第四話 家路の曲が流れる時 3
その途中にある一軒の家の前にパトカーが数台止まり、野次馬が集まっているのが見えた。
月は直ぐに拾った携帯を思い出して
「……なるほど」
と小さく呟いた。
その時、遅れて到着した車から鷹司陽の姿が見えたのである。
運転席からは赤木勇介も姿を見せ手袋をはめて中へ入ろうとしていた。
警察で信頼できる人間はただ一人である。
だが。と月が息を吐き出した瞬間に鷹司陽が顔を向けて目を見開いた。
……。
……。
まるで野獣のような嗅覚である。
陽は勇介に声をかけると月の方へと足を進めた。
「月……仕事か?」
月は暫く黙っていたが拾った携帯をそっと陽のポケットに入れると
「そこで拾った。恐らく怖くて逃げたんだと思うけどね」
と耳元で囁いて直ぐに離れると立ち去った。
陽はポケットに入れられた携帯を見ると目を見開いた。
直ぐに月が何故いま渡したのか理解したからである。
陽は笑みを浮かべ
「サンキュ、月」
と言うと画面を自分の携帯で撮り現場へと戻った。
そして、鑑識が調べている間を抜けて萬田と一課の小守などに挨拶をすると赤木勇介の横に立ち
「これを見てくれ」
と告げた。
勇介は顔を向けそっと陽がポケットから出した携帯の画面を見て
「どこで?」
と驚いた表情で聞いた。
陽は視線を外へ向け
「さっき、月が拾ったって」
と告げた。
「この写真の女性を見つければ押し入ろうとした人間の一人を捕まえられる」
勇介は軽くメガネのブリッジを上げて
「こういうことは初動が大切だからな。急いで女性を確保しないとな。彼女や携帯の持ち主の身の安全もある」
と答え、萬田に声をかけると話をして二人で現場を離れた。
萬田は去っていく二人を見送り
「まあ、引きっていうのはあるからなぁ。引きの鷹司に智の赤木か……悪くないコンビだ」
と笑みを浮かべて、現場検証の続きに乗り出した。
普通の強盗なら刑事部の管轄なのだがここ数日起きている組織だった押し込み強盗の可能性が高かったので陽や勇介、萬田が担ぎ出されたということであった。
そしてそれは正しかったようである。
陽と勇介は東都大学へ行くと携帯で撮り直した写真を大学の事務室で聞いた。
「彼女の身の安全のために必要なので」
警察手帳を見せてそう告げると事務員は驚いて直ぐに女性の名前と住所と家族構成を2人に伝えた。
もちろん、内密にという事である。
女性の名前は佐藤清香と言い、大学3回生であった。
彼女は直ぐに大学の事務などが入っている本館に呼び出され陽と勇介に対面した。




