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陽と月  作者: 如月いさみ
陽と月

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第二話 別れの曲が流れる時 7

 等々力は三人から報告を聞くと

「萬田、悪いが鷹司と赤木を連れて佐藤のマンションを張ってくれ。2人に彼のことを話しておいてくれ。それから金の流れと裏取りはこっちで行っておく」

 と告げ、組織犯罪対策第五課の課長である戸田正平に

「頼む」

と声を掛けた。

 

 萬田は戸田と顔を合わせて視線を交わすと敬礼し

「了解しました」

 と答えた。

 

 陽と勇介もそれに倣って敬礼した。

 

 三人は夕食をとるとその足で佐藤周のマンションへと向かった。

 既に陽は落ちて夜が訪れている。

 

 東京の夜は不夜城。

 よくそのように揶揄される。

 

 夜空の星さえ見えなくなるほど地上のイルミネーションや街灯が輝き、人々のざわめきも途絶えることがなかった。

 

 その一角。

 東京都世田谷区にある高級高層マンションでこの日、持明院月は広々としたリビングルームに置かれているピアノの調律を行っていた。

 

 一台数千万すると言われるクラシックピアノ。


 彼は音を合わせながら

「大切にされているんだよな」

 と心で呟いた。

 

 どれほど良いピアノでも全く演奏されていなければ傷みは早い。

 やはり適度に使われてこそピアノは喜ぶのである。

 

 彼の作業を少し離れたソファに座り一人の男性が見つめていた。

 その人物こそこの部屋持ち主である佐藤周という50代の男性であった。

 

 佐藤周は月の取引先の一人だったのである。

 

 そして佐藤周の後ろには30代くらいの男性が口を真一文字にして立っており、月の一挙手一投足を推し量るように見つめていた。

 佐藤周の部下で芍三郎という男であった。

 

 月は調律を終えると最後に音の確認をする為にショパンの練習曲を一曲弾き、蓋をすると立ち上がった。

「何時も丁寧に扱われているのが分かります。全く弾かれないのもピアノには良くないのでこのように適度に使っていただけると嬉しいです」

 

 そう言って綺麗に微笑んだ。

 

 佐藤周はそれに笑みを浮かべると立ち上がり

「いや、こちらこそ。先生が来られた後はピアノの音色が何時も生き返って感謝しております」

 と答え、後ろで立っている芍三郎に

「お礼を」

 と告げた。

 

 芍三郎は頷き丁寧に袋を差し出すと

「こちらを」

 と手渡した。

 

 月はそれを受け取り

「では、俺はこれで失礼します」

 と一礼して佐藤周の部屋を後にした。

 

 芍三郎は月が立ち去ると

「こんな時にあのような一般人をお入れになられるのは不用心だと思いますが」

 と告げた。


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