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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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決心 10

 陽は大きく安堵の息を吐き出して

「良かった」

 と言い

「彼と話をしたいんだが」

 と船に乗り込みながら告げた。


 桑田洋一は頭を下げて

「お願いします」

 と告げた。


 直島の駐在所は暫く不在になるだろうということは陽は理解していた。そして、船に揺られながら要注意駐在所として見て行かなければと思い、ふっと「いや、俺は」と心で呟いた。


 その日は香川県警の近くのホテルに宿を取り、翌日、朝一で香川県警本部へ向かい生活安全部の総務課で内勤をしている大間和利と対面すると

「少し話をしたいんだが」

 と告げた。


 大間和利は驚いて

「鷹司さん!」

 と言うと、大きく頭を下げて

「俺は、本当に申し訳ありませんでした。鷹司さんに期待してもらったのに……こんなことになって」

 と言い涙を流した。


 それには全員が驚いたのである。転属になっても何時もと変わりのない様子だったので安心していただけに本当の気持ちが分からなかったということである。


 人は表面で見えるモノだけが真実ではないのである。


 陽は大間和利を連れて香川県警本部の空いている会議室を借りて中へと入った。


 そして頭を深く下げた。

「申し訳ない!」


 大間和利は驚いて

「鷹司さん! 何故?」

 と聞いた。


 陽は顔を上げると

「君が真面目で本当に地域の為に働く駐在員であることは俺は良く分かっていた。直島の人たちも今本当に後悔して君が全く無実で自分たちが嘘をついていたことを話していると思う。君は胸を張って心から胸を張って警察官を続けてもらいたい」

 と告げた。


 それに大間和利は嗚咽を零すと

「あ、ありがとうございます……本当は凄く辛かった。凄く辛くて……でも……俺はちゃんと訴えたし……署長たちは俺の無実を信じてくれて今の場所に……そう思って」

 と告げた。


 陽は彼を抱きしめると

「ああ、そう聞いた。君が今も自棄にならずに真面目にきっちり仕事をしていることに俺は安心したし、ちゃんとここの県警の人たちは見ているとそれも安心した」

 と告げた。


 陽は息を吐き出して

「君には全てを話そうと思う」

 と告げた。


 大間和利は陽を不思議そうに見つめた。


 陽は笑みを浮かべ

「俺は2年前に全国巡回駐在員の任を降りたんだ。浜中長官には止められたが……無理やり辞めた」

 と告げた。

「私的な理由だ。全国を回っていると短い時でも一か月。長くなると三か月から半年近くその地域に貼り付けになる。妻との間に長いこと子供が出来なくて漸く3年前に妻が妊娠したんだがそんな妻に実家の宿も不在の駐在所のことも任せっきりだった。ただ東北を回っていた時にこれまでいつでも明るく送り出して『任せて』と言ってくれていた妻から『どうしても体調が戻らないから帰ってきてほしい』と初めて一度だけ言われたんだ。心配なところが一か所だけあってそこを回ったら帰ると三日だけ待っててくれと言ってその一か所を回っている最中に島の知り合いから妻が玄関で倒れていて意識不明で運ばれたと連絡があって……」


 ……死産だった。二度と子供が望めない体になったんだ……

「妻は妻自身のせいだと自分を責めたが、本当は全部俺のせいだった。妻に甘えて頼って全部背負わせて、本当に顔向けが出来ないことをしてしまった」


 陽は唇を噛み締めると

「それで全国の駐在所の駐在員をみんな切り捨ててしまった」

 と顔を伏せた。

「大間巡査がヘルプを求めた時に駆け付けられていたら……君の名誉をこんなに傷つけることがなかったのに……本当に申し訳ない!」


 大間和利は首を振ると

「反対です。全国の駐在員が貴方に頼り切っていたんです。巨大な警察機構が貴方の肩に乗りかかっていたんです。俺こそ申し訳ありませんでした」

 と告げた。


 ……ただ貴方のしてきたようなことを出来る警察官は本当にまれだと思います……

「もし、もし……貴方の負担を減らしながらでもこれからの、他の駐在所の駐在員を少しでも守り導いていっていただけたらと願わないわけではありません」


 陽は彼を見て

「ありがとう」

 と答えた。


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