決心 6
陽は一泊して翌日、仲良く手を振る二人に見送られてバスに乗ると広島へと戻った。
そして、最後の一か所へ向かったのである。ただそこの駐在所に関しては駐在員がしっかりしているので大きな心配はないと思っていた。
本当の様子見である。
しかし、そこで大きな事件が起きようとしていたのである。
陽は広島から新幹線で岡山に出るとそこからバスに乗って宇野港へと向かった。
次の目的地は香川県警の高松北警察署直島駐在所であった。
宇野港からフェリーで20分の場所にある直島と言われる瀬戸内海の小島にある駐在所であった。島民は疎らだがそれなりに住んでいる。
その中には美術館や観光協会などの建物もあった。
陽は船から降り立つと真っ直ぐ島を横断するように足を進めた。フェリーターミナルの周辺にはそれなりに家が集まって立っているがそれも真っ直ぐ突き抜けるように歩いて10分もすると畑と山とぽつりぽつりと家が見える状態に切り替わる。
その道を更に10分ほど歩くと小学校が右手にあり、その左手に二階建ての駐在所があった。
しかし、フェリー乗り場を出て島を一周する外周道路を越えた住宅街を少し歩いた時に一人の男性が慌てて追いかけてきたのである。
「あ、あんた!」
陽は足を止めて振り返り目を見開いた。
「貴方は」
男性は周囲を見回して陽の袖を掴むと
「き、来てくれ……本当に頼む」
と告げた。
陽は戸惑いつつも足を進めて男性の経営する魚屋の中へと入った。男性は俯きつつも意を決したように土下座をした。
「ほ、本当に申し訳ないことをしたと思っている!! だから、あの駐在員さんを呼び戻して欲しい」
陽は言っている意味が分からなかったのである。
「え? 大間巡査が何かあったんですか?」
男性は顔を上げると
「え? ……あ、あんた……あの時の刑事さんだろ?」
と呟いた。
陽は頷いて
「ええ、3年前に大間巡査とここを一緒にご挨拶させていただきましたが」
と告げた。
「少し事情があって2年ほど業務を離れていて」
そこへ島のクリーニング店の女将が姿を見せて
「!! あ、あんたあの時の!!」
と言うと
「牧野さん、話し……してくれたのかい?」
と聞いた。
牧野剛二は困ったように
「いまから話そうと思って」
と呟いた。
クリーニング店の女性が顔を顰めながら
「そうかい、頼むよ」
と告げた。
陽は冷静に
「あの、大間巡査が何か」
と聞いた。
クリーニング店の女性は首を振ると
「違うよ~、あの人は本当に良い人だったんだよ」
私たちが悪かったんだよ、と告げた。
牧野剛二は息を吐き出し立ち上がると
「実は……俺のバカ息子が……その喫煙した煙草をゴミの上に掘っていたのを火事になったら危ないと注意されてな……それに腹を立てて……ネットのSNSに嘘を……その……うちの売上金を取った酷い警察官って投降したんですよ」
と告げた。
陽は顔を顰めた。とんでもない話である。
「煙草の不始末から火事はあり得ることです。注意は当然です」
牧野剛二とクリーニング店の女性は顔を見合わせて
「それで高松北警察署の人がきて話を聞かれて……嘘だったら……息子がと思って……嘘を……」
と告げた。
クリーニング店の女性も顔を伏せて
「私もどうせ駐在さんだからこれくらいと……」
と告げた。
陽は拳を握りしめて彼らを見下ろした。
「それで」




