第二話 別れの曲が流れる時 9
頓珍漢な話の行き先に息を飲み込んだ。
いや、13年前の陽も確かにそう言うところがあった。
人の気持ちの機微がわからないというか。
月は顔を顰めて
「そんなことで怒ってない」
と言い
「陽が何を言ってきても俺は仕事に関することは何も言わないから」
と一歩踏み出すと歩き出した。
陽は慌てて
「あ、いや。それもあるけどな。けど、俺ほんとうに悪いと思って……日和姉も月のこと懐かしがってた」
と告げた。
「前みたいに普通に話しできないかな? オフの時にでもさ」
月は一旦足を止めて振り返り
「もう、昔の俺じゃないから」
と歩き出した。
陽は口を尖らせると
「絶対に昔のまんまだ」
と言い、盛大に息を吐き出すと月から少し遅れてマンションのエントランスを後にした。
そこに赤木勇介と萬田横丙が立っており
「「振られたみたいだな」」
と2人同時に苦笑を零した。
萬田はそれでも
「会話を交わしてくれただけでも俺達にすれば驚きなんだがな」
と告げた。
「これまで我々は大半スルー無視で交わした会話は『ただの調律師なので』だけだった。会話が先ず成り立たなかった」
勇介はそれを聞きながら
「マジ、会話フラグバッキバッキにされていたんだな」
と何処か冷静に心で呟いていた。
陽はむーと顔を顰めながら
「でもな。別に言えない事は言えないで仕方ないと思ってるけど。約束守れなかったこと、もう少しどう思ってるか話して欲しかった。怒ってるなら怒ってるでいいからさ」
とぼやいた。
勇介はそんな陽を見て眼鏡をクィと上げると
「何だろ、鷹司ってどこか子供に見える」
と心で突っ込んだ。
しかし勇介自身は己がそれほど純粋ではないと理解していたので
「まあ、一回で諦める訳じゃないんだろ?」
と言い、その後ろに等々力警視正の『いいか、鷹司は警察にとってある意味切り札だ。持明院月の絆を諦めさせるな。それがお前の任務だ』と指示された言葉を持ちつつ慰めた。
陽は勇介を見ると
「ああ、そうだな。赤木ってはじめ見た時はインテリ眼鏡で計算高い奴かと思ったけど結構いいやつだよな」
と笑顔で告げて
「さて、戻るか」
と駐車場へと歩き出した。
勇介はそれに肩を竦めて
「とんだ言われようだ」
と答えながらも
「まあ、俺は計算高いけどな。鷹司って人の見る目はありそうだ」
と半分は警告を匂わせて応えた。




