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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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30/112

第三話 時計の曲が流れる時 7

 月は驚く三人を後目に松城代議士の妻の菜摘と娘の更紗に

「お邪魔いたしました」

 と言い、更紗に

「また来るからね」

 と微笑んで告げた。

 

 そして、三人を無視する形で成城学園駅の方へと歩いて行った。

 陽は呼び止めかけて勇介に止められると

「流石に自重しないとな」

 と思い直して松城家を訪ねた。

 

 菜摘は萬田が手帳を見せると落ち着いた様子で

「どうぞ」

 と中へ招き、娘の更紗を勉強するように自室へと連れて行った。

 

 陽は彼女の様子を見て

「意外なほど落ち着いてる」

 と心の中で呟いた。

 

 三人は勧められたダイニングの椅子に座りお茶を出されると一息ついて萬田が唇を開いた。

「この近くで田胡健一さんが発見されたことは既にお知りだと思いますがご主人と田胡さんの間で何かトラブルとかはありませんでしたでしょうか?」

 

 菜摘は少し考えて

「多分、あったと思います」

 と告げた。

 

 それに萬田も勇介も驚いて目を見開いた。

 

 菜摘は冷静に

「もちろん、内容は分かりませんが、田胡さんが最近松城のことで悩んでいる様子があったのは知っています」

 と言い

「ただ松城は田胡さんが発見された今朝どころか一昨日からこちらにはいませんでした。沖縄の方に行っております。今日の夜に戻ってくると聞いております」

 と告げた。

 

 それは言外に犯行は不可能だという事を言っているのだ。

 

 萬田は「なるほど」と言い

「あの、これは全員にお聞きしているのですが」

 と言うと

「奥様は昨夜から今朝は?」

 と聞いた。

 

 彼女は落ち着いた様子で

「自宅の方に居りました。娘と2人なので証明してくれる方はいませんが」

 と答えた。

 

 だが、田胡を害する理由が無いのだ。

 

 萬田は笑みながら

「すみませんね。一応職務なので」

 と言い立ち上がった。

 

 陽も立ち上がりかけて

「あの」

 と言うと

「もしかして俺達が来るのが分かっていたんですか?」

 と聞いた。

 

 菜摘は陽を見ると

「え?」

 と返した。


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