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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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決心 5

 ちょうど正午前の山口行きの列車に乗り新山口まで乗り戻ると弁当を買って広島へと新幹線で向かった

 そこから広島港へ出て船に乗って次の駐在所へと向かうのである。広島の南にある江田島にある駐在所であった。


 大きな島なので島の中に警察署があり、駐在所が幾つか点在する。その中に一つに沖駐在所があった。島の西海岸にあり警察署からは一番離れている場所の駐在所であった。


 最後は沖美市民センター行きのバスに乗り到着して降り立つと目の前に駐在所があった。

 空は既に紫紺に染まり夜が既にそこまで来ていることを教えていた。


 沖駐在所は一見するとごく普通の二階建ての家に見えるがちょこんと『警察』と札があるのだ。

 現在はそこに香川金一巡査長と桃子の夫婦が住みながら仕事をしている。


 陽は少し坂を上って市民センターと江田島市役所支所の入口から中へ入ると駐在所の前に立った。

 そこに女性が姿を見せると

「鷹司さん?」

 と目を見開いて笑みを浮かべて頭を下げた。

「お久しぶりです、香川も喜びますわ」


 陽は笑みを浮かべると軽く頭を下げた。

「久しぶりです。元気そうで良かった」


 陽の心配の種は彼女であった。香川桃子はこの土地の人間でいわば妻の実家の近くの駐在所に勤務をしているということになるのである。

 ただ香川桃子は高校の頃に半グレ状態で前科があった。

 もちろん、彼女自体を心配しているわけではなく彼女の過去の知り合いである。


 陽が前に来た時に香川金一が彼女と過去に一緒に少年院送りになった女性が脅しに来たことがあったのだ。


 彼女は揺らがなかったが香川金一には迷いがあった。それが心配だったのである。


 陽は香川桃子に誘われて駐在所の中へ入ると目を見開いた。壁にあの時には隠していた彼女の特攻時代の写真が飾られていたのである。


「これ」


 彼女は笑むと

「私が金一さんに貼るようにお願いしたんです」

 と告げた。

「あの人は私は今はもう立派に立ち直っているのだからと言ってくれたんですけど、鷹司さんが言ってくれた言葉を思い出して」


 陽は目をぱちぱちと瞬いて唸った。

「俺が?」


 彼女は頷いて

「私のことは警察はもう知っている。何も隠すものはない。だから脅す材料にはならないって」

 と言い

「この写真を飾っていれば、いう必要も隠す必要もないと思って」

 と告げた。

「私はこんな私をそれでもいいと結婚してくれたあの人を守りたいんです。私の過去があの人に足枷になるのは嫌なんです。だから」


 ……今見ると本当に酷い写真ですよね。でもあの頃は皆と違うことが唯意味もなくかっこいいと思っていたんですよね……


 陽は驚いたものの笑みを浮かべると

「正直、俺は貴方の過去からの来訪者を心配していました。でも、今それが杞憂だと分かりました」

 と告げた。

「どうか香川巡査長をお願いします」


 香川桃子は笑み頭を深く下げた。

「私こそ……こうして金一さんを何時も気にしていただいて来ていただけるのが本当に助かっています。ありがとうございます。もうバスもないので今日は泊って行ってください」

 金一さんもびっくりして喜びます、と階段を上がって客室へと案内した。


 陽が心配した香川金一は思った以上にしっかりしており夕食の席で

「俺も桃子の写真のことは驚きましたが過去は過去で変えられないけれど今の桃子は本当に警察官の妻として俺は胸を張ることできる。だから、俺も桃子の過去の人間が何かを言ってきても前のように俺が揺らいではダメだと……気合を入れることにしました」

 と笑って告げた。


 人は変わるのだ。

 本人の心が覚悟を決めて変わろうと思えば変われるのだ。


 陽は小宮巡査と香川巡査長夫妻を見て感じたのである。

 そして強く変わればそれだけその地域の安全も強くなるのだ。


「手探りで8年間やってきたが……無駄じゃなかったんだ」


 だが、こういう風に良いように変わっていればいいのだが……反対に大丈夫だと思っていた場所が問題を抱えてしまう場合もある。

 人の組織と言うのは常に正常にするためのチェックが必要なのだ。それが滞れば小さな歪みから大きな歪へと変わって大事件へと変わっていくのだ。


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