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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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決心 2

 翌日、ホテルをチェックアウトすると陽は長門峡を目指して新山口から列車へと乗り込んだ。


 長門峡は山口市と萩市の境にあり太平洋側と日本海側の中間の山間部に位置する。

 駅はあるものの建設物が密集しているわけではない。

 青空駅のホームに降り立って目に入るのは迫るような山の緑の木々であった。


 そのホームから駅舎を抜けるとパラパラと家が少しだけ集まるように立っていた。


 陽が心配していた山口警察署長門峡駐在所はまさにそこの中にあった。ただそう言う場所は幾らでもある。

 問題はこの地域性と駐在員であった。


 陽は駅を出て家の間の道路を広がる畑を両側の家の向こうに見ながら2車線の国道9号線まで出ると右折して進んだ。

 ほんの5分ほどで二階建ての住居兼駐在所の建物が右手に見えた。


 道路挟んでの正面は少しの空き地と直ぐに緑の低山裾が迫る。建物の裏手は畑にやはり山裾がその向こう直ぐにある。

 正に道路に沿って家がポツンポツンとあるだけであった。

 が、そんな長閑で静かなはずの駐在所の前に4人ほどの男が集まっていた。


 陽は腰に手を当てて

「やっぱり」

 と心で呟き足を駐車場となっている敷地に踏み入れた。


 瞬間に4人の男たちに困った顔をしている若い駐在員が顔を上げて

「鷹司さん!」

 とパァと明るい表情で声をかけてきた。


 反対に4人の男たちは軽く眉間にしわを寄せた。陽は彼らをよく知っている。この駐在所に来るたびに顔を合わせているのだ。向こうも覚えていたようである。


 陽は笑みを浮かべて敬礼をした。

「お久しぶりです、田中さんに川辺さんに山田さんに田端さんも相変わらずお元気なようで」

 そう言って駐在員の小宮郁夫に笑みを見せた。

 小宮郁夫は安堵の息を吐き出しながら

「申し訳ありませんが」

 と言いかけた。が、それより早く4人が顔を見合わせて

「じゃあ、またな。駐在さん」

「さて、俺も仕事があるし」

「また来る」

「それじゃ」

 と口々に言いながら波が引くように陽の横を抜けて立ち去った。


 陽は困ったように肩を竦めながら駐在所の方へ足を進め

「少し寄っただけなんだが、相変わらずのようだな。毎日来るのか?」

 と聞いた。


 4人はこの地区の町内会の会長と副会長であった。正確には田中康太と川辺敏夫は西地区の町内会で山田和男と田端誠一は東地区の町内会であった。

 つまり、ただでさえ住民が少ないのに更にその中で西地区と東地区とに分かれていたのである。


 理由は簡単でこの地区はちょうど線路と阿武川が分かれる場所にあり、阿武川と篠目川に二つ分かれており、綺麗に閉鎖された形になっていた。

 ただそれだけなら問題はないのだが、阿武川の方には神社が且つてあり、篠目川の方にも且つて寺があった。

 その檀家と旦那衆が揉め事を起こすという地域の特殊と言えばそうなのだ。


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