屋内へと全員が移動させられたのである。




