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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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決心 7

 牧野剛二は顔を歪め

「駐在さんが変わって……あ、あいつが……煙草で小火を起こした息子に前の駐在もそれを注意されてあんなことしたんだろうと今度は脅して金を……」

 と陽の疑惑の表情に慌てて

「いや! 本当なんだ!! 今度は本当なんだ!!」

 と訴えた。

「うちにも来て……毎月数万取られて……言おうと思ったんですがあいつが……警察はSNSのことが嘘だと突き止めていて信じないぞって……息子は他の人からも責められるしあいつに脅されるしで島を逃げ出して……全く連絡が取れなくなってしまって……自業自得なんですよ! わかってるんです!!」


 陽は息を吐き出し

「貴方たちが同じことをされたらどれほどか分かりますね? それは我々警察も同じです。いや、警察だからこそもっと厳しい」

 と告げた。

「大間巡査は誠実で真面目でそれでいて人を思いやる気持ちもある凄く良い警察官でした。貴方がたはその幸運を自ら手放したんだ。もう遅い」


 牧野剛二は土下座をして

「本当に申し訳ありませんでした」

 と告げた。


 クリーニング店の女性も陽の『もう遅い』の言葉に震えながら

「あの、本当にみんな反省しているんですよ。皆酷い目に合っていて……うちだって……言ったらひどい目にあうぞって脅されて……外に流しても前のこともあるから誰も寄り付かないぞって」

 と顔を伏せた。


 陽は気付くと店の周りに集まっている人々を見回した。誰もが憂鬱な表情を浮かべているのに

「これは……大問題だな」

 と心で呟いた。


 3年だ。

 恐らく全国巡回駐在員の仕事をしていたら一度か二度は見に来ていて気付いたかもしれないが……たった2年ほどの間に様変わりしていたのである。


「しかし一番心配なのは大間巡査だ。高松北警察署によって聞いておかなければ」


 陽は冷静に

「皆さんに言っておきます。二度目はありません」

 と告げた。


 全員が頷いた。警察官一人でどれほど変わるかと言うことを骨身にしみて感じたからである。


 自分たちの傲慢さや愚かさに気付いたのである。

 SNSで陥れた警察官がどれほど大切な人だったかを理解したのである。


 陽は彼らを見ると

「何時頃、駐在員が何処に来るか分かりますか?」

 と聞いた。

「俺もこの目で現場を見ない限りは判断できない。つまり、貴方がた全員が何を言っても信用できないということです」


 それに牧野剛二は

「恐らく、今日はここへ夜に来ると思います」

 と告げた。


 陽は頷くと

「では夜までここで待機しています。良いですね?」

 と告げた。


 牧野剛二は頷いた。


 陽は彼らを見回し

「もし他の家に来たなら、こちらに電話を直ぐしてください」

 と告げた。


 全員が安堵の息を吐き出して頷いた。


 陽は駐在所には向かわず牧野剛二の魚屋で夕方まで待機した。彼らのしたことを許すことはできない。

 だが、こんな事になる前に何とかできたのではないかと言う後悔の念が沸き立っていた。


 表面上はいつもと変わらない漁村の光景が広がっていた。そして、空が茜色に変わり夜の闇が降り始めた頃に一台のバイクが止まった。

 牧野剛二は恐る恐る陽を見た。陽は携帯で動画を録画しながら静かに頷いた。


 警察官の制服を着た若い青年が足を踏み入れると

「牧野さん」

 と手を出した。


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