第三話 時計の曲が流れる時 5
萬田が運転して東京の世田谷区世田谷の上町駅の近くにある松城代議士後援会事務所へと向かった。
交通の便などからこの辺りに事務所を構えている議員は少なくはない。
マンションの一階の店舗部分や雑居ビルの一角にフロアを構えている。
だが、松城代議士の後援会事務所は小さいながらも3階建てのビルになっており、ポスターも貼られている。
萬田は近くの駐車場に車を入れて、三人で事務所の戸を潜った。
中には事務方の女性が数人と取り仕切っている後援会会長の木村総一郎がおり、三人を見ると木村が真っ先に応対に出てきた。
「ようこそ、松城剛志の後援会事務所へ」
定例の応対である。
萬田は手帳を見せると
「松城代議士の秘書の田胡氏の件は」
と聞いた。
木村は冷静に
「先程聞きました。田胡さんがあんなことになるなんて」
と言い周囲をちらっと見て
「どうぞ、奥に」
と応接室へと誘った。
陽はキョロキョロと周囲を見回しながら
「すげーな、ポスターとかカレンダーとかびっしりだ」
と呟いた。
勇介はまるで子供の様にキョロキョロしている彼に
「……鷹司」
と呼びかけ、萬田に続いて中に入るように促した。
三人が座ると女性がお茶を前に置き、それを合図に木村が口を開いた。
「それでこちらに何か? 田胡さんは主に自明党の内部の調整や松城代議士の仕事の調整でこちらには余り来られないので月に一度か二度くらいで……まあ一か月の活動の流れはファックスや電話で小まめに連絡していただいているのでこちらとしては凄く助かっておりました」
と告げた。
つまり、自分たちが田胡を害することはないと言外に告げたのである。
陽も勇介もそれをメモで取りながら萬田と木村の話を聞いていた。
萬田は頷きながら
「なるほど、それでここ最近で田胡氏が来られたのは?」
と聞いた。
木村は考えながら
「えー、先月の29日ですね。その時に今月の月間スケジュールを」
と告げた。
萬田は更に
「その時に何か気にかかった事とかは?」
と聞いた。
木村は思い当たらないという具合に顔を顰めながら
「いや、私はこれと言って」
と返した。
萬田は「なるほど」と答え
「何か気にかかった事で思い出したことがあれば連絡を」
と告げて立ち上がりかけた。
その時、陽が手をあげて
「あー、一つ聞いても良いですかー」
と告げた。
……。
……。
って、まるで学生のノリだ。と木村も萬田も勇介も同時に突っ込んだ。
木村は苦笑しつつ
「まあ、どうぞ」
と答えた。
疾しいところはないという具合だろう。




