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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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27/121

第三話 時計の曲が流れる時 4

 陽は明るく

「俺、あと一週間で退院できるから一緒に調べるか」

 と告げた。

 

 勇介は呆れたように

「退院は出来ても動けるようになるのはもう一、二週間かかると思うぞ」

 と告げた。

 

 陽は顔を顰め

「まじか」

 と呟いた。

 

 勇介は笑むと

「だが、情報は持ってくる。一緒に考えてくれ。鷹司は意外と俺の見落としているところを拾うから助かる」

 と告げた。

 

 陽は目を細めて

「まあ、いいか。お助け係になってやる」

 と笑って告げた。

 

 勇介も笑って立ち上がると飲み終わったペットボトルを鞄に入れた。

「じゃあ、また来る」

 そう言って立ち去った。


 一週間後、陽は病院を退院してタクシーで日和と暮らしているマンションへと戻った。

 月は楽譜を届けに病院に姿を見せると受付の女性から一枚の手紙を受け取った。それは陽からのモノであった。

 

 月は病院でそれを読むと静かに笑みを浮かべて、大切に鞄に入れると雨の中を自宅へともどった。

 

 その同じ雨の下で明け方に一人の人物が救急で運ばれたのである。

 その人物は月の良く知る人物で田胡健一であった。

 ☆

 健一は宝来公園の脇に止まっていた車の中で血を流しているのが発見され救急で運ばれた。

 それが警視庁刑事部捜査一課に連絡が入り捜査一課は殺人未遂事件として調べ始めたのである。

 

 月は翌日そのニュースを家で見て驚きながらじっとテレビの前に立ち尽くしていた。

 陽は怪我後に初出勤しその話を萬田から聞いていた。

 

 陽が出勤すると最初に声を掛けてきたのは赤木勇介であった。

 勇介は陽が自宅療養中でも顔を見せ大体の状況を話してくれていた。

 もちろん、その背後には組織犯罪対策部を取り仕切る等々力と彼らを教育している萬田の押しがあることは明白であった。

 

 陽は等々力と萬田に挨拶をして席に座った。


 勇介は隣の席に座った陽に

「問題なく出勤できたな」

 と言い、一枚の紙を置いた。

「密告電話の件は今保留中で今朝の事件で動くことに決まった」

 

 陽は紙を見ながら

「松城代議士の秘書が刺されていたって事件だな」

 と言い

「けど、それって刑事部じゃないのか? ソタイ関係あるのか?」

 と聞いた。

 

 勇介は眼鏡をあげながら

「松城代議士についてはソタイが追っている組織ぐるみでの収賄疑惑の中に名前が上がっている」

 と告げた。

 

 陽は目を細めると

「もしかして、例の密告電話がこの秘書ってことかもって?」

 と聞いた。

 

 紙には今朝の新聞の記事がコピーされている。

 田胡健一が正常の宝来公園の側道に止まっていた車の中で血を流して発見された差し込み記事である。

 

 勇介は腕を組むと

「かも知れないって感じだな。だから調べるんだが」

 と告げた。

 

 それに反対側で話を聞いていた萬田が

「まあ、詳細は捜査一課が裏取りするから俺達は松城代議士の後援の方だな」

 と告げた。

「車の許可は出ているから後援事務所の方へ移動だな」

 

 そう言って立ち上がった。

 陽と勇介もそれに倣って立ち上がり、等々力に報告するとその足で後援事務所へと向かった。

 

 それを見送り等々力は小さく安堵の息を吐き出した。

 その様子に課長の戸田正平は苦笑を零して

「等々力も一安心だな」

と告げた。

等々力はそれに罰が悪そうに笑みを浮かべて

「まあな」

 と答えた。

周囲にいた佐々修一など他の面々は思わず小さく笑いを零したのである。

 

 表向き『二人については問題ない』と等々力は言っていたが、内心では陽が『やっぱり交番勤務に戻りたい』と転属届を出さないか心配だったのである。

 

 折角掴んだ要人パイプの糸口である。

 手放してなるものかと言うのがあった。


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